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41話

相変わらずの不定期更新(汗)

「殺しはしない、殺しは、な」


自分に言い聞かせるように不殺(ころさず)を呟いくことで心の奥底からとめどなく溢れてくる殺意を抑えながら、努めて冷静に周りの様子を観察する。

見ると、宿中の男たち──というか客には目につく限りは男しかいない──面白い見世物でも見るかのようにニヤニヤと見ており、少なくともこの面倒事を率先して止めようという善良な心の持ち主はこの中にはいないようだ。

いや、


「こいつら全員がグル、か?」


野次馬状態の男たちは、表面上は突発的に起きたトラブルを見世物として楽しもうとしているように見える。

だが、周りの男どころか、店主らしき男ですら絡んできた男たちを止めようとする意思すらも見受けられない。

それどころか、明らかにミィナに対して何かを期待するような下卑た欲望混じりの視線すらも感じられる。

つまりは、恐らくだがこの宿は表面上は普通の宿だが、実際には主人と他の客たちとで、やってきた宿泊客を食い物にするための場所なのだろう。

なら、不殺以外の遠慮をする必要はなさそうだ。


「今すぐその不快な口を閉じろクズ共」


いまだに不愉快な戯れ言を垂れ流す男たちに対し俺が侮蔑混じりにそう吐き捨てる。

すると、絡んできた男たちは一瞬ピタッと動きを止めると、次の瞬間には怒りに顔を歪ませた。

どうやら、人を散々虚仮にしておきながら、自分たちには煽り耐性が微塵もないらしい。


「あぁ!?誰がクズだこのガキ!」

「人が優しくしてやりゃあ調子に乗りやがって!」

「ちょっといい宿に泊まる金もねえような甲斐性無しが!」


顔を怒りで真っ赤にしながらあれやこれやと罵倒の言葉を怒鳴り散らすクズ共。

どこに優しさがあったのかとか、こんなクズの掃き溜めみたいな宿のどこがいい宿なのかなど、色々と突っ込みたくなるような事も多かったが、おかげで殺意を鎮めることができた。

まあ殺意がなくなったからと言って徹底的に叩き潰すのを辞めるつもりは無い。

無いが、少し煽っておいても罰は当たらないだろうと、俺は懐から取り出した風を装って、『亜空間収納』から、先日伯爵からお礼に貰った金貨の詰まった袋を一つ取り出す。


「金がない、ねぇ...?」


そんなことを男たちにわざと聞こえるように呟きながら、左手で袋を持ち右手を袋の中に入れる。

手を入れただけでも金貨同士が擦れてジャラジャラと音をたてる袋の中から、零さず握れる程度の金貨を握り袋の中から右手を出す。

そして、袋の口の上で握った右手を開き、此れ見よがしに袋の中へと金貨を落とした。


「三下のチンピラみたいな格好しか出来ないようなお前らと違って金は持ってる。が、生憎そんなゴロツキみたいなのしかいないようなレベルの低い宿に泊まるために金をドブ川に捨てる趣味はないんでな」


袋へと落ちていく金貨を食い入るように見つめていた男たちに対し、嘲るような表情を作ってそう吐き捨てる。

そして、袋の口を閉じてから懐に仕舞う風を装って『亜空間収納』に金貨の詰まった袋をしまい込む。

ちなみに、今言った言葉は挑発の目的があっての言葉だが、ほぼほぼ俺の本心でもある。

ぶっちゃけ、こんな糞みたいな宿には鉄貨1枚だろうと払うつもりはない。

まあここに泊まる気はないのだから鉄貨1枚すら払うような予定はないのだが。

ともあれ、俺の煽りはしっかりと成功したようだ。

絡んできた男たちは再度馬鹿にされた怒りで顔を歪めつつも、眼が金貨を狙う欲望でギラギラしており、他の男たちもはっきりと金欲に取り憑かれた視線を俺に向けてくる。

そして、俺は甚だ不本意ではあるが、見た目からして強そうには見えないどちらかと言えばひょろい体格だ。

となれば、煽られて頭に血が上っている男たち(バカ共)がこの後どんな行動をとるかはおおよそ予想がつく。

俺は、ミィナの肩を抱いて自分の方にぐっと引き寄せると、宿の扉、つまりは男たちに背を向ける方へと体を向けた。

毎日更新は潰えて完全に不定期更新へと突入してから短くない時間が経ったけれど、せめて月に1話は更新していきたいと思う今日此頃。

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