42話
さて、皆さんお待ちかね?の主人公の大暴れ回Part1です。
ええ、ええ、保険程度にかけていたR15のタグが少しは仕事をしてくれるかな?といった仕上がりになっております。
主人公が主人公なのでちょっとアレなシーンもありますので、一応お気を付けてお読みいただければと。
「死ねやオラァアアアアアア!!!!!」
俺が男たちに背を向けた直後、恐らく最初に絡んできた男だろう。
一人が怒りの雄叫びをあげて殴りかかってきた。
サーチの応用で周囲の様子を手に取るように把握している俺からすれば避けるのは簡単なことだが、まあ避けるまでもない。
振り下ろされた拳は、俺に届く前に俺の後ろに創った空気の壁に阻まれるのだから。
ゴキッ────
「っ!?ァアアアアア!?」
男からは全く見えない空気の壁を殴った瞬間、男の手首から鳴ってはいけない音がした。
恐らく手首が殴った衝撃に耐えきれなかったのだろうが、まあそれも当然のことだろう。
俺が今回壁を作る時にしたイメージは、厚さ10mの鋼鉄を1mの板に圧縮したような密度と強度。
そんな強度のものを思いっきりぶん殴ったら手の方が耐えられない。
結果として、今俺の後ろにいるような手首があらぬ方向に曲がり、苦悶の叫びをあげる男が出来上がるってわけだ。
俺は肩越しに振り返ってそんな男の様子を確認すると、扉の前まで行ってミィナから手を離す。
「ちょっと後片付けしてくるから待っててくれな」
「...ん」
俺の言葉にちょっと心配そうに頷きを返してくるミィナ。
俺はそんなミィナの髪をくしゃくしゃにするように荒っぽく撫で、それから髪を整えるように漉いてやる。
ひとしきり整え終わったところで、ミィナの頭を抱えてポンポンと軽く叩き、ニッと笑みを見せた。
「ま、心配すんなって。巻き込まれた一般人の力は伊達じゃないからよ」
俺が、そう言うとミィナは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
そんなミィナの笑顔にほっこりと癒されながら、俺はミィナの周りに『創造』で創った結界を張る。
光も音もにおいも遮断する結界に、攻撃はおろか近付くことすらできないような結界。
これで、ミィナはこの先の処刑を見ることは無いし、俺が処刑している間に誰かがミィナに危害を加えることはできない万全の状態となった。
そこまで整え終わった俺は、腕を抑えて転げ回る男を前に、まるで恐ろしいものでも見たかのように固まっている男たちの方を振り返った。
「さて、そんじゃ俺のイベント消化とストレス発散に付き合ってもらうとしますか」
そんな宣言と同時に、俺は真っ先に殴りかかってきた男の元へと歩いていく。
人に痛みを与えようとする割に自分が痛めつけられるのには弱いのだろう。
男は俺が近づいてきたのも気づかない様子で腕を抑えて痛みによる苦悶の声を上げ続けている。
俺は、そんな男の痛めた方の手首をぐっと握ると、腕を引っ張って強引に立ち上がらせる。
「ぎゃあああああああ!?!?!? 」
痛めた部分を握られ、そしてそこに自分の体重がかかって引っ張り上げられるその苦痛はきっと想像を絶するものだろう。
男は、まるで獣のような叫びをあげるが、そんな事で俺が手を緩める事は無い。
そのまま腕を捻りあげながら、俺は周りで見ていた男たちにこう問いかけた。
「なあ、最初に俺に絡んできたのはコイツらで、そして最初に俺に手をあげたのはコイツだ、それは間違いないよな?」
体格だけは俺よりも圧倒的にガッシリとした男がこうもあっさりと痛めつけられているからだろうか。
俺の問いかけに対し、周りで見ていた男たちはそろって気圧されたかのように少し青い顔で頷きを返した。
「そうだよな、先に手をあげたのはコイツで、俺可哀想な被害者だ。なら、可哀想な俺が自分を守るためにコイツを叩きのめすのは正当な権利だよな?」
俺が我が意を得たりと言わんばかりににっこりと笑顔を浮かべながら更に尋ねると、まるで逆らったら死ぬとでも言わんばかりの勢いで、周りで見ている男たちは首を盾に振る。
「そうだな、そうだよな。じゃあ俺はまず自分の安全を守る為にこの男を叩きのめすことにしよう。ああ怖い怖い、弱っちくて可哀想な俺にはこうでもしないと自分を守ることはできないんだから仕方ない」
俺はわざとらしくそんなことをいいながら、痛めた腕が下敷きになるように調整しながら男を床へと突き飛ばす。
すると、男は俺の狙ったとおりに床にうつ伏せに倒れ込み、自分の腕を床と己の体とで挟み込んで、更なる悲鳴をあげる。
「ああ怖い、怖いなぁ。このまま立ち上がって襲ってこられたら怖いから、重石でものせて動けないようにしないと」
俺はそんなことを言いながら、手近な所にあったテーブルを持ってきて男の背にテーブルを載せる。
その重さだけでも男は狂ったように叫び声をあげるが、これで終わるわけがない。
むしろ、まだ叫び声をあげる余裕があるんだな、と思いながら『創造』の力でテーブルにかかる重力を強めていく。
どの程度重力を強めただろうか。
いつしか男は白目を剥いて気絶しており、床には男が漏らした液体が水溜りのようになっていた。
「全く、汚いなぁ」
俺は男の腰周りの水溜りを一瞥すると、『創造』の力で球状にして浮かび上がらせる。
そして、男の頭を引っ張って強引に口を開けさせると、手を使うことなく口の中にその球状の液体を突っ込む。
流石にそのままだと窒息しかねないので、口の中に入れた段階で液状に戻し、そのまま胃の中まで流し込んでおいた。
「ああ怖かった怖かった。でももうこの男は無事に無力化出来て一安心だよ」
俺がそう言って、気絶した男から目を逸らすと、笑顔を浮かべて周りを見回す。
最初の頃の楽しげな様子はどこへやら、すっかりと顔を青ざめさせて俺の行動を注視していた男たちは、俺と目が合う度に「ヒッ...」と悲鳴をあげて仰け反るようになっていた。
やられたらやられた以上にやり返す。
それが主人公です。
何か言われても正当化できそうな理由を用意してから叩きのめし始めるあたりとてもタチの悪いタイプですね、はい。




