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24話

「ん...?馬車のトラブル、か?」


ルフトの街を発ってから二日、次なる街へと進む旅の道中、進行方向の先で馬車が止まっているのが見えた。

遠目のためはっきりとは見えないが、馬車のそばに数人、馬車を取り囲むように十数人ほどいるように見える。

ただ、馬車のそばにいる数人が、馬車ではなく取り囲む人の方を向いているように見え、ちょっと嫌な予感がしたので視力強化を発動した。


「って、トラブルはトラブルでも盗賊じゃねえか!」


視力強化によってはっきりと見えるようになった視線の先。

そこに見えたのは、十数人規模の盗賊に囲まれた馬車と、馬車を守るようにして武器を構える護衛らしき人たちだった。

そこまで確認した俺は、視界強化は発動したままにして馬車へと駆け出す。

そして、それとタイミングを同じくして盗賊と護衛が戦闘を開始した。


「ったく、こんなことなら移動周りももっと強化しておくべきだったか」


基本的に急ぐ必要のない一人旅で、受ける依頼も基本的に近場が多く、これまで移動を助ける能力や道具の創造はしてきていない。

前回のゴブリンキングの討伐依頼の際の氷の道にしたって、思いつきで即席でやったことで、能力や道具として確立しているわけではない。


「しかも案の定の護衛劣勢かよ...」


走りながら戦闘の状況を確認すれば、異世界ファンタジーの定番というべきかなんというか、やはり人数差によるものか、護衛の方が押されている。

盗賊などは一応予想した上で護衛を用意しているのだろうが、異世界ファンタジー小説の護衛は過半数が役に立たない。

そしてそれは、小説の世界だけのことではなく、現実になっても変わらないことのようだ。


「護衛が果たせない護衛に護衛の意味があるのか...?」


今、視線の先で戦っている護衛も通常の魔物が相手なら十分に護衛の役目を果たせるのかもしれない。

実際ルフトの街からここまでの道中ではゴブリンとウルフしか見ていないし、その程度ならおそらく問題ないだろう。

ただ、現在戦っている盗賊たちが相手では護衛の役目を果たせそうにないのは明らかだった。


「ったく...あまり人目に晒したくはないんだが、到着前に全滅されちゃ寝覚めが悪いし、仕方ないか」


あの馬車も護衛も見ず知らずの他人であり、俺が護衛ではない以上助けなければいけない義理はない。

特に、基本的には隠している手札を切る必要がありそうな場面ではなおさらだ。

ただ、助けようかという気分になっている状況で、出し惜しみして全滅されては気分が悪い。

俺は、走る速度は緩めないままに『亜空間収納』から銃を取り出した。


(願わくばまともな性格であってほしいところだな)


隠し札を切ってまで助けた結果、相手が傲慢で上から目線でぎゃーぎゃー騒がれてはたまったものではない。

悪徳商人とか尊大な貴族、自意識過剰な護衛じゃないことを願いながら狙いを定め、銃の引き金を数度引いた。

直後、銃口から雷の魔弾が引き金を引いたのと同じ数だけ飛び出し、盗賊の一部目掛けて飛んでいく。

弾道誘導が施された魔弾が不意打ちに等しい状況でそう簡単に狙いを外すわけはなく、魔弾は正確に盗賊の腕を撃ち抜いた。


「これで到着までは持ちこたえるだろ」


雷の魔弾で腕を撃ち抜かれた盗賊は、武器を取り落とし痛みでのたうち回る。

護衛にしても盗賊にしても完全に予想外の出来事だったからだろう、一連の出来事を認識できた奴は護衛盗賊関係なく動きを止めていた。

別に今狙った盗賊にしても、腕ではなく心臓や頭を狙って直接撃ち殺す、いや、盗賊を全滅させることも可能だった。

可能なのだが、護衛と護衛対象の人となりの確認のためにも、数人の継戦能力を奪い、状況を拮抗させるに留めた。

護衛にしても盗賊にしても、今の攻撃の主が敵か味方かの判断には困ったようで、周囲を警戒するそぶりを見せている。

だが、護衛にとっては敵にしても味方にしても目の前の敵を倒さないことにはどうにもならないからだろう、周囲の警戒も解いていないようだが、まずは目の前の盗賊へと切りかかった。

盗賊にとっては敵なら挟み撃ちにされる状況、しかも敵の可能性が高いため、周囲の確認をしたいところだろうが、護衛の反撃でそれもままならない。

それでも数人の盗賊は周囲の確認をしたが、そんなことをすればその分だけ護衛への攻撃の手は緩み、結果として護衛の劣勢からほぼ拮抗状態に変わっていた。

そして、周囲の確認をしていた盗賊が俺に気づいた時、俺は馬車の目と鼻の先まで来ている。

俺は、浮遊の力を創造しながらジャンプし、上空で再度『創造』を使って爆発音を響かせた。

護衛も盗賊も唐突の爆発音に、弾かれたように上を向いて俺の姿を捉える。

誰も彼もが俺の方を向いてぽかんとした表情を浮かべ、戦闘が停止した状況で俺は、浮遊の力を緩めて馬車のそばに降り立った。

そして、


「護衛さん方、盗賊退治の救援は必要か?」


そんなことを聞きながら、当たらないように(・・・・・・・・)盗賊に向けて魔弾を撃った。

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