表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/46

タカラモノ!

くもりんは高い天井に身を張りつけ、ゆるやかに視線を落とした。

その声音は、低く響き渡る。


「……この迷宮は、我が安息の地。

 主を失い、彷徨うばかりであった我を、静かに受け入れてくれた場所。

 ゆえに――誰一人、踏みにじらせはせぬ」


 敬人はその気迫に思わず背筋を伸ばす。

「……なら、俺たちも守ろう。この場所はもう、お前だけのものじゃない。俺たちの居場所でもあるんだ」


 その言葉に、アリリマートが身体を大きく揺らし――

「オオオオオォォォォ!! タタカウ!! オレ、タオスゥゥ!!!」

 奇声をあげながら鎌脚を振り回し、砂煙を巻き上げた。


 くもりんは一瞥をくれ、威厳を崩さぬまま口を開く。

「……うむ。力は猛り、智は荒削り。しかし猛き戦力としては申し分あるまい」


「なんかバカにしてないか!?」と敬人が振り返ると、

「ふふ……何を申す。我はただ、この力強き同胞を讃えただけだ」

と、泰然と答える。


 そうして一行はしばし休息に入った。

 敬人は岩に腰を下ろし、今後の方針を思案する。

「仲間は増えた。けど、この迷宮を守るとなると……仕組みを考えないとダメだな」


 くもりんは壁の高みに身を預け、戦いで裂けた外殻を静かに修復していた。

「我は力を蓄える……次の侵入者に備えねばならぬ」


 そんな中、アリリマートが「オオオ!」と声を上げ、どこかへ駆けていった。

 敬人は目を瞬かせる。

「え、どこ行くんだよ……」


 しばらくして――地響きと共に、アリリマートが大きな何かを引きずって戻ってきた。

「ミテ!! ミテェ!! スゴイモノ、ミツケタァ!!!」


 その鎌脚に抱えられていたのは、豪奢な装飾が施された一つの大きな宝箱だった。

 蓋には牙のような彫刻、側面には禍々しい紋様。明らかに只者ではない。


「……って、まさか、それ……」と敬人が立ち上がる。

 アリリマートは目をキラキラさせ、誇らしげに宝箱を掲げた。

「タカラモノ!! ゼッタイ、ナニカ、スゴイノ、ハイッテルゥゥ!!!」


 ――その瞬間。

 宝箱の蓋が突如として牙のように開き、唸り声をあげながらアリリマートに噛みつこうとした。


「ギシャァァァァッ!!」


「ナンダァァァ!? クウノカァァァァ!? オレ、クワレルゥゥゥ!?!?」

 一瞬後、アリリマートの目に炎のごとき怒気が燃え上がる。

「……コロス!! コロスコロスコロスコロスコロスコロスゥゥゥ!!!!」


 槍を振りかざし、凄まじい速度で人喰い宝箱を突きまくる。

 金属音と衝撃が迷宮に響き渡り、宝箱は蓋をばたつかせて必死に防御を試みる。


「ギ、ギギ……! マ、待テ……!! 我、降参スル……! 子分ニ、ナル!!」


 必死の命乞い。

 アリリマートは荒い息を吐きながらも槍を止め、その場で仁王立ちした。

「……コブン? オレノ、コブン……? ウン!! ヨシ!!! オマエ、コブンゥゥ!!!」


人喰い宝箱……いや、新たなる同胞よ。名は何と申す?」


「オ、オレ……? ナ、名前ナイ……。欲シイ……」

宝箱はおずおずと答えた。


アリリマートはすぐさま叫ぶ。

「コロスハコ!! ナマエ!!」


「おい、それは不吉すぎるだろ……」

タカトのツッコミが響き、洞窟はどっと笑いに包まれ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ