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骸骨お金を稼ぐ

街の喧騒。

 戦いの翌日、英雄として祭り上げられつつあるムキムキスケルトンは、武器屋の前で仁王立ちしていた。


 ショーウィンドウには――煌めく銀の大剣。

 鍔には竜の紋章、刃は光を反射し、見るからに「俺強いです」と主張している一品だった。


「……主欲しい。剣欲しい。欲しい欲しい欲しい」


 それまで一言も発したことのないはずのスケルトンから、脳裏に直接響く声が飛び込んできた。

 敬人は思わずむせた。

「……お前、喋れるのかよ!」

「欲しい。剣欲しい」

「……内容が単純すぎる!」


 ジンザが笑いを堪えつつ肩を竦める。

「まあ、戦いぶりを見れば欲しくなる気持ちも分からんでもないがの」

 だが敬人はきっぱり言った。

「そんな高い剣、タダで手に入ると思うなよ。欲しいなら自分で稼げ」


「稼ぐ……筋肉で稼ぐ」

 骨の顎をカタカタ鳴らしながら、スケルトンは決意を示した。


 ――翌日、街広場。


 そこには人だかり。

 中央でローブを脱ぎ捨てたスケルトンが、両腕を天に掲げる。


「おおっ、昨日の英雄だ!」

「今日は何を見せてくれるんだ!」


 ――ぐっ、ぶるんっ!

 筋肉が隆起し、観客から歓声。


 続けて逆立ち、片腕で子供を肩車したままスクワット百回。

 荷車を持ち上げ、回転しながらラットスプレッド。

 さらには大道芸人と共演し、火吹き芸の火炎をモストマスキュラーで吹き飛ばす離れ業まで披露した。


 群衆は沸き立ち、次々と銅貨や銀貨が投げ込まれる。

「すげぇ!」「筋肉様!」

「芸じゃなくて奇跡だ!」


 ジンザはその横で帳簿をつけながら呟いた。

「……稼ぎが侮れん。これなら本当に剣が買えるわい」


 そして数日後。


 スケルトンは満面の筋肉で武器屋へ向かう。

「金、稼いだ。剣、買う」


 武器屋の主人は豪快に笑った。

「へっ、筋肉芸で稼いだのか! いいじゃねえか、気に入った! ほらよ、竜紋の大剣だ!」


 スケルトンは剣を受け取ると、両腕を掲げ――ダブルバイセップス!

 ぎらりと光る銀刃と、隆起する筋肉が同時に輝き、観衆はどよめいた。


「か、かっけぇぇぇ!!!」

「英雄がさらに武装したぞ!」


 スケルトンは満足げに剣を背負い、再び脳内に声を響かせる。

「主……これ、すごくカッコいい」

「はいはい、良かったな……」敬人は苦笑を隠せなかった。


 だがジンザは顎を撫で、冷静に呟く。

「……しかし、これではますます目立つ。潜入どころか街の偶像となるのではないか?」


 神様は天界で大爆笑。

「ぶははっ! 潜入って言葉もう忘れてるでしょ!? 筋肉+大剣=ヒーロー誕生じゃん!」


 こうして、ムキムキスケルトンは大道芸で自力で稼ぎ、大剣を手に入れた。

 街の人々からは「筋肉騎士」と呼ばれるようになり、その名声はさらに広がっていくのだった――。


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