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狂気と進化の予兆

谷底には、カマキリの死体の匂いに誘われた敵たちが群がっていた。

 蜘蛛、ムカデ、小型の甲殻モンスター……数は多く、全てが俺を取り囲む。


 その中で、デカいアリはすでに待ち構えていた。

 全身ぼろぼろ、傷だらけなのに、瞳には燃えるような狂気が宿っている。


「オオオオオオ!!」

「コロス!!コロス!!コロス!!」

「カマキリイイイ!!!」


 叫びと共に、デカいアリが突進。頭突きで一匹、脚払いで別の一匹――敵が次々と吹き飛ぶ。

 土煙が舞い、谷底全体に轟音と狂気の気配が渦巻く。


 俺はスキル結晶「鋭刃化」を手に取り、武器を鋭利化。

 投げた棒や岩を、デカいアリの突進に合わせて敵に命中させる。


 デカいアリが狂乱の絶叫を続ける中、俺は思わず声を荒げた。

「ちょ…おい、走る方向ちょっと考えろ!俺まで巻き込むぞ!」

 デカいアリは耳も貸さず、さらに叫びながら敵を吹き飛ばす。


「コロス!!コロス!!カマキリイイイ!!!」


 耳が痛くなるほどの絶叫だ。

 でも、その狂気の一撃で敵は翻弄され、戦場は徐々に整理されていく。


 敵の数は多く、吹き飛ばしてもすぐに別の敵が押し寄せる。

 俺は息を切らしつつも、冷静に戦況を整理した。

「……落ち着け、落ち着け。デカいアリがいる。俺は補助に徹すればいい」


 デカいアリは頭突きで岩を弾き、脚で敵を押し潰しながら狂気じみた絶叫を続ける。

 俺もスキルを活かし、谷底の障害物で残った敵を片付ける。


 戦闘が終わると、谷底には静寂が戻った。

 デカいアリはゆっくりと俺の方を向き、荒い息を吐く。


「ツカレタ…ヤスム…」


 そのまま動かなくなり、体の一部がわずかに光を帯びる――進化の前兆のようだった。


 俺は手に握った結晶を見つめ、思わず呟いた。

「お、おい……お前、今から何をするつもりだ……?」


 遠くで、聞こえないが神様の笑い声がする気がした。

 ――デカいアリの成長が、これからの戦いに何をもたらすのか、誰もまだ知らない。


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