表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/49

21話

「「「「「「「「ガァアアアアアアアア!!!」」」」」」」」


俺以外の人間は一人もいなくなったこの場所で、俺を獲物と見定めたキングとロードは、一斉に雄叫びを上げて押し寄せてくる。


「ははっ!流石にこんなデカブツが八体も声を揃えて叫んで迫ってくるとなかなかの迫力だな!まあ迫力しかないが」


自分でも笑顔を浮かべているのを自覚しながら、俺は迫り来るキングとロードを暫し眺めた。

ロードで2mを超え、キングにもなると3mもありそうな巨体と、相応の得物を手にして迫ってくる姿は確かに迫力はある。

迫力はあるのだが、所詮はゴブリンというべきか、連携なんてあったものではなく、ただ一緒に襲ってくるだけだ。


「これで連携が取れてれば脅威なんだろうが、キングやロードといえどもこうも烏合の衆じゃあ、な」


俺はそんなことを呟きながら、手にした銃の引き金を八連続で引く。

弾丸が内部に生成され、実質リロードいらずのこの銃は、引き金が引かれる度にきっちりと銃口から魔弾を撃ち出す。

初手として放った魔弾は火・風・氷・雷、四つの属性を二つずつで八発。

元の世界と同じ速度があるだろう魔弾は、弾道誘導の効果も相まって、一瞬のうちに狙い違わずキングとロードの左腕を浅く(・・・・・)撃ち抜いていく。


「「「「「「「「ガァッ!?」」」」」」」」

「おーおー、撃たれた反応まで一緒とは個性がないねぇ」


断言はできないが、ロードを氷柱で仕留めたときの感覚からすれば、魔弾の狙いを全て心臓に定めていれば、一発で全滅させることが出来たとは思う。

ただ、それではつまらないのでわざと左腕、それもダメージは与えつつも動かすことには問題がない──痛みを考慮しなければ、だが──場所を狙い撃ちした。

しかし、浅いとはいえ、ただの金属の弾ですら人間なら結構な痛みがあるだろうに、俺が使っているのは魔弾だ。

氷に関しては普通の弾丸と変わらなさそうではあるが、火と雷に関しては命中した部分とその周囲を焼き、風は命中した部分をズタズタに引き裂いている。

痛みは通常の弾丸とは比べ物にはならないだろう。

現に、キングもロードも撃たれた直後は腕を抑えて苦悶の声らしきものをあげていた。

まあ流石は上位の魔物というべきか、苦しむ時間もそれほど長くはなかったが、先ほどのように突っ込んでくるのはやめ、周囲を取り囲みながら警戒したようにこちらの様子を窺っている。


「へえ、ゴブリンってわりと単純思考だと思っていたが、きちんと脅威に対する警戒もできるんだな」


勝手なイメージだが、ゴブリンという魔物は相手が自分より強かろうが、自分自身ではっきりと勝ち目のない強者と理解するまでは恐れずに襲いかかってくるというイメージがあった。

それゆえに、こういう風にゴブリンが相手を警戒するように取り囲むというのに驚きがあったのだが、そこはそれ、ゴブリンといえどもキングやロードといった最上位種といったところだろうか。


「まあ遠距離攻撃を受けて、遮蔽物に身を隠すでもなく、ただ周りを取り囲んでいるあたり結局はゴブリンなんだがな。...よし決めた、最初はあいつにしよう」


そんなことを独り言のように呟きながら最初の犠牲者──犠牲ゴブリン?──を選んでいた俺は、結局は適当にロードの一体を標的に決める。

そして、とりあえず標的及びその他のゴブリン連中の行動を制限するため、俺を中心に太陽を直視したかのような眩い光を放つ。

結果、じっと俺のことを見ていたゴブリン連中は閃光をもろに受け、目を抑えてじたばたともがく。


「そうだな、じゃあまずは生命力チェックを兼ねての嬲り殺しで」


キングもロードもまとめて視界を一時的に潰した俺は、先ほど標的に決めたロードへと銃口を向け、引き金を引く。


「ガッ!」


先ほどとは違い、放った魔弾は火を一発だけだったが、当然のように狙いを違わずゴブリンの左手首を撃ち抜く。


「さてさて、じわじわと撃ち抜いていったらロード君はどこまで耐えてくれるのかな?」


そんな標的にしたのが人間だったらまさしく悪魔と呼ばれるような事を呟きながら、俺は一発一発反応を確かめるようにしながら属性を変え、場所を変え、次々と標的のロードの体を撃ち抜いていった。

途中、実験を兼ねて複数の属性を一つに纏めた魔弾を試してみつつ──あっさりと成功した──、30発ほど撃ち込んだ頃には、ロードはもはや瀕死といった様相で、その場に倒れ伏しわずかに身動ぎをするだけとなっていた。


「一応致命傷は狙わなかったけど、まあ魔弾を30発も撃ち込んだと考えればよくもっている方、か?」


そんなことを呟きながらふと他のキングやロードを眺めてみれば、既に視界は回復したようではあるが、すっかりと瞳を怯えの色に染め、その場に固まってしまっている。


「あらら、すっかり怯えられちゃったか...。ならさっさと全部処分して戻りますかね。あんま遅くなるとギルマスのおっさんとかの余計な邪魔が入りそうだし」


実際、あの本隊の奴らを森の入口の方へと飛ばしてから既に少なくない時間が経っている。

元Aランクらしいあのギルマスのことだ、報告を受けたら緊急事態だと判断して突入してきてもおかしくない。

それに、ルフトの街での諸々のストレス発散も兼ねてロードを嬲ってみたが、いくら魔物が蔓延る剣と魔法の物騒なファンタジー異世界とはいえ、こういう方向性に突き進むのは色々と不味い気がする。

まあ既に若干手遅れ感もないではないが、今後は魔物を嬲って遊ぶというのは控えめにした方が良さそうではある。


(しかし、元々やられたなら徹底的に叩き潰す的なスタンスだったが、この異世界に来てからそれが更に過剰になった気もするな)


やはり異世界に召喚されたことで精神性になにか影響でもあったのだろうか?

まあ『創造』と『消失』という頭のおかしい性能の、スキルではなく権能とやらをこの世界に来てから得ている以上、元の世界と完全にそのままとは言えないのは事実ではあるが。


「ま、考えても答えの出ないことに頭をひねり続けるのも時間の無駄か」


異世界に召喚されたし、変な力手に入れたし、環境が変わったし精神性に変化があってもおかしくない、むしろあるはずだ。

とりあえずそう結論づけ、思考の中から戻った俺は、とりあえず目の前の瀕死のロードの脳天に魔弾をぶち込み絶命させる。

続いて、恐らく隙だらけだった考え事中の俺を前に逃げるでもなく、襲いかかってくるでもなく、ただ怯えた瞳でかすかに震えるキングとロードを見た。

キングもロードも俺と目が合った瞬間、ビクリと身体を震わせたが、それ以外には特にアクションは起こさない。


「ま、お前らはすぐに楽にしてやるから安心していいぞ」


まあこの場では楽になる=死なので、安心できるかは疑問だが、とりあえず俺は引き金を7回引き、キングとロードの心臓を魔弾で撃ち抜き絶命させた。

そして、その場に転がる八つの死体を『亜空間収納』に放り込み、サーチの様子を見る。

恐らく、本隊の冒険者をギルマスのとこに強制送還した後、分隊の連中も森から撤退させたのだろう。

しばらくサーチを確認していたが、ゴブリンたちが倒されていくのは確認出来ない。


「いや、完全に倒されてないわけでもない、か」


よく見れば、森の入口から俺とを繋ぐ線の上だけはゴブリンの反応がない。

無論俺の近くの方はまだ反応はあるのだが、俺の方へ向けてゴブリンの反応が減っていっている。


「こりゃ多分ギルマスのおっさんだな」


恐らく俺の救援にでも来ているのだろう。

まあ既に俺が死んでると考え、キングとロードだけでも討たんとしているという可能性もあるが。


「とはいえ、わざわざ待ってやる義理もないな」


既にキングとロードを倒したし、この場に留まる理由はない。

それに、わざわざここでギルマスのおっさんを待って事情説明をしてから歩いて戻るというのもめんどくさい。

ここから戻るのであれば、まだ上に置いたままの氷のウォータースライダー──今はもう水は流れてないが──を使って戻った方が早いだろうし。


「んじゃ、残りのゴブリンを駆逐してさっさと戻りますかね」


サーチを見て残りのゴブリンの反応を確認した俺は、その場で『創造』の力を発動し、自分を中心に炎を生み出す。

生み出した炎は、草花や樹木は一切焼き払うことなくどんどんとその範囲を広げていき、ただ炎に触れたゴブリン種だけを焼き尽くしていく。


「おー、そういう風に創造したから当然とはいえ、面白いくらい次々と反応が消えていくな」


サーチの反応を確認してみれば、俺のいる位置を中心とした円形に次々とゴブリンの反応が消失していく。

そして、少なくともサーチの範囲内からゴブリンの反応が完全に消えたところで、炎もまた消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ