表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

異質なる骨

 血と死臭が充満するダンジョン。

 兵も傭兵も、誰一人として生きて外へ逃れることはなかった。


「……終わったな」

 ジンザが剣を払って血を振り落とす。


 周囲には無数の屍。鎧ごと潰された兵士、鋼糸に吊るされた死体、そして毒に侵されたまま泡を吹いて倒れた者――。

 その全てを、敬人は静かに見下ろしていた。


『……よし。始めるか』


 敬人の指示に従い、屍の山の中に力が流れ込む。

 次の瞬間――。


 がしゃり、と骨の軋む音が響いた。

 次々と死者が立ち上がり、眼窩に冷たい光を宿す。

 領主の兵は、今や敬人たちの軍勢として生まれ変わっていく。


「おお、これで我らの軍はさらに強固になったわけじゃな」

 ジンザは冷静に頷きながらも、どこかぞっとするような光景に目を細める。


 だが、その中に――。


 ひときわ異質な骨が立ち上がった。

 骨格はスケルトンのはずなのに、異様なほどゴリゴリに張り出した骨の筋肉を持っている。

 まるで石像のようなごつごつしたライン、肩幅は異常に広く、動くだけで骨が擦れる重低音が響く。


「……なんじゃ、ありゃ」

 ジンザが思わず呟く。


 敬人は驚愕しながらも、視覚共有でその存在を注視した。

『俺、あんなの作った覚えはないぞ……?』


 ムキムキスケルトンが近づき、目を丸くした。

「ナンダコイツ!? オレ? オレノ兄弟? デモ……ゴリゴリ!? オレはムキムキ! アイツはゴリゴリ!!」


 ――その瞬間。


 空気が不意に揺らぎ、どこからともなく陽気な声が響いた。


『いやぁ〜ちょっと遊んでみただけだよ。面白いだろ?』


 敬人の頭に響くのは、あの神の声。

 この世界に彼を送り込んだ、悪戯好きの存在だった。


『ムキムキくんがいるなら、対になるキャラも必要だろ? ほら、ゴリゴリ担当。筋肉より骨で押す感じ。カッコいいだろ?』


 敬人は額に手を当てて、思わずため息をついた。

『……またお前か。勝手に眷属いじるなよ!』


『いいじゃんいいじゃん! どうせ賑やかな方が楽しいだろ? そいつにはちょっとだけ力を上げておいたから。』


 異質なスケルトン――ゴリゴリスケルトンは、無言のまま拳を鳴らした。

 その骨の拳は岩をも砕きそうな重厚さを放っている。


 ムキムキスケルトンが筋肉を震わせて叫ぶ。

「勝負だぁぁ!! 筋肉か! 骨か! ドッチガ最強カァァ!!」


 ジンザが冷たい声で遮った。

「……やめい。こんな狭い洞窟で暴れられては、罠も巣も崩れるわ」


 くもりんが上からくぐもった声で笑う。

「ふふ……これでまた一匹、厄介な駒が増えたな」


 敬人は頭を抱えながらも、内心では戦力の増加を否定できなかった。

 神の悪ふざけは、またしても彼らの物語に波乱を呼び込もうとしていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ