筋肉(骨)は裏切らない
召喚の光が消え、そこに立っていたのは――筋肉で鎧った骨。
いや、骨そのものが筋肉ポーズを決めているという奇妙すぎる存在だった。
「……ムキムキスケルトン。ほんとに出ちゃったよ」
敬人は頭を抱えた。
「タカト!スゲエ! ホネ、ムッキムキ!」
アリリマートがカタコトで爆笑する。
蜘蛛のくもりんも鋼糸を震わせていた。
「……召喚失敗どころか、方向性が意味不明なんだが」
しかしその時、森の奥から複数の足音が迫ってきた。
「チッ、やっぱり来やがったな。盗賊の増援だ!」
くもりんが糸を張る。
十数人の盗賊が血走った目で飛び出してきた。
武器を振り上げ、こちらに殺到する。
「こ、ここは俺が――」
敬人が前に出ようとした瞬間。
ムキムキスケルトンが一歩前へ。
胸を大きく張り、ガシッとポーズを取る。
「フロントダブルバイセップスッ!!」
骨の腕を力強く広げた瞬間――盗賊たちの剣が、次々とバキバキへし折れた。
「な、なんだと!? 剣が……勝手に……!」
「ひぃいい! ポーズで武器が砕けるとか反則だろ!」
驚愕する盗賊たちに、ムキムキスケルトンは腰をひねり、さらに叫ぶ。
「サイドチェストォォ!!」
骨の胸郭が爆発的に振動し、衝撃波が盗賊たちをまとめて吹き飛ばした。
盗賊たちは木に叩きつけられ、白目を剥いて倒れる。
「……つ、強すぎる……」
敬人は呆然とつぶやいた。
「ホネ! サイコー! オレ、アリリマート、キンニク、スキ!」
アリリマートが笑い転げる。
しかし敬人は額を押さえた。
「いや、強いのは分かったけど……ポーズと技名が致命的にダサいんだよな……」
『ね、言ったでしょ? ムキムキは強いんだって!』
またしても、神様の茶々が頭に響く。
『ただし~……かっこよくポーズ決めないと力が出ないんだよね~! でも映えるからいいでしょ?』
「映えとか言うなあああああ!!」
敬人の絶叫が森を揺らす。
その横で、ムキムキスケルトンは満足げにもう一度――
「ダブルバイセップスッ!」
決めポーズを取っていた。
森に沈黙が訪れる。
「……いやいや、やっぱり笑うしかねぇだろ!」
くもりんが糸を震わせて爆笑した。
「ホネ、オモロイ! ホネ、トモダチ!」
アリリマートも目を輝かせて叫ぶ。
こうして敬人の仲間に、ポーズで戦う最強の骨戦士が加わったのであった。




