10話
あのフィリップたちと行ったゴブリン狩りの日からしばらくの間、俺はフィリップたちに色々な討伐依頼に連れ回されまていた。
約束は律儀に守って依頼には絶対にフィリップたち三人と俺以外の冒険者は参加させないし、狩りの合間には剣の稽古もつけてくれた。
くれたのだが、連れ回された討伐依頼の選択がなかなかにおかしかった。
だってアレだぜ?俺はFランクなのに平然とDランクのオークとかゴーレム、それにトレントとか普通に連れていかれるし、一回だけCランクのワイバーンの討伐にも連れていかれた。
しかも、荷運びとかのサポート要員じゃなく、がっつり戦闘要員だ。
というか下手するとフィリップと同じかそれ以上に攻撃に参加させられた気がする。
まあ『創造』の力があるから火力は充分に足りているし特に問題なく狩れるは狩れるんだけど。
とはいえその甲斐?もあって、俺の『亜空間収納』には色んな魔物の素材が入ってるし、ランクもEに上がった。
ランクに関しては、フィリップたちのランクが高いからその辺で低く見られるみたいだ。
まあ『創造』の力での実力とかは隠してるし、寄生と見られてもおかしくないからそれは構わないんだけど。
ちなみに、武器と防具は『ティーツ工房』ではじめに買ったものを今もまだ使い続けている。
メンテナンスは『創造』の力で問題なく行えてるし、武器自体の質もかなりしっかりしてるので今のところ問題は無い。
というか、基本的には『創造』での擬似魔法がメインで、剣はむしろサブウェポン的な扱いだし。
ともあれ、それなりにこの世界で戦っていけることも判明したし、『創造』のお陰で旅も特に問題無さそうということが判明した。
というわけで、当初の目的だったこの世界を満喫するという目的のために、そろそろこの王都を出てあちこちを旅してみようと思う。
ちなみに、そのことは既にフィリップたちに伝えてある。
その時に、どの程度なら『創造』の力──フィリップたちは六属性の魔法だと思ってるけど──を開示して大丈夫かの話し合いもした。
フィリップたちの話では、無詠唱かつアレンジが出来るってのは隠すと違和感があるだろうからオープンにしつつ、多くても二属性までに絞るのがベストじゃないか、とのことだった。
一応俺的には使い勝手のいい火と防御にも使いやすい氷の二属性がいいと思うし、フィリップたちもそれに賛成してくれた。
まだギルドには教えてはいないが、今後は表向きは火と氷の二属性を無詠唱で使える魔法使い兼剣士っていうことになる。
そして、今日がその旅立ちの日だ。
ギルドでは基本的にはフィリップたちとしか一緒に依頼を受けていないため、この王都での知り合いっていうのはほんとに両手で数えられるくらいしかいない。
だけど、フィリップたち三人は律義に見送りに来てくれた。
「わざわざ見送りに来てもらって悪いな」
「なーに言ってんだが、あんだけ一緒に色々やっといて見送りにもいかずにサヨウナラってほど俺らは薄情者じゃねえぞ?」
「うむ、当然のことだな」
「ん、仲間を見送るのは当然」
王都の門の手前で、フィリップたちと別れの挨拶をする。
ちなみに、ここから一番近い街までの道のりを教えてくれたのもフィリップたちだ。
剣の稽古といい、ランク以上の魔物との戦闘経験といい、本当にフィリップたちには世話になった。
「ま、お前さんの常識外れな魔法の技術を考えればそうそうその辺で野垂れ死ぬなんてことはないだろうが、元気でな」
「またいつか再び会えることを期待しておる」
「またいつか、元気でね」
「おう!ほんと色々とありがとな。お前らも元気で頑張れよ?それじゃ、また縁があったらまた仲間として会えることを期待してるよ」
フィリップたちの性格ゆえか、ほとんど湿っぽい雰囲気になることなく別れの挨拶を終える。
結局、王都にいる間には勇者になったクラスメイトたちの話を一度として耳にすることは無かった。
噂レベルでも、だ。
王族としては切り札的に隠蔽しておきたいのかもしれないが、やはりどこかきな臭い感じがする。
ただ、それをフィリップたちに下手に言って、フィリップたちが危険に巻き込まれるようなことがあったらそれは困る。
だから、願わくばフィリップたちと敵対することなく、王に感じた不信感が気のせいで済むことを願いたいと思う。
そんなことを考えながら、俺はフィリップ、ガンツ、カティの三人に背を向けて、次なる街を目指して踏み出した。




