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骨の斥候、街を覗く

敬人は焚き火の火を前に腕を組んだ。

「……ダンジョン内の把握は進んだ。だが問題は外だな」

 目を閉じれば、かつての人間だった頃に見た街の記憶が蘇る。城壁に囲まれ、商人が行き交い、兵士が巡回していた場所――。

 今の自分はアンデットとアリの中間軽々しく出れば討伐対象になるのは目に見えている。


 そこで彼は、頼れる眷属へ視線を向けた。

 骨が妙に盛り上がった、筋肉質なシルエットを持つムキムキスケルトンである。


「お前に街の様子を探らせたい」

 ギシギシと骨が軋む音と共に、スケルトンは胸を張って敬礼した。


「うわ〜、街中にムキムキ骨が歩いたら即アウトでしょ〜」

 神様が相変わらず緩い声を出す。

「変装ぐらいしたら?」

「骨にどうやって変装させるんだ……」

 敬人は苦笑しながらも、スケルトンにボロ布を被せ、旅人風に見えるよう調整した。

 ――いや、どう見ても不審者だ。


 それでも仕方ない。敬人は視界共有の術式を発動させた。

 瞬間、彼の目に映るのは街道の風景へと切り替わる。


 ◆


 ムキムキスケルトンはぎこちない歩調で街道を進む。

 人影が増え、遠くに城壁が見えてきた。街の門前には荷馬車が列をなし、行商人たちの声が響いている。


「おお……まだ健在か」

 敬人は感慨深げに呟いた。


 しかし、近づくにつれて周囲の視線が突き刺さる。

 布で覆われているとはいえ、異様な体格と歩き方は隠しきれない。


「おい、あの旅人……なんか変じゃねぇか?」

「骨みたいに痩せすぎ……いや、骨そのもの?」


 兵士たちが槍を構えてこちらを注視する。

 スケルトンはぎこちなく手を振ってごまかそうとした。


「やっばいね〜、完全にバレてるよ!」

「……撤退だ」


 敬人は即座に命じる。

 スケルトンは踵を返し、ぎくしゃくとした走りで森の中へと逃げ込む。兵士たちは数歩追いかけたが、森に入った時点で諦めたようだった。


 ◆


 視界共有が解け、敬人はため息をついた。

「やはり正面からは危険か……。だが街の警備状況や兵力の一端は掴めた」


「うんうん! てことは次は変装スキルを持った眷属を仲間にすればいいね〜!」

 神様が楽しげに言う。


 敬人は口の端を吊り上げた。

「……それも悪くない。次の手を考えるとしよう」


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