49話
四ヶ月ぶりの更新という盛大にお久しぶりすぎてごめんなさい!
なかなか筆が進まずこんなに時間がかかってしまいました⋯⋯
多分これからも更新間隔はとんでもないことになってしまうと思いますが、頑張って書いていきますので今後ともよろしくお願いいたします!
「んー⋯⋯『異界の門』」
もうすっかりお馴染みになってきた『創造』での新たな能力の創造と行使。
それにより、俺たちの使う馬車の扉が一瞬虹色に煌めき、そして程なくして元のシンプルな木の扉に戻った。
「多分これで問題なく出来てるはずなんだが⋯⋯」
そろそろ慣れてくれてもいいと思うのだが、相変わらず信じられないものでも見たかのように呆然としているミィナ以外の少女たちを横目に、今しがた新たな能力を使った馬車の扉を開く。
「おお、初期はこんな感じになってるのか」
扉の先に見えるのはいつもと変わらぬ馬車の内装だった────なんてことになるわけもなく、馬車の向こう側にはどこまでも広がる草原と、一軒の家があった。
「?⋯⋯??」
一人平然としていたミィナは、俺の行動が気になったのだろう。
俺と扉の隙間に器用に体を潜り込ませ、扉の中を覗き込んで不思議そうな顔をしている。
「俺が何かしたはずなのに、いつもと同じ馬車の中で驚いたか?」
「ん」
努めて普通の顔を作ってミィナに問いかけると、ミィナは俺の方を見上げてこくんと頷く。
図らずもミィナの行動で『異界の門』がイメージした通りの動作をしている事が確認できた。
「ミィナ、ちょっと右手出してみ」
「?⋯⋯ん」
俺の指示に不思議そうな顔をしつつも、素直に右手を差し出すミィナ。
そのミィナの手を取り、優しく手のひらを上に向けさせる。
「『異界の門』キー発行」
俺がそう呟くと、どこからともなく虹色の粒子がミィナの手のひらに集まってくる。光はやがて一つの形を浮かび上がらせ、直後に弾けるようにして虹色の鍵に変わった。
不思議そうな顔でミィナが手のひらに乗った鍵を眺めていると、鍵は再度虹色の粒子へと姿を変え、ミィナの中へと吸い込まれていく。
「よしよし、鍵の発行も問題なく出来るみたいだな」
今、ミィナに対して発行したのは、『異界の門』をくぐるための鍵だ。
『異界の門』が完全にイメージ通りの性能を持ってるなら──といっても創造で失敗をしたことは無いに等しいが──、これでミィナも『異界の門』の先に行けるはず。
「ミィナ、もう一回馬車の中を覗いてみな」
「ん⋯⋯⋯⋯ん?!」
俺の指示に頷きを一つ返し、再度馬車の中を覗き込んだミィナは、驚いた顔で馬車から顔を出し、馬車であることを確認してから再度中を覗き込む。
「ははは、驚いたか?」
「ん!」
先ほど俺が創り、馬車の扉に行使した『異界の門』は、利用者認証型の異空間だ。
利用権限のない人が馬車の扉を開けても、扉の先には何の変哲もない馬車の中が見えるだけ。しかし、発動者である俺か、俺が発行できる鍵を持ったものには、扉の先には異空間が広がっている。
ゆえに、ミィナが最初見た時と鍵を発行した後では馬車の中が別物になっているのだ。
ちなみに、馬馬車の扉にかけた『異界の門』も異空間への入口の一つが馬車の扉なだけであり、別に馬車が壊されたところで出入りができなくなることは無い。もっとも、馬車そのものも強力な防護をしているため、少なくともゴブリンキング程度の実力では傷一つつけることは出来ないのだが。
「ま、これならわざわざ宿をとるよりも遥かに安全で快適だし、馬車の中を見られても安心になるな」
まだ家の方は内部を確認していないが、一応日本の一般家庭のレベルの家具や寝具をイメージしている。こっちの高級宿のレベルがどの程度かは知らないが、そんじょそこらの宿とは比べ物にならないほどの設備とセキュリティが整っていると断言していいだろう。
「まあ詳しい説明はおいおいってことで、とりあえず全員に鍵を発行するから右でも左でもいいから掌を上に向けて前に出しといてくれ」
俺とミィナのやり取りを見ていただけの少女たちは、何がなんだかわからないという顔をしているが、指示には従って次々と手を前に出す。
「『異界の門』キー発行」
一人ひとりに順番に鍵を発行していると面倒だし時間もかかる。なので少女たち全員に纏めて鍵を発行し、少女たちを馬車の中へと誘った。




