8
ねえねえルー君、一度むこうの研究室に戻りたいんだけど良い?
「こっちの研究室では駄目なのか?」
やっぱむこうの方が参考資料も道具もそろってるし、何よりすぐに助言を求められる環境だからねー。
それに、いったん戻って試験受けられるなら受けたいんだよね。
うまいこと一級魔術研究士の資格とれれば色々と制限も緩むから研究も進みやすいと思うし。
「むう……なら俺も」
ついて来るとかやめてね?
資格とって、あるていど研究進めて、必要なものそろえたら戻ってくるから!
「どれくらいかかる」
うーん、何とも言えないけど……順調にいけば半年、ってとこかな
「うむ。却下だ」
えええー何でよー。
「そんな長い時間離れたら寂しいだろ」
半年で長いとか言う? 私が一旦この国出てから、三年くらいは全然会ってなかったじゃない。
「ああ、あの時は寂しさで死ぬかと思った。とりあえず仕事に打ち込む事で寂しさを紛らわしていたからどうにかなったが、今は有能な部下もできて仕事も減ったからな。こんどこそ死ぬと思うぞ」
いや寂しさで死ぬってどんだけ心弱いの!
その外見からは想像できない繊細さだよね!
「どうしても出て行くというのなら、俺を殺す気で行くんだな」
うわ止めて何その決意顔と重厚なオーラ!
ラスボスかあんたは!
絶対殺しても死なないでしょ!
倒したと思ったら闇の中から真のルー君が出て来るんでしょ!
「試してみるか?」
え? これバトルの流れ?
もしかして最終決戦的な雰囲気?
「只今戻りました……えっ、あの、何で戦闘モードなんですか?」
「オレも分からん! とりあえずお前アレ止めてきて」
「無理です。私こう見えて戦闘能力ゼロなんで」
「はぁあ!? そのガタイで何言ってんの!?」
「鍛えるのは好きなんですが、戦うとかちょっとそういうのは……」
「超無駄筋肉!」
「はい。なので先輩お願いします」
「くそう(あーもう、こんな時ジェイド隊長が居れば……仕方ない、オレが行くしか……ううう……超恐えええ)おやめ下さい総司令官!」
っと、危な!
もう、チー君に当たっちゃうとこだったじゃん。
危ないから下がっててね?
「ひっ!? ちょ、何ですか今の!? というか何でそんなワクワク顔なんですかミレイシア様!」
最近平和になっちゃったからさぁ、たまにはこういうのも悪くないかも?
みたいな。
「おやめ下さい部屋が……いや城が壊れますから!」
あっはは! 大げさ~!
「今度はこちらから行くぞ」
「うひいいいい!? しょしょしょ、しょうしりぇーかん、おやめくだしゃああああ!?」
「――――」
あっ待ってルー君。威圧感だけでチー君が死にそう。
っていうかロー君なんて立ったまま気絶してるし。器用ねー。おかげでババロアは無事だったけど。
「軟弱な」
そう言わないの。ルー君てば本気でラスボス級なんだから……ロー君、ロー君、ごめんねー取りに行ってくれたのに出迎えがこれで。
「――っ、は! いえ、問題ありません」
お詫びにルー君の分は二人にあげるね!
聞き分けの悪いルー君はお預けです。
「……」
「「――――」」
冗談だから威嚇しないのー。あーもう二人とも気絶してるし。
「ふん」
仕方ない人だなぁ。もう。