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恋の基準値  作者: みゆ
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春休みの計画

 期末テストが終わり、もうすぐ春休みがやってくる。

 私達は久々に三人で、校庭のいつもの場所に向かった。

 テスト期間中は部活が休みだったせいか、野球部はいつも以上に活気に溢れていた。

 明日香は、大勢の部員の中からすぐに田中君を見つけ出して、目で追い始めた。


 あのバレンタインの出来事以来、二人の関係はちょっと変わった様な気がする。今までは喧嘩なんてほとんどした事がなかったのに、最近では些細な事でしょっちゅう喧嘩してると、明日香が愚痴をこぼしていた。でも次の日にはもう仲直りしてるし、野球部の練習も欠かさず見てる。それって前よりも仲良くなったって事なんだろうねって、瑞穂と私はよく話している。

 それがキスをしたからなのかは私には判らないけど、でもきっと今までとは違う何かが二人の中にあるんだろうな。

 じっと田中君を見つめる明日香の横顔が凄く大人っぽく見えて、私は羨ましさと置いて行かれるような寂しさを感じて目を逸らした。そして、明日香と同じ様に野球部の練習を見始めた。

 高瀬君の姿を見つけ、彼をじっと目で追う。

 以前は野球部の練習を見に来ても、特定の誰かを見るという事はなかった。でも一緒に帰ったあの日以来、高瀬君の姿に目が行くようになった。大変そうだけど楽しそうに練習をしている高瀬君を見ると、私まで嬉しくなる。女子と話す時は滅多に出さない笑顔も、ここでなら見れる。

 私もあんな風に高瀬君と楽しそうに話したいな。でも実際顔を合わせると、彼が苦手な訳ではないのに、妙に緊張して上手く話せなくなっちゃうから難しいかな。


「あ…。」

 いきなり明日香が何かを思い出したように声を上げた。私達は野球部の練習を見るのを中断して、明日香に目を移した。

「春休み中にみんなで遊園地行かない?親戚のおじさんがそこで働いてて、何枚かチケット貰ったんだ。」

「え、行きたい!」

 明日香の急な提案に、私は迷いもなく賛成する。

「瑞穂は?」

「私は、春休み中も塾があるから…。行く日による。」

「えっと、いつだったかな?何か先生達の集まりがあって、野球部の練習が一日休みの日があるんだって。その日に行こうって田中と話したんだけど…。」

「なら二人で行ってくればいいじゃん。」

 確かに。瑞穂の言葉に私も頷いた。

 そりゃあ遊園地には行きたいけど、二人のデートの邪魔をするのは嫌だ。瑞穂も一緒に行くならまだいいけど、もし行かないなら、本当に私一人だけ邪魔者になっちゃう。

「でも、みんなで行った方が楽しいじゃん。それに…。」

 明日香がちらっと私を見た。そして少しの間を置いてから、何やらこそこそと瑞穂に耳打ちし始めた。

「ちょっと、何?」

 私の方を見たって事は、私の話か、もしくは私に内緒にしたい話か…。どちらにしても、ここに三人でいるのに二人だけで話をされるのは、凄く嫌だ。

 楽しそうに話す明日香と、それを聞いて眉を潜めたり笑ったりしている瑞穂。そんな二人の会話が気になって、私はムキになって

「何話してるの!?」

と大きな声を出した。

「秘密。」

 明日香がニヤニヤしながら私を見る。

「何で教えてくれないの?」

 そう聞いても、二人は顔を見合わせて笑うだけで何も言わない。…絶対私には教えないつもりだ。

「…じゃあさ、一個だけ教えて。いい話?嫌な話?」

 私のその質問に、ようやく明日香が口を開き

「全然嫌な話じゃないよ。むしろ楽しい話だよね。」

と、笑顔で瑞穂と顔を見合わせた。

「本当に?」

 瑞穂を見ると、瑞穂もニコニコしながら私を見て言った。

「本当だよ。だからさ、沙和も遊園地楽しんでおいで。」

 さっきは明日香に“田中君と二人で行けば”と言っていた瑞穂の矛盾したような言葉に疑問を感じたけれど、あまりにも二人がニコニコしながら私を見ているので、私は顔をしかめたままでコクンと頷いた。

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