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狂槍への覚醒

デカいアリの体が突然、淡い光に包まれた。

次の瞬間、巨体は地面に崩れ落ちる。激しい戦いの末に倒れたのではない。まるで深い眠りに落ちるように、静かに動かなくなった。


「……まさか、進化の前兆か?」


直感で理解した。だが同時に背筋を冷たいものが走る。

いつもなら絶叫をあげて暴れ回るはずの仲間が、今はまったく無防備だ。


傷だらけの殻。砕けかけた脚。

その痛々しい姿を目にした瞬間、胸の奥に重いものが込み上げてくる。


「お前……こんなになるまで戦って……。俺のために……」


喉が震える。自分はまだ未熟で、戦う力も弱い。

なのに、あのデカいアリは体を張って、何度も前に立ってくれた。


「なら、今度は……俺が守る番だ」


耳を澄ませば、森の奥からざわめきが近づく。小型の魔物たちが、血の匂いに釣られてやってきたのだ。


震える手で武器を構える。足は鉛のように重い。

それでも、背後で眠る仲間を踏ませるわけにはいかない。


迫りくる小鬼の群れに向かって叫ぶ。

「来るなら来い! 俺ごと飲み込め!」


必死の一撃は浅い。反撃を受け、体が吹き飛ぶ。

血がにじむ。だが立ち上がる。倒れるわけにはいかない。


その瞬間――背後から眩い光がほとばしった。

デカいアリの体を包む光は槍のように鋭く天へと突き抜ける。砕けた殻が音を立てて粉砕され、傷はみるみる癒え、砕けた脚は新たに生え変わった。


「……進化……!」


光が収まり、そこに立っていたのは見違える存在だった。

巨大な体躯はより引き締まり、前脚は長大な槍と化している。漆黒に輝く殻は光を反射し、ただそこにいるだけで敵を貫く気迫を放っていた。


狂槍アント(バーサークランサーアント)――荒ぶる戦槍の名を冠する、新たなる姿。


その瞳が主人公を一瞥すると、狂槍アントは大地を揺るがすほどの雄叫びをあげた。

「オオオオオオッ!!!」


叫びと共に槍を振り回し、襲いかかってきた小鬼たちを蹴散らす。突進、連撃、嵐のような槍の乱舞。小鬼たちは成す術もなく次々と串刺しにされ、地に倒れていく。


主人公は呆然とその光景を見つめ、思わず笑った。

「おいおい……とんでもなく、カッコよくなったな」


狂槍アントは低く唸り、なおも力強く体を震わせる。その声はまるで、仲間である自分に応えるようだった。


光が残した熱気と槍の振動が消えると、戦場には完全な静寂が訪れる。主人公は胸を張り、心の奥で強く思う。


「……俺は、この仲間と一緒に戦えるんだ……」


その瞳に決意の光が宿った瞬間、狂槍アントの槍が夕陽を受けて鋭く輝く。未来の戦いが、今、確かに動き始めたのだった。


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