22話
超不定期更新と宣言しながら更新できてしまった事件。
「さて、一応メッセージくらいは残して、と」
俺は、『創造』の力を使い、ギルマスのおっさんへのメッセージをその場に残す。
続いて、『創造』の力で氷の道への足場を作り、氷の道へと登る。
「んー、折角の氷の道だからソリにするか」
そんなことを呟きながら、目の前にソリを作り出し、その上に乗った。
ソリは俺が乗ると同時に、創造の時に生み出したイメージにより、動力を持たずに氷の道に沿って動き出す。
「氷の道は...ギルマスのおっさんがメッセージを聞いたら、あの場所から消えるようにするか」
本隊の連中を氷の道で強制送還したこともあり、ギルマスは氷の道を辿って救援に来ようとしてるのだろう。
その氷の道を崩したら場所が分からなくなるだろうし、とりあえずは氷の道は今しばらくは残しておくことにした。
「よっと」
「おわぁ!?って、なんた氷炎の悪魔か...ってお前生きてたのか!?」
「いや、勝手に殺すなよ」
氷の道をソリで進んでいった俺が氷の道の終わりまできたところで飛び降りると、予想通り森の入口に着いていた。
ただ、飛び降りる形で出てきたことで、本隊のリーダーっぽい男がキング戦に乱入した時のように驚かせることになったようだ。
とはいえ、邪魔になるからと追い返したのは俺だが、死ぬことを前提にしているとは失礼にも程がある。
「あの状況下で怪我一つなく戻ってくることを誰が期待するかよ...。ん?そういえばギルドマスターは?」
「さあ?キングとロードを全部片付けてからお前らを追い出すのに使った氷の道で戻ってきたから会ってはないな。ギルマスのおっさんも森に入ってるのか?」
実際にはギルマスのおっさんが森に入ってることは確信とまではいかないが予想はついてるのだが、そこは知らないふりをして尋ねる。
「ギルドマスターならお前を助けに森に入ってったよ。ギルドマスターに会わなかったってことは一人で全部片付けたって意味なんだろうが、あれだけの数のゴブリンキングとゴブリンロードを無傷で倒して戻ってきたのかよ...ほんと悪魔って言葉が似合いそうだな。って、そうだ!この氷の道?終わりが空中にあるせいでいきなり空に放り出されたんだが!?」
「きっちり片付けとくって言ったろ。ま、ギルマスのおっさんは無駄足踏むことになったみたいだな。氷の道に関しては、それなりの冒険者なんだからどうにか出来ると期待した」
矢継ぎ早に話題が変わりながらあれやこれやと言ってくる本隊のリーダーっぽい男の話に全て答え、氷の道に目を向けると森の奥の方から氷の道が消えていくのが見えた。
(自動で消えてったってことは、ギルマスのおっさんはメッセージを読んだってことか)
もし氷の道が消えないままにギルマスのおっさんが戻ってきたら、この場で氷の道を消そうと考えていたのだが、その心配ないようだ。
「ま、とりあえず面倒だがギルマスのおっさんが戻ってくるのを待つとしますかね」
俺はそう呟くと、さも『アイテムボックス』から取り出した風を装いながら、『創造』で手頃なソファーを出してソファーに座る。
地面に直接置いたことでソファーの足が汚れるが、このソファーは使い終わったら消してしまってまた新しいのを創造すれば問題ない。
「お前自由すぎるだろ...」
俺がソファーに座ってくつろいでいると、呆れたように本隊のリーダーっぽい男がそんなことを言ってきた。
だが、勝手に森に入ってったギルマスのおっさんを待つのにわざわざ突っ立って待ってる気は毛頭ない。
俺は本隊のリーダーっぽい男の発言を聞き流し、そのままソファーでくつろいでいた。
氷の道が消滅してからどれだけ時間が経っただろうか、森の奥から物音がしたのでそちらに目を向けると、ギルマスのおっさんが森から出てきた。
森から出てきたギルマスのおっさんは、誰かを探すようにキョロキョロと周りを見回し、俺と目が合うと一瞬鬼のような形相になったが、次いで俺がソファーでくつろいでるのを見ると、呆れたように嘆息している。
「無駄足お疲れ、ギルマスのおっさん」
「お前...自由過ぎるだろ...」
「同じことをそいつにも言われたよ」
そういえば名前を聞いてないなと思いながら、本隊のリーダーっぽい男を指さすと、ギルマスのおっさんもそいつを見て、納得したような表情を浮かべた。
「ああ、確かにテッドならそう言うだろうな。癖の強い冒険者の中でもかなり常識人でもあるしな。って、そんなことはどうでもいい!なんだあのメッセージは!」
「ん?分かりやすく書いたつもりだったんだが伝わらなかったか?キングとロードは倒した、森の中のゴブリンもほぼ全滅させた、仕事は終わらせたから森から出る。読めば分かるシンプルな内容だと思うんだが?」
そう、あの場に残したメッセージは依頼が終わったから、先に戻るという旨の内容だった。
シンプルで分かりやすいと思うのだが、ギルマスと言えどやはり見た目通りの脳筋なんだろうか?
「内容は読めば分かったわ!俺が聞きたいのは、どうやってゴブリンキング3体とゴブリンロード5体、それから森にいるゴブリンの大半をあの短時間で仕留めたのかってことだ!」
「キングとロードに関しては戦法を明かす気がないので黙秘、ゴブリン共は俺の火魔法で全部焼き払った。おっさんも森にいたなら火の海みたいになったのに気づいたんじゃないか?」
「あれはお前の仕業か...突然あたりが火の海と化したと思ったら全く痛くも熱くもないしおまけに木が燃えてる様子もないから何事かと思ったぞ...」
「ちゃんとゴブリン種だけを燃えるようにしたから問題ない」
「とことん規格外な男だな...しかも魔石は放置と来たもんだ」
「わざわざ森中に散らばってる魔石を拾い集めるなんて面倒だろ?俺からのサービスってことで後で適当に拾い集めればそれなりの数になるんじゃないか?」
「お前というやつは...はぁ...もういい。それで、ゴブリンキングとゴブリンロードの死体と魔石はどうした?まさかその死体も燃やしたのか?」
「そいつらの死体は一応『アイテムボックス』に入れて保管してある」
「規格外の炎魔法と氷魔法に加えて『アイテムボックス』まで、それでEランクとかどうなってんだ...」
「王都にいた頃はギルドに明かしてなかったしな。それでフィリップ、ガンツ、カティのCDDの冒険者とパーティーだったから実績が低く見積もられてんだよ」
「ただの新人冒険者のフリしてフィリップたちと一緒にいればそうなる、か...はぁ...」
「ま、そんな些細なことはともかく、依頼は終わったんだろ?もう街に戻ってもいいよな?」
「あー、お前は戻っていいぞ。他の連中は今から森の中で魔石集めだ」
ギルマスのおっさんから帰還の許可が出たので、ソファーから立ち上がり、ソファーを『アイテムボックス』にしまうフリをして『消失』で消し去る。
他の冒険者は地味な作業に不満そうだが、持ち帰った魔石の数で報酬を考慮するというギルマスのおっさんの宣言でやる気を出したようだ。
「んじゃ、俺はとりあえず街に戻るわ。『旅の止まり木』ってとこに宿とってるから、報酬なりなんなりが決まったらそこに使いでも寄越してくれ」
「ああ、『旅の止まり木』だな。分かった」
俺はギルマスのおっさんに宿を伝え、その場を後にした。
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