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恋の基準値  作者: みゆ
18/58

恋と友情

「あー、面白かった!」

 どれくらい時間が経ったのか、気が付くと明日香達が二回目となったジェットコースターを乗り終えて、私達がいるベンチの所に戻って来た。

「お帰り。」

 私は心臓がドキドキしている事を悟られないように、なるべく冷静を装ってみんなを出迎えた。でもそんな心配は必要なかったようで、明日香は

「本当面白かったよ!沙和も乗れば良かったのに。」と言ってはしゃいでいる。それを見て内心ホッとしたけど、明日香が“もう一度乗ろうよ”と言いだすんじゃないかと怖くなって、私は引きつった笑顔で

「他の所にも行こうよ。」

と明日香に告げた。


「じゃあ、今度はお化け屋敷ね!」

 明日香が再び先頭に立って、私達を誘導する。

「うん!行く行く!」

 さっきのジェットコースターとは違い、今度は心から明日香の提案に賛成した。すると後ろから

「えー、やだなあ。」

と言うゆみさんの声が聞こえ、明日香と私は同時に振り向いた。

「ゆみさん、お化け屋敷嫌いなの?」

「嫌いっていうか…、暗いし、急にお化けが出てきて驚かさせるし、怖いじゃない?」

「えー、なんで?怖くないよ。面白いよ。」

「そうそう。そのびっくりするのが面白いんだよね。」

 ゆみさんは、明日香と私の本当にお化け屋敷を楽しみにしてる、はしゃいだ声を聞いて

「…凄いね。」

と、苦笑いした。


 お化け屋敷を堪能した後も、メリーゴーランドやら絶叫マシーン(ジェットコースターより怖くないもの)やらを堪能して、私と明日香のテンションは相当上がっていた。でも田中君の

「腹減った。」

という呟きに、自分達もお腹が空いている事に気付いて時計を見ると、時間はとうに午後二時を過ぎていた。

 そろそろご飯でも食べようと入ったレストランは、昼時を過ぎているにも関わらず混みあっていて、全員が近くに座れる席が空いていなかったので、仕方なく女子グループと男子グループに分かれて食事を取ることにした。

「ゆみさんって、おじさんといつから付き合ってるの?」

 サラダを食べていた明日香が、唐突にゆみさんに質問を投げ掛けた。私も興味が湧いたので、やはりサラダを食べながらゆみさんを見る。すると

「えー、いつから…かなあ。」

というゆみさんの返事が返ってきた。

「いつからか判らないの?」

 不思議そうにゆみさんを見る明日香。

「うん…。ちゃんと付き合い始めたのは、多分高校に上がった頃だと思う。」

 詳しく話を聞くと、ゆみさんとおじさんは所謂幼なじみで、小さい頃からずっと一緒だったらしい。そして気が付いたらお互い好きになっていて、自然と付き合い始めた、との事だった。

「凄いね。」

 明日香がため息を漏らす。私も明日香の感嘆の声に、うんうんと頷いた。

「生まれた時からずっと一緒なんだ。そんなに一緒にいられるなんて凄いね。」

「そう?」

 ゆみさんは

「もう一緒にいるのが普通って感じなんだよね。」

と笑った。

「そんな一緒にいるなら、結婚しちゃえばいいのに。」

「うん。実は、そういう話が出てて。だから今日も、明日香ちゃんと仲良くなりたいから来たんだ。」

「えー、そうなの?!」

 自分で結婚の話を持ちかけたのに、驚く明日香。

「そうなんだあ。じゃあ、私とゆみさん、親戚になるんだね。」

「このまま上手く話が進めばね。」

 ゆみさんは笑顔で頷いた。

「そっかあ。…やっぱり凄いなあ。」

 再び明日香が感嘆の声を漏らした。

「生まれてから、それにこの先も、ずっと一緒って事でしょ。…いいな。私も好きな人とずっと一緒にいたい。」

「明日香ちゃんはそういうタイプなんだ。」

 明日香の言葉を聞いて、ゆみさんが笑った。

「でも私達、本当にずっと一緒って訳じゃないよ。大学の時は離れてたし。」

「えー、そうなの?嫌じゃなかった?」

「しょうがなかったからね。」

「私は嫌だな。好きな人とは高校も大学も一緒がいい。」

 そうなんだ。

 私は明日香を見つめた。

 じゃあ、明日香は田中君と一緒の高校受けるのかな。うん、きっとそうするんだろう。そういえば以前も瑞穂に聞かれて、そんな様な事言ってたし。私は出来たら、高校も明日香達と一緒に行きたいけど、田中君が行きたい所は私が行きたい所とは違ってるのかな。もしそうだとしたら、明日香とも離れ離れになっちゃうんだ。瑞穂は一高だし、みんなバラバラになっちゃうのかもしれない。

 そんな事を考えていたら寂しさが襲ってきて、私は俯いた。もし私が明日香と同じ高校に行きたいと言ったら、明日香はどうするんだろう。それでも田中君の方を取るのだろうか…。

 明日香は私の暗い気持ちに気付くことなく、ゆみさんと楽しそうに話し続けている。

 寂しさは消えないけど、せっかく遊園地に来て楽しんでるのに、一人で暗くなってるの、嫌だな。そう思った私は気分を変えるように、サラダを口一杯に頬張った。

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