二月二十五日・ヱビスビールの日
題材がないには連載を練っております悪しからず。
※本日はビールという本二十歳未満は関与するべきでない分野について書かせていただきます。飲酒を助長することが目的ではなくまた無名ながらも取り多くの方に読んでほしいという思いから年齢制限はかけません。悪しからず。
父さんは、偉大だった。のか?
ああ、そうだとも。偉大だった。何時間仕事をして帰ってきても子供に気をかけていた。前日働いて飯食って泥のように眠っていた次の日、遊びに連れ出してくれた。土曜何時間と遊んだ後日曜は起きて飯作って出勤していた。俺が問題を起こしたとしてもすぐに駆け付けて対応してくれた。
傍目からでも、いや、子供だからこそか、偉大だった。
今朝、父さんは死んだ。昨日も働いて、飯食って、また泥のように寝た。今朝珍しく起きないと思い起しに行ったら空気と同じ体温だった。
俺は普通に学校に行った。父さんならそうさせると思って。昼飯を食った。部活をした。帰って飯食った。風呂に入った。
父さんがいなくなっても自分にはなんら影響はなかった。
そして母さんから話を聞いた。心臓疾患だった。もっと言えば心筋梗塞だった。へぇ、とだけ応えた。
心筋梗塞になった理由は過労だそうだ。多分この時もへぇ、と言ったのだろう。
母さんはいつもより三時間早く床に入った。今は十二時。右手にはビール。
母さんが寝たから飲んだ。それ以上でもそれ以下でもない。多分今後減ることはないだろう。
缶には釣り竿と鯛を持ってニヤニヤしているおじさんが写っている。しかし腹立たしくは感じなかった。
初めてのビールは、苦かった。少し塩っぱかった。
お父さんはすごい。
あんなに忙しく働いているのに苦しそうな顔は見たことがない。
夜ご飯の時もこんな法律がどうだの何パーセントの人がああだの話してくれている。
お父さんと仲良くするのは癪なので適当に相槌を打っていたがあれは割に楽しかった。
お父さんは忙しい。厚生労働省の官僚とかで毎日、働いている。
お母さんは働きすぎも良くないわよ、と言っている。お父さんは笑顔で大丈夫だ。と応えた。
車に轢かれたのだそうだ。歩道からふらっと転落。車側の責任は問われなかった。
お父さんのバックからは法案審議の提出書類。上司の人が葬儀の時に持って行った。
お母さんはお通夜に行っている。僕は明日も学校だからとかで家にいる。
一度寝て一時間後の十二時、無性に喉が渇いて冷蔵庫を開けたらヱビスビールが入っていた。
お父さんはこれを飲みながら、苦いけどめっちゃ旨いってずっと言っていた。
大人になったらわかるさって言っていた。
僕も習った。
苦かった。
「うめぇ」
俺は官僚になろう。
僕は国会議員になろう。
二やけたおっさんに誓って。
恵比須様に誓って。
@
今日も帰ってくると可愛い我が息子が待っている。
あいつにかかれば疲れなんて関係ない。
帰りにはヱビスを買って行こう。
会社は疲れるが仕事で金がもらえんなら別だ。
ただ、あいつにはそんな生き方はして欲しくねぇな。
自動販売機は便利だ。深夜の光源には最適。街灯は寒すぎる。
俺が金稼げばあいつは学んでいい仕事に就ける。
俺が病気持ちなのは知ったことだ。もう遅い。自分が一番知ってる。
「さて、もうひと踏ん張りするか!」
今回は短いですがヱビスビールについて書かせていただきました。働く人は偉大ですが、経済の担い手だけにその影響力は馬鹿になりません。因みに筆者は未成年故飲んだことはありません。人さまからの感想です。
本日二月二十五日はヱビスビールの日。
1890年と今日にヱビスビール第一号が発売されました。以来、働く人と共に進んできたヱビス。せめて僕が成人するまでは残っていてほしいものです。