表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/46

蜘蛛の部隊

鋼糸が軋む音と共に、罠が次々と作動した。

 兵士が足を踏み外した瞬間、地面の仕掛けが開き、尖った岩に突き刺さる。別の兵は頭上から垂れ下がった糸に絡め取られ、宙吊りのまま喉を切り裂かれた。


「ひぃっ!? ど、どこから攻撃が……!」

「暗闇だ、敵の数も見えねえ!」


 恐怖に駆られた兵たちがたいまつを掲げようとするが、それもすぐ鋼糸に切り裂かれ火が消える。

 闇の中、響くのは悲鳴と血の滴る音のみ。


『いいぞ、追い詰めろ! くもりん、左右から回り込ませろ!』

 敬人の指示が響く。


「承知した。……網は獲物を逃がさん」

 低く囁く声と共に、くもりんは兵士の足場をことごとく奪っていった。


 前線では、アリリマートが暴れ回っていた。

「コロスコロス!! コロスウウウウウ!!」

 巨体が突撃するたび、兵士が吹き飛び、盾ごと壁に叩き潰される。

「うわあああっ!」

「だ、駄目だ! あんな怪物……人間じゃ勝てねえ!」


 後方では――。

「筋肉ッ! 剣ッ! オレ最強!!」

 ムキムキスケルトンが筋肉を誇示しながら剣を振るい、兵士たちをまとめて薙ぎ倒していた。

 その姿はまるで地獄から現れた戦神。だが、叫んでいる内容はどこか間の抜けたものだ。


「だ、誰だこいつ!? 傭兵じゃなかったのか!?」

「骨なのに筋肉ってどういうことだよおおおっ!」


 ジンザは背後から短剣を振るい、兵士の喉を正確に突き刺す。

 冷徹な手並みで敵を減らしながら、小声で呟いた。

「……狂気と筋肉に気を取られるがよい。その隙に、こちらは淡々と首を刈るだけじゃ」


 シロは赤ん坊の姿のまま、するりと兵士の体に巻き付き、締め上げていく。

「うぐ……力が……抜ける……!」

 兵士が崩れ落ちると、シロは小さく「シュー……」と鳴き、次の獲物を求めて這い出した。


 ――こうして討伐軍は完全に包囲され、蹂躙されていく。


「く……こ、こんな怪物どもが潜んでいたとは……!」

 傭兵団長が必死に剣を振るい、叫んだ。

「退け! 退けぇ!! 一度体勢を立て直せ!」


 だが、その声もむなしく、部下たちは蜘蛛の糸に絡め取られ、アリリマートの顎に噛み砕かれ、次々と屍となっていく。


『……逃げる気か。アリリマート、出口を塞げ!』

「オオオオオッ!!」

 巨体が洞窟の口に立ちはだかり、完全に退路を断った。


 血の臭いが立ち込め、恐怖と絶望に討伐軍は完全に飲み込まれる。

 その時、ジンザがフードを払った。


「……残念ながら、ここが貴様らの墓場よ」


 淡々としたその言葉に、兵たちの心はへし折られる。


 くもりんの八つの目がぎらりと光り、低く笑った。

「――狩りの時間は、終わらない。」


 闇のダンジョンで繰り広げられる蹂躙。

 領主の精鋭軍は、もはや壊滅するしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ