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恋の基準値  作者: みゆ
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昼休み

「瑞穂、沙和ってばね、一昨日のことお兄ちゃんに話したんだって。」

 昼休み。

 食事を終えた生徒達がそれぞれ仲の良い人とそれぞれがしたいことをする、授業と授業の間の一番長い休み時間。

 私達三人も、いつものように教室の隅に集まって話をし出したのだけれど、明日香がその話題を出したので、ちょっと居心地が悪くなりその場から離れたくなった。だってそんなこと瑞穂が知ったら、絶対怒るに決まってるから。

「何?一昨日のことって?」

 瑞穂が不思議そうな顔をする。

 忘れているのか、それともさすがに私がお兄ちゃんにそんな話はしないだろうと思っているのかは分からないけれど、このままこの話題が終わってしまえば瑞穂に怒られなくて済むと思った私は、明日香をジロッと睨んで

「何でもないよ、ね、明日香。」

と、これ以上は言うなという気持ちを込めて言った。

 でも、明日香にはその気持ちも睨んだことも伝わらなかったみたいで、

「だから、ほら、校庭で瑞穂が言ったでしょ。お兄ちゃんとキスとか…出来るのかって。あの話。」

と告げてしまった。

 何で言っちゃうの〜!と私が言うよりも早く、瑞穂が赤い顔をして私を睨む。

「沙和〜!何でそんな事言っちゃうの?」

「ご…ごめんなさい〜。」

 瑞穂の睨みがあまりにも怖かったので、私は少し怯えながら瑞穂に謝る。

「あのねえ、そんな話されたら、私達どんな目で見られるか分からないんだよ?もう沙和の家に行けないじゃん。」

「だから、ごめんねってば…。」

「まあまあ。」

 私と瑞穂のやりとりを聞いていた明日香が仲裁に入る。

 そもそも明日香がそんな話題を振らなければ瑞穂に怒られることもなかったのに…と、再び明日香を睨む。すると、今度は明日香も気付いた様で、私を見て、笑いながらも小さな声で

「ごめん。」

と言った後、

「まあ沙和が言っちゃったのはしょうがないとしてさ。それよりも、沙和と沙和のお兄ちゃんが、どんな話したのか聞きたくない?」

と、瑞穂に提案した。

「ちょっと、明日香!?」

 “ごめん”って言ったくせに、全然悪いと思ってないよ〜!

「だって、昨日詳しく聞けなかったからさ。」

と、明日香はいたずらっぽく笑って私を見る。

「確かに。」

 瑞穂もうんうんと頷いて、私を見た。

「話したらお兄ちゃんに言ったこと許してあげる。」

 そんな事言われたら、話すしかないじゃん…。

 私は唇を尖らせた。


「それで、何話したの?」

 明日香が身を乗り出して私に尋ねた。

 私は憎しみを込めた目で明日香を見ながら

「だからっ、昨日も言ったけど、“あり得ない”って言われたんだってば!」

と、少しムキになって言った。

 それを聞いた瑞穂が

「何?あり得ないって?」と明日香に尋ねて、明日香が

「沙和とお兄ちゃんが、そういうことをする関係になることが、だって。」

と答えた。

「そりゃそうでしょ。」

 瑞穂が“当たり前”といったような顔をする。

「そうだけど。でもさ、“出来る”って言われたら面白くない?」

「まあ面白いけど、そこまでいったらヤバイでしょ。」

 二人が私をそっちのけにして笑っているのを見て、私は顔を膨らませる。

 大体瑞穂があんな事言った所為でこんな事になったのに、面白がりすぎだよっ!

「ていうかさ、」

 瑞穂が再び私を見た。

「そもそも何で、そんな話お兄ちゃんにした訳?」

 再び投げ掛けられた疑問に、私は口籠もって

「それは…。」

と、モゴモゴと声を出した。

「何?」

 二人が興味津々といった目で、私を見つめる。

「だからそれは…。お兄ちゃんなら分かるかなって思ったから…。」

「え?」

「…お兄ちゃんなら、そういう経験あるかもしれないから、…だからそういう事を私と出来るのかって、分かるかなって思ったんだもん。」

 それを聞いた二人は、一瞬きょとんとした顔になって、次の瞬間爆笑し始めた。

「やだ、沙和、超うける〜!」

「経験あってもなくても、普通出来ないって分かるってば〜。」

 二人は笑い続ける。

「沙和ってば、何も分かってないよね。」

「本当。やっぱりおこちゃまだよね〜。」

 大爆笑の二人の横で、私は真っ赤になって顔をプウッと膨らませた。

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