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ルー君、ちょっとソコ座んなさい。
「何故だ」
いいから正座!
「む……」
よし。
あのね?
信憑性を持たせるために、仲良しアピールが必要なのは分かるの。
「うむ」
私もね、一応その辺は理解した上で引き受けたわけだけれども。
「うむ」
額にチューとか! やり過ぎだバカー!
「む……すまん」
鳥肌立ったじゃないかもーバカバカ!
「すまん。周りの反応が面白過ぎて、つい悪ノリした」
そのすぐ悪ノリするクセ直しなさいって言ってるでしょ!
毎回それで失敗してんだから!
「うむ、すまん」
この前だって、西国からの使者を無暗に脅して!
めっちゃ涙目だったよあの人! 可哀そう!
「いや、此方の一挙一動に面白い程ビクビクするものだからな……つい悪戯心がこう……な?」
抑えなさい。そういうところが誤解を加速させてるんだからね!
「む……」
だいたい、ルー君はもともとの顔の作りがアレな上にその微動だにしない表情筋がさらにアレで、その上なんとも堅苦しい言葉づかいと重低音な声が妙に重々しくてアレなんだから!
「うむ」
私とかはね、ルー君が実は単なるお茶目さんだって知ってるから大丈夫だけど。
その迫力あるというかぶっちゃけ恐い外見プラス立派な身分と肩書が発する威圧感のせいで、冗談もシャレも全部本気にされちゃうんだって自覚しなさい!
「すまん。以後気をつける」
…………。
「とりあえず、もう少し高い声が出せるように訓練してみようと思う」
気にするところはソコじゃなーーい!
その外見で声だけ高かったたら逆に恐いわこのバカ!
「む、そうか。では口調をもっと可愛らしく……」
却下! 絶対似合わないから却下です。
「……難しいな」
あ―もー。いっそ見捨てて逃げたい……
「……見捨てる……のか?」
っ、見捨てないよばか!
見捨てるならもっと早く見捨ててるし!
見捨てらんないから困ってるんだし!
ていうか、無表情のくせに雰囲気だけショボーンとか!
時々無駄に器用だよねルー君て!
「すまんな……だが、ミーが戻って来てくれて嬉しい。ありがとう」
そういうところが……あーもう、いいよ、分かってるよルー君は別に悪くないって!
というか協力するって決めたのは私の意思だし!
それに、ルー君が本当は恐くなんてないって事、知ってもらいたいしね!
「む……う……どうせなら、もう少し優しく撫でてくれないか」
るっさい。そういうのは恋人にでもしてもらえ!
「それが可能だったら、わざわざお前を呼び戻していないが」
……そうだね。ごめん。
「いや……」
…………。
「…………」
マフィンでも食べる? 暇だったから焼いてみたんだけど。
「食う」
じゃあ持ってくるからお茶入れといてー。
「うむ」