12話
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「...結局、はぐれオーク以降は魔物はゴブリンとかウルフばっかだし、特に何も起きなかったな」
王都を発ってから1週間、フィリップたちの見立て通り、1週間で次なる街ルフトに到着した。
結局、道中では俺が期待するようなイベントは何も起きず、ただただ平和で短調な旅路だった。
(ま、せめてこの街ではなにか起きることを期待しますかね)
一応、門番の前のため、変に目をつけられても面倒なだけなので、心の思うだけで口には出さずに門番にギルドカードを提示する。
登録の際にも説明を受けていたのであまり心配はしていなかったが、ギルドで説明された通り特に税を取られることもなくスムーズに通された。
「へぇ...異世界の街ってのは王都に続いてこのルフトで2ヶ所目だけど、やっぱ王都が近いからか似通った感じになるのかねえ」
コンクリートジャングルとでもいうべき鉄筋コンクリートの建物に囲まれた現代日本で暮らしていた俺からすると、この世界に召喚された当初はどこもかしこも石造りの建物なのがどこか目新しく感じていた。
まあ流石にひと月近くもこの世界にいればもうすっかり見慣れてはいるのだが。
「とりあえずギルドに顔出してオススメの宿を聞いて、本格的な活動は明日からってとこか」
ほんとは自分でいい宿を見つけられるといいのだが、現代でも海外の宿はピンキリと聞くし、下手に自分で探して悪徳な宿に当たっては目も当てられない。
ある程度そういう目利き?が出来るようになるまでは冒険者ギルドで宿を聞くのが無難だろう。
「と、いうわけでまずはギルドを探して適当にぶらつくかね」
王都と同じ見た目でわかりやすくあれば楽なんだが、ま、今のところは時間の余裕はたっぷりあるし、気長に探せばいいか。
冒険者ギルドは思いのほかすぐに見つけることが出来た。
初めてこの街にくる冒険者にも分かりやすくするための配慮なのだろう。
外観こそ王都にあったギルドと完全に同じというわけではないが、ギルドカードにも刻印されているギルドの紋章と、『冒険者ギルド』と書かれた看板をしっかりと掲げていた。
(お?まさかこのタイミングで、か?)
冒険者ギルドの扉を開け、ギルドの中に入った直後、ギルドの中から多数の視線を向けられるのを感じた。
向けられる視線に込められた意思は様々だが、何人かからは侮り嘲るような気配を感じる。
念願の定番イベントの気配を感じ、内心わくわくするが、それを出来るだけ表に出さないように気をつけつつそのまま受付へと歩いていくと、何人かが俺の方へと近づいてくるのが視界の端に入った。
もう確定したも同然のイベントの発生を今か今かと待ち侘びていると、受付の目の前でようやく近づいてきた奴らが声をかけてきた。
「おいおい坊主、ここはお前みたいなガキが遊びに来るようなところじゃねえぞ?」
(ついに定番イベントが来た!!)
王都での冒険者登録時には起きなかった定番イベントの発生に、内心では喜びの声をあげつつ表情は平静を装って振り返る。
そこには、ガラの悪そうな強面の顔でニヤニヤと頭の悪そうな笑みを浮かべたまさに定番イベントにピッタリな装いの冒険者たちが立っていた。
なにか面白いイベントを期待してはいたが、まさか登録時ではなくこのタイミングで冒険者の定番イベントが来てくれるとは思いもしなかった。
確かにまあ日本人の運命というべきか俺自身、自分がそんなに大人びた顔をしているとは思ってない。
それに、武器も防具も『創造』の力でほぼ新品同様に綺麗にしているので、格好だけ整えて冒険者ギルドに登録に来た新入りと思われても仕方ないのかもしれない。
一応ゴブリンは元よりオークやゴーレム、それにワイバーンなどのそれなりのランクの魔物と戦った経験があるとはいえ、一ヶ月かそこらでは冒険者としての存在感?は身につかなかったようだ。
まあ舐められたままってのも些か癪ではある。
それに折角逃したと思ったイベントが来てくれたんだ、楽しまなきゃ損というものだろう。
「まあ元の世界では子供と判断される年齢なのは否定しないけどな。見かけだけで侮って馬鹿丸出しの絡み方をする天然記念物のような存在が実在するとは思わなかったな。ああ、でもよく見れば確かに頭の悪そうな顔をしているか」
「なっ...てめぇっ!!」
わざと挑発するような言葉をしっかりと聞こえるような声量で呟いて呆れたようにため息をついて見せた。
すると、思った通り絡んできた冒険者はあっという間に頭に血を昇らせて、今にも掴みかかってきそうな様子だ。
まあ即座に掴みかからない程度には自制心が働いたようではあるが、きっかけさえあればすぐにでも殴りかかってきそうではある。
俺はとりあえず絡んできた冒険者から視線を外すと、困ったような様子でそれでも一応は笑みを浮かべている受付嬢の方へと目を向けた。
「なあ」
「は、はい?」
俺がそのまま受付嬢に声をかけると、まさか自分がこのタイミングで話しかけられるとは思わなかったのか、少し慌てながら受付嬢が返事を返してきた。
「ここに頭の悪そうなことを言いながら絡んで来て、本当のことを言われたら逆ギレしている馬鹿な連中がいるんだが、こいつらのランクは聞いたら教えてもらえるのか?」
「え、ええ、全員がDランクでパーティーを組まれています」
俺が絡んできた冒険者連中をさらっと煽りながら受付嬢に尋ねると、受付嬢は困ったような笑顔を浮かべたままランクを教えてくれる。
後ろの連中からは更に怒りが増したような雰囲気を感じ取れるが、思いのほか我慢強いようだ。
いっそ殴りかかってくれたら正当防衛の名の元に制圧できそうで楽なのだが。
「へえ...Dランク、ねえ。こんな程度の低そうな連中がオークを相手に出来るような冒険者というのは驚きだな」
「てんめぇ...言わせておけばガキが調子に乗りやがって...!」
「表出やがれ!俺らが身の程ってやつをしっかりと叩き込んでやんよ!」
「身の程か、口先だけじゃなくて叩き込めるだけの実力が伴っているならいいんだが」
「ああ!?舐めやがってこのクソガキが!」
「礼儀ってもんも教えてやんなきゃなんねえみたいだな!」
「と、まあ狂犬が吠えているわけなんだが、俺がこいつらを叩きのめしたらなんかペナルティとかあったりするのか?」
「え?あ、いえ、冒険者同士のトラブルはギルドとしては原則不介入ですので。衛兵の方も恐らくは問題ないかと」
「そうか、分かった」
受付嬢から期待通りの答えをもらえたので、俺は絡んできた冒険者たちの方へと再度目を向ける。
「さて、それじゃあ暇つぶしに相手してやるよ。少しは楽しませてくれよ?」
俺はそう絡んできた冒険者たちに告げると、そのまま冒険者ギルドの外へと出た。
売られた喧嘩はわりと数倍返しで売り返す主人公であった




