表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

新しい能力

 戦いが終わり、辺りに漂うのは冒険者たちが残した血と埃の匂い。しかしその中心で、敬人の胸中は妙に落ち着いていた。

 ――俺は、進化した。スケルトンアントとして。

 その証拠に、体の奥から何か新しい力が湧き上がってくるのを感じる。


「なんだ、この感覚……。頭の中に……命令を下せる“何か”がある」


 試しに意識を集中させると、脳裏に黒い炎が走り、地面に淡い魔法陣が浮かび上がった。


「バクハツ!コワイ!」

 アリリマートが慌てて敬人の後ろに隠れる。

 くもりんは逆に冷静で、糸を構えながら目を細めた。

「……これは、“召喚”の気配だ。アンデットを呼び寄せる能力か」


 ゴゴゴ……と地面が揺れた。

 そして現れたのは――


 バキバキバキッ!


 土を突き破って姿を現したのは、巨大な骨格の戦士。

 いや、ただの骨ではない。肩や腕に無駄に盛り上がった筋肉……いや、筋肉ではなく「骨の塊」が筋肉のように重なり合っているのだ。

 その姿は、誰がどう見ても「ムキムキ」だった。


「な、なにこれ!? スケルトンなのに……マッチョ!?」

「おいおい、俺こんなの呼んだ覚えないぞ!?」

 敬人が叫ぶと同時に、どこからともなく声が響く。


『あー、うんうん! バッチリ召喚できたねー! ちなみにそいつの名前は“ムキムキスケルトン”。君の最大のライバルだよ!』


 ヘラヘラとした神様の声だ。天界から覗き込んでいるのだろう。


「……神様、絶対遊んでるだろ」

『えー? そんなことないよ? だって強い方が楽しいじゃん! それに敬人、あんまり地味な骨呼び出しても物語が映えないでしょ?』

「いやいや、映えとか考えるのお前ぐらいだから!」


 その間もムキムキスケルトンはポーズを取り始める。

 片手で上腕二頭筋を見せつける「力こぶポーズ」、両腕を広げる「フロントダブルバイセップス」、そして腰をひねって「サイドチェスト」。

 観客がいるわけでもないのに、骨の筋肉を見せつけている。


「……スケルトン?ドウシタ?」


「……知らん。むしろ俺の精神力が削られてる」


「キンニク…カッコイイ!」

 アリリマートはキラキラした目で呟いた

 

すると神様が追い打ちをかけるように言った。

『あ、それねー。実はムキムキスケルトン、戦闘力は見た目通りに強いんだよ! ただし……技は全部ポージングを通さないと出せないけどね!』


「なんだそのデメリットはあああああ!!」

 敬人の叫びが森に響いた。


 だが、確かに強力な力を得たことは間違いない。

 敬人はため息をつきつつも、ムキムキスケルトンの堂々たる姿を見て思った。


「……まあ、見た目はアレだが。これも俺の進化の一部ってことか」

 その眼窩の紫の炎が、ゆらりと揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ