11話
お気づきの方もおられるかもしれませんが、タイトルを少し変更しました。
旧:勇者?一般人?いいえ、破壊者/救世主です。
新:勇者?一般人?いいえ、破壊者/救世主です。─星の子は異世界で神殺しとなる─
です。
後ろにちょっと追加した形になります。
「さてと、こっからは完全に一人っきりだし、通りすがりの商人とか同業者に見られないように気をつけつつだけど、道中はわりと好き放題できそうだな」
そう、フィリップたちのことは信用して多少は『創造』の力を──魔法と偽ってはいたが──見せていた。
とはいえ、当然ながら『創造』の力、その全てを見せていたわけではない。
というより、擬似魔法以外はほとんど隠していたと言っても過言ではない。
食料でも何でも『創造』できるのは当然のこと、周りの魔物をサーチできるのも言わなかった。
まあ魔物のサーチに関してはそれに匹敵するくらいに精度の高いカティの勘?があったからそれほど活躍することは無かったけど。
しかし、これからは完全な一人旅で、そう言ったことを気にする必要は無い。
まあ通りすがりの商人や同業者に見られると面倒なのは変わらないからある程度は気をつけるが、そもそもそんなド派手なことをする気はないからさほど問題は無い。
初めての一人旅、俺は色々な意味で楽しむ気満々でいた。
「とはいえ、好き放題できるって言ってもそんなにやりたいことがある訳じゃないけどな」
実際、『創造』の実験や活用は王都にいた時に宿屋で散々やっていた。
食事や寝床の自重をしないとはいえ、道中でそれほど『創造』で遊ぶことがあるわけではない。
せいぜい魔物との戦闘とかでフィリップたちと一緒だった時には出来なかった戦い方を試すくらいだろう。
「ま、それだけでも十分楽しいだろうけど、っと」
とりあえず近場には魔物がいないことを確認したので、そんなことを呟きながら『創造』の力を行使した。
多少は慣れてきたからだろうか、食べ物とかのイメージしやすいものに関しては、前よりも簡易的なイメージでも『創造』できるようになった気がする。
そんなこんなで、『創造』で出した焼き鳥──ちなみにタレ味のモモ肉だ──を食べながら、次の街、ルフトを目指してゆったりと進んでいく。
「しっかし思いのほかファンタジーな異世界の旅ってのも平和なもんだよなぁ」
王都を出て早三日、ここまでの旅路は平和というか、平和すぎてちょっと退屈になってくる程度にはイベントがない。
俺が読んでた小説だと、街から街への移動の時には魔物や盗賊に襲われる危険があるから商人とかは護衛を雇うってのが定番だった。
それに関連して、転移時点で強かった主人公が盗賊とか魔物に襲われてる馬車を助けてフラグを建てるってのも定番だったんだが、特にそういう面白イベントはない。
時々散発的に魔物が出てくるくらいで、盗賊なんて影も形も見ていない。
まあ何回かすれ違った商人っぽい集団は当然のごとく護衛みたいな人を連れていたからそういう危険がないわけではないのだろうが、思ったよりも平和な旅だ。
「っと、魔物が近いな」
そんなことを考えていると、ふとセンサーに魔物の反応が引っかかる。
まあ引っかかったからといって全く見当違いの方向だったら当然無視するのだが、今回の相手は進行方向から考えてうまくかち合いそうだ。
王都と他の街とを繋ぐ道だからか、さほど強力な魔物は出ないが、だからこそ面白い『創造』の実験台には丁度いい。
「さて、ゴブリンが出るかウルフが出るか、はぐれオークあたりが出るといいんだが」
もはや旅の暇つぶし程度にしかならない──まあ大体がゴブリンやウルフなので仕方が無いのだが──魔物との遭遇。
「お、噂をすればなんとやら、はぐれオークか」
オークは基本的には数体のグループで行動しているのだが、まれに単独で行動しているオークがいる。
まあ複数体のオークでも問題なく倒せるは倒せるのだが、遊ぶためには数が少ない方がやりやすい。
そういう点では、それなりに生命力があってかつ単独で行動しているはぐれオークはこの辺りでは一番の大当たりと言える。
「折角だから今回はこれを試してみるか」
俺はそう呟きながら、それなりに距離があるためこちらにはまだ気づいていない様子のオークをじっと見つめる。
そして、右手をピストルの形に構えて銃口に見立てた人差し指の先をオークの心臓──と言っても距離があるため所詮は向けているつもり、だが──へと差し向ける。
そして、頭の中にしっかりと『創造』で創り出す現象のイメージを描いていく。
「発射」
しっかりとイメージが完成したところで、なんとなく雰囲気を出すために必要の無い発動の言葉を口にして、『創造』の力を発動する。
直後、ハンドピストルの銃口から弾丸の形状──と言っても実物を見たことはないためアニメなどでのイラストからのイメージだが──をした雷の弾丸が飛び出した。
『創造』によって形を成した雷の弾丸は、弾道誘導のイメージの甲斐あってか──距離と弾丸のサイズもあって肉眼で見えないから正確なところは分からないが──、オークに命中したようだ。
雷の弾丸が命中した?オークは、一瞬体を大きく震わせ、その場にバッタリと倒れ込む。
「んー、やっぱこういう遠距離攻撃系とかのために遠視的なことが出来るようにした方が良さげだな。それにやっぱりこういう銃撃風の攻撃の時は雰囲気作りのためにも拳銃っぽい武器が欲しいな」
目を凝らして見てはいたものの、やはり着弾の様子などを確認することが出来なかったことは残念だが、センサーを先に作ったのもあって視覚や聴覚を補助するものは作っていないのだから仕方がない。
それと、気分の問題な上に自分だけしか使わない趣味の塊とはいえ、拳銃のようなものを作ったら、もし他に転移者や転生者がいた場合に見られたら面倒なことになる気もする。
まあその辺は後でじっくり考えればいいことだし、とりあえず今は恐らくさっきの一撃で仕留めたであろうはぐれオークの確認だ。
遠視などの感覚の強化や、まだ手を出したことがない武器などの『創造』についてを頭の片隅に書き留めつつ、俺ははぐれオークのところへと駆け出した。
「おー、心臓のあたりに小さく焼け焦げたような穴が空いてるし、ちゃんと狙い通りの場所に当たったみたいだな」
雷の弾丸で撃ち抜かれ、うつ伏せ倒れたはぐれオークの死体をひっくり返して確認すると、心臓のあたりにしっかりと穴が空いていた。
雷で弾丸を作ったからか、弾丸が貫通した結果と思われる小さな穴の周囲は黒く焼け焦げている。
思いつきで試してみた魔法弾とでも言うべき攻撃だが、思いのほか上手くいったらしい。
俺はオークの死体を丸ごと『亜空間収納』に放り込み──最近、中に入れたものを自動的に解体してくれるように改良した──、とりあえずはルフトの街への移動を再開する。
順調に行けば後四、五日でつく──フィリップたちの予測通りのペースで進んでいればだが──ルフトまでの旅路。
なにか一つくらい定番系か何かで面白いイベントが起こることを期待するばかりである。




