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16話

結局、俺は今回の緊急クエストは参加を見送ることにきめ、そのまま緊急クエストの宣言をした男に背を向けて冒険者ギルドを後にしようとした。

だが、そう決めて男に背を向けた矢先、後方からその男に声をかけられる。


「おーい!そこのえーっと...そう、シュウヤ!Eランク冒険者のシュウヤ!ちょっと待ってくれ!」


冒険者ギルドの中でギルドの関係者にランクと名前ではっきりと俺のことを特定されて呼び止められるこの状況。

どう考えても面倒事の予感しかしないこの状況に、少なからず不機嫌な気分で顔だけを男の方へと向ける。

そして、苛立ちに物理的な攻撃力があるからこの男を殺せるんじゃないか、と思う程度には苛立ちを込めて睨みつけるようにしながら俺は返事をした。


「...何の用だ?」

「っ...!」


不機嫌なオーラを全開にしていたからだろうか、俺に声をかけてきた男は、俺と目が合った瞬間、まるで気圧されるかのように後ずさり、わずかに顔色を悪くする。

だが、流石は荒っぽい冒険者の多い冒険者ギルドに務める職員──そういえば冒険者ギルドで男の職員はほとんど見ない──と言ったところか、男はすぐに表面上は平静を取り繕う。

そして、ある意味では予想通りである意味では予想外の言葉を投げかけてきた。


「現在、このルフトの街にはBランク以上の冒険者はいない。そして、Cランク冒険者も十人いるかどうかという状況だ。君のような優秀な力を持つ冒険者には是非とも参加してもらいたいのだが」


その言葉からゴブリンキング戦にも参加できそうな雰囲気を感じとったが、まだこの男が手頃な戦力として確保しようと虚言を弄している可能性は否定出来ない。

俺は不機嫌オーラを崩さないままで男の要望に答える。


「ゴブリンキングには興味はあるが、俺はEランクだし、どうせ参加しても周りのゴブリン共の露払いに使われるのが関の山だろ?そんなつまんない役回りをするくらいなら俺は御免なんだが」


普通だったらEランクでしかない冒険者がこんな事をいえば、他の冒険者から一斉に叩かれることだろう。

だが俺は昨日の時点で絡まれてきた冒険者で遊ぶことである程度の実力は見せている。

実際、フィリップたちからは|全力でなら

《・・・・・》、最低でもB、普通に考えればAランク相当の能力があると言われていた。

冒険者ギルドや他の冒険者に明かす程度の力でも、低く見積もってもCの実力になるだろうとのお墨付きも得ている。

そして他の冒険者もランクと実力が必ずしも一致しないと理解しているのだろう。

冒険者たちからは罵声の一つも飛ぶことはなかった。

とはいえ、戦力が不十分というのは本当のことなのか、ギルド職員の男は俺の言葉に目に見えて焦りだした。


「い、いや、そんなことはない!シュウヤ君、君は確かにランクはEではあるが、その実力はゴブリンキング討伐に参加するに充分に足るものだ。君には是非ともゴブリンキングと戦う側に回ってほしい!」

「いくつか条件がある」


わりと必死な様子を漂わせて緊急クエストへの参加を頼み込んでくるギルド職員の男に、俺はそんな言葉を返す。


「じょ、条件?」

「ああ、この条件を呑んでくれるならその緊急クエストに参加しても構わない」


俺の言葉に、ギルド職員の男は目に見えて悩み始めた。

大方、俺のような戦力を手放すのは惜しいが、条件も聞かずに迂闊な返答はできないと言ったところだろうか。

しばし悩んでいた男だったが、程なくして答えが出たようだ。


「条件を先に聞かせてもらいたい。全てを確約できるとは限らないが、ものによっては約束するし、厳しいものでも出来る限り譲歩をしよう」

「分かった、俺が提示する条件は──」


まずは聞いてから判断すると言った職員の男に、俺が提示した条件は以下の三つだ。


一、ゴブリンキングと戦うメンバーに必ず割り当てること。

二、俺に一切パーティーや連携を要求しないこと

三、俺の行動を他の冒険者に一切邪魔させないこと


俺が提示した条件に、職員の男は一瞬だけ悩む素振りを見せたが、先程とは違い即座に答えを出した。


「分かった、その条件であれば受け入れよう。緊急クエスト、参加してくれるね?」

「ああ、条件が守られてる限りは、な」


こうして俺の緊急クエストへの条件付きでの参加が決まったところで、俺と職員の男のやり取りの影響でずっと口も挟めずに待機を強いられていた冒険者たちが動きだした。

既に参加が決まった俺はギルドの端によって眺めていたが、ギルドの中にいた冒険者はほぼ全員が参加を決めたらしく、受付カウンターはその処理でてんてこ舞いになっていた。




それからおよそ1時間ほどで全員の処理が終わったのか騒ぎが一段落し、これからの予定が発表された。

これより、一時間を準備時間とし、一時間後に冒険者ギルドの前に集合、そこからギルドの馬車等を用いてざわめきの森へと移動、到着次第ゴブリン及びゴブリンキングの討伐を開始する。

ちなみに、ゴブリンキングの存在するようなゴブリンの集落とのことで、ゴブリンキング以外にも多数のゴブリンの上位種が存在する可能性が高いらしく、特にEやFの冒険者が気をつけるようにと注意されていた。

え?俺?注意するだけ無駄だと判断されたのか、俺は特にそんな注意はされなかったよ。

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