8話
という訳で、PV1000突破記念と感謝の本日2話目の8話です!
そして、PVに気を取られて見逃してましたが、ユニークも100を超えてました!本当にありがとうございます!
「なあシュウヤ、ちょっと気になることが一つあるんだけど聞いてもいいか?」
「聞くのは勝手だが、答えるかは内容次第だな」
「お前さん、昨日は肩掛けの鞄を持ってたよな?」
森を目指す道すがら、ふとフィリップがそんなことを聞いてくる。
てっきり『消失』の権能について聞いてくるとでも思ったら、予想に反してフィリップが聞いてきたのは鞄についてだった。
「ああ、確かに持ってたが、それがどうかしたか?」
「いや『どうかしたか?』じゃねえよ、まさかお前討伐依頼だからって武器と防具以外全部置いてきたとかじゃないよな?」
「はあ?討伐依頼だからって道具類を持たず手ぶらで行く?そりゃどんなバカの話だ?」
討伐依頼といえども、当然ながらポーション類の回復アイテムを持つのは基本だ。
それくらいは俺でも分かるというのに、そんなことすらわからない馬鹿でもいたのだろうか。
「いやだからな、お前さんが鞄を持ってないからそういう道具類を置いてきたのかって聞いてるんだが?」
「ん?ああ、そういうことか」
そういえば、確かに道具類は持ってきているが、フィリップの言う通り鞄には入れてなかった。
それでフィリップは俺が手ぶらだと勘違いしたのだろう。
ただ、このまま誤解されているのはアレなので、しっかりと誤解は解いておくことにする。
「ああ、道具類か、それなら鞄に入れて持ってると嵩張るからしまってある」
「しまってあるって、どこにだよ?まさかそのズボンのポケットの中とか言うんじゃないだろうな?」
フィリップは何を言っているんだろうか、ポケットの中に入るものなどたかがしれている。
しかも、ポケットになんて入れたら鞄に入れる以上動く邪魔になるだろう。
俺はため息を一つついて『亜空間収納』に手を突っ込んでとりあえずポーションを一つ取り出して見せた。
「ほれ、面倒だから全部は出さないが、道具類はちゃんと入ってるだろ?」
「な、な、な、な」
俺が『亜空間収納』から取り出したポーションを顔の前でちらつかせると、普段の軽薄そうな様子はどこへやら、驚愕の表情でポーションをじっと見つめていた。
「ん?どうした?このポーションなら道具屋でも売ってるようなものでそんな高級なもんでもないぞって、なんだ?」
冗談っぽくフィリップにそう言うと、ポーションを持ってない方の袖が引っ張られる。
何事かと思ってそちらに顔を向けると、珍しく少し驚いた表情でカティが俺のことを見ていた。
「今の、『アイテムボックス』?」
「ん?ああ、そうだな、そんなところだ。『アイテムボックス』ってのは珍しいスキルなのか?」
『アイテムボックス』と言えば、勇者三人全員が持っていたスキルだ。
名前とネット小説の知識から亜空間にものを収納するスキルだろうなと予想をつけた俺は、昨日のうちに『創造』で作っておいた能力だ。
名称は『アイテムボックス』ではなく『亜空間収納』だが、まあほとんど同じようなものだろう。
自分専用の亜空間を作り、その中にほぼ容量無制限でものを収納する。
おまけに中に入れたものは時間停止で氷は溶けず、生物は傷まずに保存できる便利設計で、なかなかに有用そうな能力だ。
それに、こうして能力という形で創造することも出来ると分かったのも大きな収穫である。
「ん、『アイテムボックス』持ちは珍しい。小さいものだと一般的な馬車の半分もないくらいの大きさだけど、それでも荷物を持ち運ぶ手間が減るのは便利。特に大きいのは貴族とか商人に結構な給料で雇われると聞く。ただ『アイテムボックス』の中も普通に時間が経過するから生物とかは結局運べないけど」
珍しく饒舌になりながら、カティが『アイテムボックス』の解説をしてくれた。
それにより、『アイテムボックス』がどういう代物なのかの情報も得ることが出来た。
そして、その間にフィリップもようやく再起動したようだ。
「シュウヤ、お前さん、『アイテムボックス』なんて便利スキル持ってたのか、それなら道具類を持ってないのも納得出来るな」
流石と言うべきか、再起動してから即座にまた軽薄そうな雰囲気を取り戻し、そんなことを言ってくる。
「まあな、んで、これで俺がちゃんと持つものは持ってるって分かったろ?」
「ああ、にしても昨日の不可視の結界といい『アイテムボックス』といい、多才で羨ましい奴だな」
「戦闘はド素人だけどな」
「それも怪しいもんだけどな」
そして、そんな会話をしているうちに、昨日のあの森──といっても昨日は森の外で襲われたわけで中には入っていないわけだが──に到着した。
この話では狩りに入りませんでした!
期待してる人がいたらごめんなさい!
次の話ではちゃんと狩りに入る予定ですので!