31話
一昨日の投稿した日に1日のPV2000超えて「ひゃっほう」ってなってたら昨日に投稿してないのにPV3000超えて「あっるぇー!?」ってなりました。
読んでくださっている皆様ホントにありがとうございます!
(『契約の代償』がその解けない呪いってやつか?効果は...っと)
表示された情報だけでは、『契約の代償』というのがどういうものなのかが今ひとつよく分からない。
そこで、今度は『契約の代償』を対象に『鑑定』能力を発動してみることにした。
結果、
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名称:契約の代償
説明:エルナ・アトロスの先祖が悪魔と交わした契約の代償。
エルナ・アトロスが成人すると同時に発動し、エルナ・アトロスの魂は悪魔に捧げられる。
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「『契約の代償』か...ろくでもないなこりゃ」
「この呪いがなにか分かったのですか!?」
『鑑定』の効力は凄まじく、この『契約の代償』の性質だけでなく、『契約の代償』の大元の契約内容まで読み取ることが出来た。
つまりこれは、エルナさんのかなり前の先祖が戦争の最中に悪魔に力を求め、その代償としてエルナさんの魂が奪われるというものだ。
魂を奪われれば当然死ぬことになるし、成人──この世界の成人は16歳らしい──と同時に発動するということは、あと一年も残されていない。
そんなふざけた契約とその代償につい声が漏れてしまい、伯爵は詰め寄るように身を乗り出してくる。
(声に出しちまうとは...油断したな。ただ本人の命に関わることを知っちまった以上、黙ってるのも酷、か?)
余命が一年もない上に、契約の対価としての呪いのために基本的には解呪ができるようなものではない。
その事を知って残りの人生を生きるか、知らずに突然に死を迎えるか、どっちがマシなのかは俺には分からない。
(ん?ちょっと待てよ...?)
どうしたものかと悩んでいると、ふと一つの可能性を思いついた。
最近使う機会が限られていて本来の性質を忘れていたのだが、『消失』の権能は狙ったものだけを消し去るものだ。
そして、これまでの経験上、『消失』や『創造』などの権能と呼ばれるものは、一般的なスキル等よりも優先度が高いように思える。
つまり、もしかしたら、のレベルではあるが、『契約の代償』を消すことができるかもしれない。
それも踏まえて、とりあえず『契約の代償』の説明をすることにした。
「えーっと、エルナさんの呪いだけど、それは『契約の代償』っていう悪魔との契約に対する代償として発動するものだ」
「なっ!?そんな馬鹿なことがあるか!私もエルナも悪魔と契約をしたことなどない!」
つい敬語を忘れて喋り方が素に戻ってしまったが、それよりも悪魔との契約と言われて、伯爵は憤怒の形相を浮かべた。
エルナさんは伯爵の迫力にちょっと怯えた様子を見せてしまっている。
とりあえず『契約の代償』そのものの説明をしてからほかの説明をしようと思ったのだが、失敗だったようだ。
まあ他の説明を聞けばそのうち勝手にクールダウンするだろうと、面倒になった敬語を放置しつつ、話を続ける。
「ああ、そうだろうな」
「は?今シュウヤ殿は悪魔との契約の代償と言ったではないか」
「言ったな。まあ誰が契約をしたかは言ってないけどな」
「む...それはそうだが...いやしかし」
「お父様、先にシュウヤさんの話を最後まで聞きましょう。全てを聞く前に口を挟んでは理解できるものも理解出来なくなってしまいます」
「ぬ、それもそうだな。シュウヤ殿、続けてくれ」
続けた俺の言葉に、伯爵が少し落ち着きを見せたところで、エルナさんからの助け舟がでた。
(自分の命に関わることだろうに随分と落ち着いているな。いや、自分のことだから、か?)
とりあえず、エルナさんの助け舟により伯爵が落ち着いたようなので、これで説明が楽になりそうだと思いながら話を進める。
「あまり回りくどい説明をすると伯爵がまた暴走しそうだから端的に説明すると、契約者はエルナさんの先祖のカイゼル・アトロス。契約内容は敵を殲滅する力。代償は悪魔が望むタイミングでの子孫の女一人の魂、つまりエルナさんの魂だ。エルナさんが成人すると同時、エルナさんの魂は悪魔に捧げられ、エルナさんは命を落とす」
俺が『契約の代償』に関連する説明を終えると、伯爵もエルナも呆然としていた。
まあそれも仕方の無いことだろう。
『鑑定』と『万象の書架』から得た情報によると、カイゼル・アトロスはアトロス伯爵家の中でも最も尊敬される先祖であり、過去の戦争の勝利の立役者として国全体でも英雄的存在らしい。
そんな人物が実はその活躍の影に悪魔との契約があり、しかも代償として子孫の魂を捧げている。
当のアトロス伯爵家の人からすれば、信じがたい事実だろう。
「そ、それは...事実なのか、本当にカイゼル様がそんなことを...?」
先に正気に戻った伯爵が、信じられないと言った表情で顔色を悪くし、震える声で問いかけてくる。
伯爵としては嘘であって欲しいのだろうが、この世界の全てを記憶する『万象の書架』から引き出された情報である以上紛れもない事実だ。
「ああ、嘘偽りない」
「か、解呪は...?」
「呪いという形をとってはいるが、正式な契約によるものだからな、解呪は無理だろうな」
「............」
俺の身も蓋もない返答に、伯爵は生気を失ったかのような表情で顔を俯かせた。
「つまり、私は、16歳になると同時に死んでしまうということですか?」
「そうだな」
「どうやってもそこから逃れることは出来ないんですよね...?」
「そうでもないぞ。絶対の保証はないが」
「そうですか...やはり...。え?」
伯爵に少し遅れて正気に戻ったエルナの質問に、俺は正直に答える。
すると、エルナも酷く落ち込んだ様子を見せ、そして直後に弾かれたように顔を上げた。
「でもさっき解呪は出来ないって...」
「解呪は出来ない。でも、解呪以外の方法でどうにか出来るかもしれない」
「...?あの、仰ってることがよく分からないのですが...」
まあ理解できないだろうな。
俺自身ぶっちゃけ消し去るのも解呪とほぼイコールなんじゃね?って気はしてる。
ただまあ一応説明的にも解呪は不可能ってなってるので、解呪はできない、でもどうにかできるかもしれない、っていう言い方になっている。
「ま、解呪とは別の方法でどうにか出来るかもってこと。多少は危険があるかもしれないし、成功する保証もないけど、やってみる?」
『消失』の権能は任意のものだけを消せる。
流石に呪いとかスキルとかの消失をやったことはないが、中のものをピンポイントで消すとかは成功してるから少なくとも間違って体が消えるとかの問題は無い。
ただ『契約の代償』が消せるかどうかというだけだ。
俺の問いかけに、エルナはしばらく悩んだ後、こくりと頷く。
ちなみに、伯爵は俺とエルナの会話も耳に入らないくらい打ちひしがれている。
「既に一度シュウヤさんに救われた命。他に手立てがないなら、もう一度シュウヤさんにかけてみます」




