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ルー君。
「何だ」
友好関係を結ぶ切っ掛けとして、大切なものって何だと思う?
「信頼」
あ、うん、信頼って大事ね。
でもそれは関係を継続させるために大事な事じゃないかな。切っ掛けじゃなくて。
「うむ?」
誰かと仲良くなりたいなとか、上手くやれそうだなって思うのって、相手に親しみを感じた時だと思うわけよ。
「ふむ」
どこに親しみを感じるかは人によって様々ではあるけど、基本は笑顔だと思うの。
「ふむ」
威嚇するような険しい顔してる人より、にこにこ笑ってる人の方が親しみやすそうでしょ?
「だが常に笑顔でいる奴ほど裏でエゲツナイ事をしているものだ。信用できん」
いや、うん。それは確かにそうかもなんだけど、そうじゃなくて。
ルー君には少々笑顔が足りないんじゃないかなって話なんだけども。
「うむ?」
いつも笑ってろって言うんじゃないの。
たまにね、こう、ちらっと出せないかな?
いつも無表情な人がたまに見せる笑顔って、ものすごーい威力あるから。一瞬でもってかれるから。
「うむ……」
ちょっと笑ってみ?
「こうか?」
えっと、その『見る者に死を覚悟させる冷酷な笑み』的なのは何かな?
ちょっと背筋凍りかけたんだけど。
「普通に笑ったつもりだが」
こう、もう少し目元を柔らかくできないかな?
あと、口角の上がりかたが左側に偏っちゃってるから、右側意識して上げてみて。
「こうか?」
うっ、こんどは『何か良からぬ事を企む邪悪な笑み』に……
いっそ口あけて笑ってみる、とか?
「どうだ?」
うああ『破壊を愉しむ魔王の笑み』……!
ごめん、さっきのなし。笑顔とかなくてもなんとかなるよね!
「そうか……」
…………。
「…………」
そろそろお茶の時間だし、クッキーでも焼いてくるわ。
あ、一緒に行く?
「行く」
ん、じゃあ先行って用意しておくから、変装してきて。
「うむ」