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40話

「さて、勇者の黒い噂も気にはなるが、とりあえずは宿探しかねぇ。まあ馬車でも快適な住環境は作れるけど、街の中でも馬車暮らしってのは味気ないし」


そんな事を呟きながら検問が終わって馬車に戻るとすぐに足に乗ってきたミィナに「な?」と同意を求めてみるが、ミィナは不思議そうに首を傾げるばかり。

まあそれはそれで可愛いのだが、ミィナに意見を求めるのは難しそうだ。

それに、まだ俺以外の人族には強い恐怖心を持っているであろう少女たちを不特定多数の人族がいる宿でくらさせる、というのは酷にも思える。

しかし、確かに人族に性悪の割合が多いし、近いうちに親元に返す予定とはいえ、ずっと人族に怯えたままというのもあまりいいこととは思えない。


「ここがアトロス伯爵のいるアトフィルの街ならもうちょい色々と楽だったんだけどな」


つい先日助けたあの伯爵父娘なら人がいいし、頼めばこころよく屋敷に泊めてくれそうな気がする。

きっと少女たちを他の人族に慣れさせるにはこれ以上ないくらいいい環境になるだろう。

とはいってもここはアトフィルの街ではないし、ここまで来て今更アトフィルの街に戻るのは些か面倒くさい。


「ま、とりあえずは適当な宿にでも行って、宿と客の程度を見てみますかね」


そんな事を呟きながら、気は進まないが人格の程度をチェックするには囮役が必要だろうと、俺に甘えてくるミィナに目を向ける。

軽く頭を撫でてやると、もっともっとと言わんばかりに頭を自分から擦り付けてくるのを見ると、自然に頬が緩んでくるように思えてくる。

このまま何事もなく済めばいいのだが、という淡い期待を抱きながら、俺はミィナへと一つ頼み事をすることにした。


「なあ、ミィナ────」



♢♢♢



カランコロン──

宿に入ろうと扉を開けると、扉に備え付けられた鈴が鳴り、中の人間へと客の到来を告げる。

日本の店であれば、ここで「いらっしゃいませ」の挨拶が迎えてくれるであろう場面だが、ここは異世界。

店内に入った俺たち二人(・・)を迎えたのは、宿の主人らしき男の気だるげな視線と、食堂?酒場?エリアでたむろする男たちの品定めするような不躾な視線だった。

そう、現在俺はミィナと二人だけで、外観だけは(・・・)よさげな一軒の宿屋に来ている。

他の少女たちは宿の前に停めた『創造』をフルに使って最大レベルの防護措置を取った馬車の中で待っていてもらっている。

あまり気乗りはしなかったのだが、一番俺に懐いていて、そして俺と一緒にいる状態であればかなり精神的に安定するミィナを囮役として利用する形だ。

まあ利用と言っても事前にきちんとミィナに説明をして了承を取っているが。

ちなみに、俺もミィナも特に見栄えを良くしたり、逆にみすぼらしくしたりはしていない。

強いて言えば、ミィナのしている偽装の首輪を普段よりも目立って目につきやすくしている程度だ。

とはいえ、そんな小細工も必要ないくらいこの宿は大ハズレだったようだ。

入った直後から俺たち──というよりミィナに──集中している不躾な視線は男の欲望などのドロドロした不快な色がほとんどであり、ミィナも怯えた様子で俺の腕にしがみついてくる。

それなますます(クズ)共の欲望を刺激するのか、視線の中のねっとりとまとわりつくような不快な色が強くなってきている。


「はぁ......外の見栄えはよかったが、ここを選んだのは失敗だったか。ごめんな、ミィナ」


ひっそりと溜息をつき、ミィナにしか聞こえない程度の声量で謝罪をすると、ミィナは大丈夫、とでも言うかのように首をふるふると横に振るが、体の震えは隠しきれていない。

せめて少しでもミィナに刺さる不快な視線を減らそうと、ミィナの前に出て視線を遮ると、数人が不愉快そうな顔をし、数人は何かを企むような下衆な笑みを浮かべた。


(また面倒な事になりそうだな)


ミィナに余計なプレッシャーをかけないように呟きは心の内に留めつつ、ミィナを前にして俺の背中を視線を遮る壁にし、足早に宿を出ようとするが、少し手遅れだったようだ。


「おいおい僕ちゃん、そんなに急いでどこに行くんだァ?宿でも探しに来たんだろ?いいじゃねえかここに泊まればよぉ」


先ほど下衆な笑みを浮かべていた男の一人が、立ち上がってこちらを挑発するような言葉をかけてくる。

同じく下衆な笑みを浮かべた残りの二人も、まだ何もしてきてはいないがニヤニヤと笑いながらこちらの様子を観察してきている。

面倒な、と思いながらも、ミィナのために可能な限り穏便に、迅速に片付けようと俺は────


「まあ、ここはそこそこ値段の張る宿だし、僕ちゃんには泊まれねぇのかもしれんがなぁ」

「ギャハハハハ、だっせえだっせえ。宿に入ったのに金が無くて泊まれねぇとかとんだお笑いぐさだよな」

「なんだったら俺たちがそっちの獣人の女だけは預かってこの宿に泊めてやってもいいんだぜぇ?ついでにその女をたっぷりと可愛がってやるからよぉ」

「ま、可愛がりすぎて身も心もぶっ壊れちまうかもしんねえけどな」

「おいおい、そんなに脅してやんなよ。可哀想に僕ちゃんはぶるぶる震えちまってんじゃねえか」

「ま、否定はしないんだけどな」

「「「ギャハハハハハハハハ!」」」


────よし、生まれてきたことを後悔するくらい全力で、徹底的に、容赦なくぶっ潰そう。

男たちを潰すことを決めた俺は、気を緩めると怒りとともに溢れ出してあたり構わず消してしまいそうな『消失』の権能を気合で抑え込みつつ、男たちを殺意を込めて睨みつけた。

お久しぶりです狐子です。

ええ、ええ、皆さんの言いたいことはよーく分かっております、わかっておりますとも。


前回の更新から時が経つこと約一ヶ月、ええ、回を増す事に段々と更新間隔が伸びていることは自覚しておりますとも。


ですが頑張ります!頑張っております!

どんなに間隔があくことになろうとも更新はしっかりと続けていきますので是非ともお付き合いいただければと思います。




それでは、次がいつになるかは分かりませんが、また次の更新でお会いしましょう!お会いしましょう!

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