23話
なんだかんだで不定期更新と言いながら毎日投稿を続けること22話。
今回の23話目にして初めて間が空き、連続更新が途絶えたなーとか考えている作者です。
翌日、外を出歩く気になれなかった俺が部屋に引きこもってくつろいでいると、冒険者ギルドからの使いが来た。
昨日の今日には使いが来るとは、思ったよりずっと早かったが、仕事が雑でさえなければ早い分には困ることは無いので、俺さっそくギルドへと向かう。
「おお、来たかシュウヤ」
「ああ、まさかこんなに早く来るとは思わなかったがな」
猜疑心を込めた視線をギルマスのおっさんに向けると、おっさんはその視線に気づいたようで、悪戯小僧のような笑みを浮かべる。
「昨日のお前さんが放置した魔石の回収を済ませて戻ってきてから他のことより何よりも先にお前の報酬とその他諸々の処理をしたからな」
「へえ、こっちとしちゃありがたいが、いいのか?」
それでまた他の冒険者に難癖つけられたら処理するのが面倒だしな、と思いながら尋ねたが、脳筋な見た目とはいえギルマスである以上そのあたりはしっかりと考えているようで、
「お前さんの働きを鑑みれば文句を言える奴なんていないだろうよ、それこそ俺ですら、な。ゴブリンキング3体にゴブリンロード6体の単独討伐、それからざわめきの森のゴブリンの殲滅とまできたもんだ。それで不平不満を言えるやつはただのアホだな」
「ふーん、ならいい。んで、俺を呼び出したってことは報酬とかの処理は全部済ませてんだろ?さっさとしてくれ」
力を見せつける結果になったのは自業自得ではあるのだが、それが原因でまた厄介毎に巻き込まれてはたまらない。
おっさんの口振りからしてその辺の処理は終わってるようだし、元々初日とその次の日のゴタゴタでこの街への興味関心は無いに等しい。
さっさと報酬を受け取って、次の街へと旅立ちたいところだ。
「相変わらずせっかちというか、自由奔放な奴だな...貴族とかと変なトラブル起こすなよ?貴族は権力だけはあるから敵に回すと面倒からな」
「その時はバレないように処理するから問題ない」
「お前さんの場合はそれが冗談に聞こえないんだよな...」
実際、もしもほんとに貴族が難癖つけて絡んできて、権力を傘に横柄に振る舞うのなら、最悪『消失』で消し去る可能性もある。
『消失』なら痕跡一つ残さず消せるので、目撃者がいなければバレることはないだろう。
ただ、それをバカ正直に教えるつもりはないので、無言のままさっさと進めろと視線で圧力をかける。
「っ!...ほんとおっかない奴だな。これでも元はAランクなんだが、その俺でも背筋が寒くなるとか、時々お前が発する威圧とか殺気はEランクのそれじゃないぞ...ったく、まあいい。まず報酬の件だが...」
ちょっと視線で圧をかけただけなのに失礼なことを言う奴だ。
いくら俺がやられたら徹底的に叩き潰すというスタンスとはいえ、元は平和な日本で暮らすただの学生だ。
そんな俺が歴戦の、と言っても過言ではないAランクの冒険者を圧倒させる圧力を発せられるわけが無い。
まあそんなことはともかく、今回の緊急クエストにおける冒険者ギルドから俺に対しての報酬は以下の二つだ。
・金貨300枚
・ランクBへの無条件での昇格
金貨は、元々の依頼に対する参加報酬に加え、キング3体とロード6体、それから先の2種以外の無数のゴブリン討伐による貢献度報酬、それから森に放置してきた大量の魔石の買取額の一部の合計金額らしい。
細かい内訳は面倒だから省くけど、キングとロードを合わせた貢献度報酬より、それ以外の無数の上位種含むゴブリンたちと、その魔石の買取合計額の方が高かった。
まあサーチの反応を見る限りではゴブリンロードの一つ下に位置するゴブリンナイトですら数十体規模でいたから無理はないのかもしれないが。
後、放置した魔石の買取金額が一部とはいえ俺の方に回ってくるとは思わなかった。
おっさん曰く、回収した冒険者7の俺が3の取り分になっていたらしい。
ま、金は増えて困るものでもないし、他の冒険者が納得のうえでのことなら特に文句はない。
それで、冒険者ランクの方だが、EからDとCをかっ飛ばしてのBランクというこの結果だが、これに関しても単独でキング3体とロード6体を同時に相手取って──実際にはロード一体だけは単独だが──無傷で討伐を果たす実力。
それから、森や他の冒険者、それから魔石に一切の被害を出さずに、広範囲、つまりざわめきの森全体のゴブリンを纏めて焼き尽くす技量を考慮してのことらしい。
ちなみに、間を一つ飛ばして昇格した冒険者はいるが、二つ飛ばして、それもEから一気に昇格したのは俺が初めてだそうだ。
ギルマスの独自の裁量で上げられるのはBまでで、Aランク以上はその冒険者の功績を判断してのギルマスからの推薦をもとに、冒険者ギルド本部が昇格の如何の決定をくだすらしい。
おそらく、俺がFランクだったら驚きの三つ飛ばしになっていたのではないかと思う。
ともあれ、これでBランクになり、Aランクまでの討伐依頼も受けられるので、この先色々と楽しくなるだろう。
Bランクまで上げとけば実力不足だのなんだのと絡まれることも減るだろうし。
(ただまあBまではギルマス一人の裁量で上げられるみたいだし、コネだの何だの騒ぐ馬鹿がいる可能性は否定出来ないか)
コネでどうにかできるほど甘い世界だとは思えないのだが、実際貴族とかだとそういう権力を振りかざしてどうにかしそうだというのは出来るかどうかはともかくありそうだし、実力のない奴に限ってそういう変な難癖をつける奴が多い。
それを考えると、本部での審査などがあり、文句のつけようがないであろうAランクまで上げておきたいところだ。
(ただまあ緊急クエストの強制参加を食らいやすくなったってのがデメリットではあるか)
緊急クエストは該当ランク以上の冒険者を対象に発令されるものがほとんどのため、Bランクともなれば緊急クエストが発令されればほぼ全てに、といってもいいくらいの確率で巻き込まれることになる。
唯一対象外となるのは赤のSだが、Sランクの魔物ともなればフェンリルやエンシェントドラゴンとかの一体で軽く国を落とせそうな神話クラスになるみたいだし、そんな依頼がぽんぽん出てきたらたまったものではない。
実質、緊急クエストの発令=強制参加と見てもいいだろう。
(ま、本気でやばくなったら『消失』を使うけど)
いまだ最初の頃のゴブリンを除き、生物を相手にはほとんど使ったことのない『消失』の権能。
それが通用する相手であれば、どんな状況であろうと負けだけはない。
(ただまあ、そのうち『消失』がどのクラスの相手まで通じるかは確かめないとだな)
いざピンチになって使って通じませんでした、なんてことになったら目も当てられない。
せっかくAまで受けられるようになったことだし、今度からは『消失』の通用実験もしておくべきだろう。
そんなことを考えながら、報酬を受け取った俺は冒険者ギルドを後にした。
ちなみに、おっさんは俺にルフトの街に留まらないかと提案してきたが、本気で睨みつけたら即座に顔色を悪くして黙り込んだ。
まるで俺に恐怖心でも抱いているかのような反応だが、俺には本気で睨みつけているとはいえ、そんなに迫力があるとは思えない。
もしかしたら、こんな脳筋っぽい見た目の元Aランク冒険者のくせに、ビビりなのかもしれない。
わりと自分の異質さに気づかない主人公。
いかに元Aランク冒険者とはいえ、首筋に死神の鎌を突きつけられたらそりゃあ怯えますよね。
いやまあ鎌を突きつけられても死神を叩きのめす規格外な人もいそうですけども




