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43話

「さて、次は...」


絡んできた男たち(バカ共)は全部で三人。

一人を殺った──まあ死んではないが──として、残るはあと二人いる。

どっちから潰そうかと品定めしていると、恐怖心が限界を越えたのか、男たち(バカ共)の残り二人が脱兎のごとく逃げようとした。

が、相手が逃げようとすることは当然想定済み。


「なんで!?なんでだ!?何もないのに、何で前に進めないんだよ!?早く、早く、早く逃げないと俺も...進め!進め!進めよぉおおお!!!!!」


一人は、周囲のほとんどを存在しない壁──目に見えず、匂いもなく、触れることもできない壁だ──で覆っており、なにをしようとも一定の範囲から外に出ることは出来ない。


「な、なんで...はぁはぁ...なん...でだ...はぁ...なんで...こん...なに...はぁ...走っ...るのに...扉が...はぁはぁ...近づかない...」


もう一人は、そいつの周囲の空間に干渉して、どれだけ走ろうとも前に進むことは出来なくしてある。

走れば走るだけ周りの景色は変わるのだが、実際には全くその場から移動することが出来てない。


「お前にしよう」


次の犠牲者を壁で移動を制限した男に決めた俺は、まるでよく出来たパントマイムのように見えない壁を全力で叩いている男の背後に忍び寄り、囁くように声をかける。


「ひぃっ!?」


男は思わず笑いが漏れそうになるほど勢いよく肩を跳ね上げて悲鳴を上げると、油の切れた機械のようなぎこちない動きで首をひねり顔をこちらへと向けた。


「やあ」

「や、やめろ!許してくれ!俺達が悪かった!だから、だから許してくれ!」


せっかく俺が親しみ(憎しみ)を込めた優しい笑顔で挨拶してあげたというのに、男はまるでこの世の終わりのような顔をしてその場にへたり込み、下がれるわけもないのに精一杯後ろに下がろうと手を動かしている。

その必死な姿は見てて滑稽だが、俺たち(ミィナ)に少しでも危害を加えようとした(ゴミ)を許す優しさは生憎持ち合わせがない。


「お、俺はまだお前らに手は出してないだろ!?な!?な!?金なら払う!払うから!だから頼む!許し「却・下」」


あれやこれやと戯言を垂れ流す(ゴミ)の言葉を一言で切り捨て、虫けらを見るような感覚で(ゴミ)を見下ろす。


「だって、お前らはそうやって助けを乞う人を見逃したことはないだろ?お前らが差し出す金は他の誰かから奪い取った金だろ?手を出してないのは、ただ順番が来てなかっただけだろ?」


怒りを込めず、ただ無機質に、機械的に、淡々と問いかけると、男は何一つ否定することが出来ないのか、元から悪くなっていた顔色を更に悪くして黙り込むばかり。


「だから潰す、簡単な話だろ?自分たちの悪行の報いが自分たちに返ってくるだけなんだから」


そんな意味のない言葉を口にしながら、俺は新たな能力を一つ『創造』する。

こんな男たち(クズ共)のためにわざわざ新しい力を作るのは勿体ない気もするが、こいつも含めて残り二人を物理で叩きのめすのも面倒だし、今後も必要な場面がないとは限らない。

そういうわけで、手っ取り早く悪人を潰すための精神攻撃系の能力を新たに一つ『創造』した。


「さて、それじゃあ折角だから新たな能力の実験台(モルモット)になってもらおうか。なに、心配はいらないさ。実験台(モルモット)はもう一体いるからな」


イメージしたのは、地獄。

悪人の業に合わせて沙汰をくだし、ありとあらゆる責め苦を与える地獄。

そんな地獄を模した精神世界に対象の精神を放り込み、相手の精神に直接、地獄の責め苦を与える能力。


「『閻魔帳』」


新たに創り出した能力の発動と同時に、自分の周りにしっかりと遮音を施しておく。

精神攻撃系は初めてなため、声も出せずに壊れるか、発狂して叫び声を上げ続けるか、案外耐えれるものなのか、皆目検討がつかなかったがゆえの安全対策。

直後、


「──!!────!!────────!!!!!」


俺の周りは完全に遮音しているために声は聞こえないが、恐らくは叫び声を上げているのだろう。

『閻魔』をかけられた(クズ)は、顎が外れそうな程に大口をあけ、目を見開いて床の上でのたうち回っている。

だが、どれだけ体の側が暴れ回ろうとも、精神を直接攻撃されていては逃れることも出来ないだろう。

今回は実験も兼ねて効果時間は1分にしてあるが、現実での1分が『閻魔帳』の精神世界での1時間になる。

これまで犯した罪の重さによって与えられる責め苦も変化する『閻魔帳』の能力だが、さて、この男は1分を耐えきれるかどうか。

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