死を纏う進化
冒険者たちの断末魔が消え、戦場に一瞬の静寂が訪れた。
息を呑むような重苦しい空気の中、その中心に立つ敬人の体が突如、奇妙な光に包まれる。
「タカトシンカマモル!!」
アリリマートが慌てて吠えた。巨体を揺らし、まるで守るように周囲を暴れ回る。
彼はかつて敬人に救われた。その恩を忘れぬがゆえに、今度は自分が守る番だとばかりに、仲間を寄せ付けぬよう前脚を振り回した。
光はなおも強さを増していく。熱気はない。だが、魂を焼くような重みを帯びた光だった。
「ついに進化だね」
どこからともなく、あの神様の声が響く。
軽薄で、しかし有無を言わせぬ力を持った声音。
「ごめん。僕の趣味でスケルトン系に無理やり進ませるからね。まあ、ご褒美と思って受け取ってよ」
悪びれもなく放たれたその言葉に、敬人は心の中でツッコミをいれる。
「…スケルトンにいい思い出ないんだけどなあ」
だが、抗う術などない。
敬人の外殻にひびが走った。硬い音を立てて砕け落ちていく黒い装甲。
その下から、白く硬質なものが覗き始めた。
――骨。
人ならぬ蟻の姿をしたまま、しかしその身は死の象徴を纏ったかのような異形へと変わっていく。
ひと欠片、またひと欠片と外殻が崩れ落ち、最後には白骨のような装甲が全身を覆い尽くした。
「ほ、骨……!? これは――スケルトンアントか」
くもりんが低く呟く。
その声には驚きと、わずかな畏怖が混じっていた。
やがて光が静まり、闇に馴染むように消えていった。
その瞬間、敬人の眼窩から淡い紫の炎がふっと灯り、揺らめき始める。
死者の焔――だがその炎には、確かな意志と熱が宿っていた。
「……ごめん、待たせたね」
静かに、しかし確かな声が響く。
紫の炎が言葉に呼応するように、ゆらゆらと強さを増した。
「神様のやり方は気に入らない。だが……やっと俺も進化できた」
その言葉に、アリリマートは嬉しそうに甲高い鳴き声を上げた。
くもりんは黙して見守りながらも、その眼に新たな光を宿す。
死を纏いし蟻――スケルトンアント、ここに誕生す。




