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48話

「さて、と」


周囲に広がる惨状をぐるっと眺め、なんとはなしに呟くと、それだけで周囲にいる無事な阿呆共はびくっと身を竦める。

勇者(笑)が出てきた直後は、安心感からか元気があったようだが、その勇者(笑)までが倒されて、すっかり怯えあがってしまっているらしい。


「ここは俺らが泊まるにふさわしくないってのも分かったし、もう帰ってもいいよな?まあまだちょっかい出したいヤツがいるなら次からは命の保証なしに相手してやってもいいが」


残ってる奴らに視線を向けてそう問いかけると、まるで壊れた玩具のように必死になって首を縦に振って頷いていた。

まあそれも当然か、襲ってきた三馬鹿+勇者(笑)は死なないように手心を加えてる──一人二人発狂してるが、死にはしてない──が、次は殺すと宣言している。


「っと、流石にこの惨状をミィナに見せるわけにもいかねえよな」


別にこの力をミィナたちに向けるつもりは無いし、ミィナ以外には火の海を一度見せてるから今更といえば今更なのだが、見せなくてもいいところでわざわざ見せることもないだろう。


「んじゃ、俺らは帰るが⋯⋯」


そこで一度言葉を切り、気絶しないであろうギリギリまで絞った威圧を奴らに向ける。


「俺の周りに少しでも手を出したら、生まれたことを後悔するレベルで潰すから覚えとけ」


俺の言葉と威圧感に、恐怖感にひきつった顔を、涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして、首がもげるんじゃないかという勢いで縦に振り続ける奴らを尻目に、ミィナを守る結界をミィナごと浮かせ、宿の外に出た。


「『浄化』」


宿の外に出たところで、自分に、汚れと臭いを消し去るために『浄化』をかける。

これで、あの宿の肥溜めのような臭いが残ってるということはないだろう。

それから、ミィナのまわりに展開し続けていた結界を解除する。

出てきたミィナは、まさか外にいるとは思わなかったのか、目を何度か瞬かせ、不思議そうな顔でキョロキョロと周りを見回す。

そして、俺の姿を見つけると、ぱぁっと笑顔を浮かべ、飛びつくような勢いで抱きついてきた。


「おっと、はは、そんなに心配だったか?」

「(こくこく)」


俺の言葉に、ぎゅっと抱きついたまま頷くミィナ。

その頭に手をぽんと載せ、髪をクシャクシャにしながら頭を撫でる。


「これでも一応ゴブリンキング程度なら片手間に潰せるくらいの力はあるからな、あの程度の奴らにやられたりはしねえよ」


実際、『消失』の権能を使えば、例えゴブリンキングの大群だったとしても、難なく相手にできる自信はある。

だが、ミィナは例の火の海も見ておらず、俺の力を知らないに等しいからか、ゴブリンキングという言葉に、驚いた顔で俺を見上げていた。


「ま、心配してくれるのは嬉しいが、そうそう心配する必要はねえってことだ」


ついでだからとミィナの頬をぷにぷにと指でつつきながらそう言うと、ミィナは安心したようで、柔らかい笑顔を見せた。


「さ、とりあえずみんなの所に戻るぞ。ここの宿はろくでもないってのを確信したからな、街の外に出て野宿になるからな」

「ん!」


まあ野宿と言っても、『創造』で家の一つや二つを作ってしまえば不便はないだろう。結界を張れば安全性も確保できる。

それを野宿と言っていいのかは疑問だが。


「というか、『亜空間収納』なら家の一つや二つしまえるだろうし、家具の質とか考えても家を買うか借りるかするより、『創造』で作っちまった方が色々と便利そうだな」

「⋯⋯?」

「ああ、こっちの話だ。気にしなくていいぞ」

(下手に教えない方が、見せた時の驚きが大きくて面白そうだし)


そんなことを考えながら、いまだ離れる様子のないミィナをお腹にくっつけたまま、他の皆の待つ馬車へと戻っていった。

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