忘れ去られた箱
……おい。なぁおい。
俺のこと覚えてるか?
そうだよ、俺だよ俺。コロスハコだよ。
最近な、マジで影薄すぎじゃないか?
敬人は「光に包まれて骨になった」とかド派手に進化して、スケルトンアントだのムキムキ骨だの呼ばれてキャーキャー言われてるだろ?
くもりんは相変わらずボスキャラみたいに糸ピュンピュン出してるだろ?
アリリマートに至っては「クウ! タベル!」とかカタコトで存在感バッチリだしな。
で、俺は?
ただの箱。いや名前はあるんだぞ? コロスハコって立派な名前が!
でも扱いは「背景」「空気」「なんかそこにあったよね」だ。俺はモブの家具か? 冒険者宿の飾り棚か? ……おい返事しろ!
――その時だった。
天井から妙に明るい声が響いた。
「そーいえばその箱、スキル【収納(大)】持ってるから! だいたいの物なら入れて置けるよー。忘れてた、ごめーん☆」
……は?
神様!?
いや、もっと早く言えよ!! 俺がどんだけスルーされてたと思ってんだ!?
ていうか「ごめーん☆」じゃねぇ! 軽すぎんだろ!?
でも待てよ……収納(大)? 大体の物入る?
……ってことは、俺が本気出せば拠点も食料庫も全部カバーできるんじゃねぇか!?
やべぇ、俺、もしかしてとんでもなく重要ポジションなんじゃ……!
テンションが上がりかけたその時。
「コロスハコ、タベル。モッテキタ」
……アリリマートだった。
両手で、得体の知れないキノコとか、森で拾った果実とかを抱えてる。ポト、ポト……と俺の中に落としていった。
「ハコ、タイセツ。オマエ、ナカマ」
………………。
ふ、ふんっ! べ、別に嬉しかねぇし!
これはたまたま俺の中に入れとくのが便利だからだろ! 決して俺が必要とされてるとか、大事にされてるとか、そんなこと思ってねぇからな!
……でも。
内心ちょっとだけ、胸の奥がじんわりあったかくなった。
忘れ去られた俺でも、アリリマートはちゃんと見てくれてたんだ。
しかも神様からの謎の伝言で、俺には収納(大)とかいうスゴイのまで付いてたし……。
ふ、ふんっ! こうなったら覚えておけよ!
次に俺の中に食べ物突っ込んできたら、ピカピカに整理整頓して返してやるからな!
俺はただの箱じゃねぇ……! 俺は! コロスハコ様だーーーっ!




