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file .2 I can't stop loving you

登場人物



ジェイファースト インスペイダー(23)

インスペイダー探偵事務所の所長 戦闘のエキスパート


ガブリエル ハスクバーナ(28)

捜査1課の刑事


メアリー ワシントン(26)

捜査1課の刑事


ボビー(66)

喫茶店のオーナー 情報通

 黄昏の街、スターダスト シティに朝がきた。

 スターライト シティ42番街 3-20-6 ジェームスビル4F インスペイダー探偵事務所の所長、ジェイファースト インスペイダーはコーヒーメーカーでコーヒーを淹れていた。

 この街で探偵を初めて一週間、仕事はまだ来ない。

 そのかわり、お節介な警察官はやって来る。

「おう!ジェイ起きてるか!」

 騒々しくやって来たのはガブリエル ハスクバーナ。

 スターライト シティ署の刑事で、捜査1課の捜査員だ。

「おはようジェイ!ところでメアリーは来てないか?」

 ジェイはしかめっ面でキッチンを指差した。

 事務所のフロアの奥のキッチンを見ると、メアリー ワシントンがいた。

 捜査1課の捜査員でガブリエルの同僚だ。その彼女はキッチンで何やら作っている。

「おはようメアリー、何やってんだ?」

「あらガブ、おはよう!見ての通り料理よ!」

「いや、それは分かるが……」

 メアリーは楽しそうに何やら作っている。

「ほらあのコ、放っておくとろくな物を食べないんじゃないかと思ってね!」

 よく言えば親切で面倒見のいい、悪く言えばお節介な性格のメアリーは暇さえあればこうして飯を作りに来ているそうだ。

「まるで押し掛け女房……いや母親か?」

「あはは!そうかも!」

 メアリーは笑った。

 フロアに戻ったガブリエルは、ジェイからコーヒーをもらった。

 ジェイが小声で言った。

「おい、あの女、どうにかしろ。」

「そう言われてもなあ……このコーヒー随分苦いな……」

「ドブ川の水よりマシだ……そんな事よりあの女をさっさと連れて帰れ。」

「何か言った~!」

 キッチンの奥からメアリーの声が聞こえた。

「さて、ごはんできたからちゃんと食べてね!ほらガブ!行くわよ!」

「おい、ちょっと待て……」

「この後、会議があるわよ!忘れてた?」

「忘れてた……」

「もう!世話が焼けるわね~!」

 バタバタと慌ただしく出ていくガブリエルとメアリー。

その様子を見て、ジェイは呟く。

「あいつ……尻に敷かれるな……」

 カップを片付けていると、何やら気配がする。

 ジェイは扉を開けた。

 女が立っていた。

 長いブロンドの髪に、黒く長いコート、そこからすらりと伸びた長い脚、そして色気と愛くるしさを兼ね備えた美しい顔立ち。

 一流のグラビアアイドルとしても通用する美女がそこにいた。

「客?」

 ジェイは中に入るよう促した。

 女は緊張した様子だ。どこか落ち着かない。

「今、お茶を淹れます。そこにお掛けください。」

 探偵に必要な事、まずは依頼者をリラックスさせ、話をしやすくする事だ。リラックスして話が進めば仕事も進む。

 お茶を淹れている間、女はキョロキョロと周りを見回している。探偵事務所が珍しいのだろうか、やはり落ち着きがない。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

 女は微笑んだ。

「古いビルなのに、中はキレイですね。」

「ええ、最近内装を新しくしました。」

「それにしても、お若い所長さんで驚きました。」

「先週事務所を立ち上げました。それまで地球にいました。」

「地球に?」

 そんな他愛ない話から始まり、世間話に移ると女は次第に饒舌になって話し続けた。

「あたし、ここで雑誌のモデルをやってて、そこのメイクやってるマリアさんと仲良くなって、あとディーンさん、あ、ディーンさんっていうのがプロデュースする人で……」

 ジェイはあまり話は得意ではない。しかし女のペースに合わせて話に付き合った。

 ジェイは戦場で忍耐を学んだ。それが今、役に立っている。

 それでもそろそろ疲れてきたので、ジェイは話を切り出した。

「そろそろ、ここに来た訳をお話していただけますか?」

「あらやだ、私ったらつい……」

「ご用件を、お伺いいたします。」

「ご用件……」

 女は急に口ごもった。

「人探し、ですか?」

「えっ……あ、はい。人探しです。」

「男性ですか?それとも……」

「あっ、男性です。」

「どういう人ですか?」

「えっと……年齢は23、身長は170センチ……」

「それから?」

「やせ形でダークブラウンの髪、細く真っ直ぐの眉、碧色の瞳、細く少し丸みのある鼻、小さく引き締められた口……」

「……」

 女は悪戯っぽく笑顔で話した。

「名前は……ジェイファースト。」



「ふう……」

 ジェイは再び事務所のフロアに戻った。

 まるで1ヶ月分しゃべったように疲れた。

 戦場で忍耐を学んだが、それにも限界がある事をジェイは学んだ。

 怪しい女はもういない。ジェイが追い払ったからだ。

 こんな事は珍しくない。ジェイがここ『スターダスト シティ』に来る前、地球にいた頃から色々な女が迫って来た。

 年齢も職業も問わず、色々な女が声をかけ、接近してきた。時には男もいた。そういう連中の行動は非合理的で非論理的でジェイには理解不能だった。その度にジェイは拒絶、排除を繰り返したが、ここスターダスト シティでも同じ事が繰り返されるかと思うとウンザリした。

 あの女も、非合理的で非論理的で理解不能な連中と同じに見えた。

 ジェイは気分を変えようと外に出る事にした。

 黒い中折帽を目深に被り、顔が見えないようにし、コートを掛けて出た。

 ちょうど斜め向かいに喫茶店らしい店がある。ジェイはそこに入った。

 『ミルキーウェイ』と描かれた看板。中は結構狭い。

「いらっしゃいませ!おや?見ない顔だね。」

 マスターのボビーは2メートルぐらいある。

 店を狭くしている原因のひとつだ。

 ジェイは向かいのビルで探偵を始めた事を説明した。

 地域の情報源は必要だ。

 ジェイは色々とボビーに訊いた。

 あまり饒舌ではないジェイをボビーは信用したようだ。

「ここのゴロツキには充分注意した方がいい。特に探偵は狙われやすいからね。」

 ボビーは他に、地下組織が東西に分かれ対立しているとか、最近の事件を話してくれた。

 ボビーはかつて新聞社で長年記者を勤めていたが、60を機に退職し喫茶店を営むようになったと言った。今年で七年目になるが、警察も把握してない裏社会の情報が今でも入ってくると話してくれた。

 そして何より気に入ったのは、コーヒーが美味いという事だ。

 本物のアラビカ種を使ったコーヒーは、ジェイが飲んでいる代用品より遥かに上質でよい薫りがした。

「またおいで、名探偵。」「名探偵はやめてくれ。」

 ジェイは店を後にした。



 ジェイは途中、洋品店で白いストールを買い、顔を隠して街を歩いた。

 春の訪れはまだ先のようだ。風が冷たい。

 繁華街の裏通りから細い路地裏でジェイは足を停めた。そして振り返った。

「まだ何か用か?」ジェイは女に尋ねた。

 先ほどの女がいた。

「あら?わかっちゃった?流石ね!」

 ジェイは尾行されないよう細心の注意を払ったが、いつの間にか付いてきた女に怪訝な顔をした。

 どうやら只の女ではなさそうだ。

「何者だ?」

「うふっ、やっと興味が出てきたようね!」

 そう言って女は胸元から名刺を差し出した。

 角が丸い淡いピンクの女性らしい名刺に、甘いコロンの匂いがした。

「……K?」

 名刺には大きく『K』と書かれている。

 他には何も書いてない。

「会いたかったわ、ジェイ。」

「俺はお前なんか知らない。」

「そう?あたしはジェイをよく知っているわ!」

 そう言うと『K』は近づいてきた。

 ジェイは警戒した。こいつの正体が読めない。そして何を考えているのか解らない。

 『K』は話した。

「たとえば……ジェイがあの『ガルティス クルセイダース』にいたとか……」

「なぜそれを!」

 予想外の言葉にジェイは動揺した。その動揺したジェイの隙をついて『K』は素早く駆け寄り、ジェイに抱きついた。

「なっ……」

 Kはジェイの唇に、自分の唇を押し付けた。ジェイの舌にKの舌が絡みつく。

 慌ててジェイはKを突き放した。

「何のつもりだ!」

「うふっ、ごちそうさま!」

 Kは悪戯っぽく笑った。

「そんな事より、なせ『ガルティス クルセイダース』を知っている?」

 『神聖ガルティス王国』は地球連邦政府に宣戦布告し、長年戦争をしてきた国だ。

 『ガルティス クルセイダース』はその国防軍であるが、実質的には王国を掌握していたらしく、その名を知る者はごく一部だ。そしてジェイがそこにいた事は連邦軍でも極秘事項であり、知る者は僅かだ。ジェイが驚くのも無理はなかった。

「あら?それよりお客さんみたい……」

 見ると前から三人、後ろから三人、ゴロツキ風の六人の若い男が取り囲むように近づいてきた。

「あんたが新入りの探偵か?」

 男の一人が言った。

「単刀直入に言う、俺たちの仲間になれ!」

「断る。」

「ほお……だったら消えてもらう!」

 ジェイは素早く拳銃を取り出し、一発撃った。

 その行動の速さに男たちは動揺した。その隙にジェイとKは後ろからの男たちを牽制し突破した。

「まてぇ~!」

 ジェイは思わずKの腕を取り走った。そして男たちに向かってもう一発撃った。

 弾はあえて外した。

 こんなところで血を流す訳にはいかない。ジェイはひたすら走った。

 しかしまだ土地勘がないジェイは、連中の追跡から逃れるのは難しかった。先回りされてまた囲まれた。

「大したもんだよアンタ……もう一度聞く、俺たちの仲間になれ!」

 今度ばかりは連中も警戒して銃を向けている。

「もう一度言う、断る。」

「そうか、残念だよ……おい女、お前はこっちに来い!」

「嫌よ、あたしはジェイと一緒にいるわ!」

 そう言うとKはジェイに秘かにある物を手渡した。

「こいつは……」

「うふっ、お手並み拝見~!」

 ジェイは連中に向かっていきなり「マシンガン」をぶっ放した。

 弾は当たらなかったが、予測しない出来事に連中はパニックになり、戦意喪失して逃げ出した。

 この騒ぎに乗じてジェイたちも退散した。



「こいつは返す。」

 Kが渡したマシンガンをジェイは返した。

「大体わかった……」

「何が?」

「お前、人間じゃないな……おそらく『ガルティス クルセイダース』が作った軍用ロボットだ。」

「どうしてそう思うの?」

 ジェイは語った。

 甘ったるいコロンの匂いでごまかしているが、先ほどジェイにキスした時、人間の匂いがしなかった事。何もないところからいきなりマシンガンが出てきた事。そして渡されたマシンガンがガルティス製である事。

 人間の姿に偽装された武器の集合体であると、ジェイは指摘した。

「流石ね、あたしはガルティス クルセイダースが作った汎用戦闘システム、正式名称は『K-6700』」

「ひとつだけ分からない事がある、なぜ俺に近づいた?」

「それはねえ……ジェイが気に入ったから!」

「?」

「あたしのデータベースに、あなたの記録があったの。あなたは極めて高い戦闘力を持っている。あたしを上手く使いこなせるのは、あなたしかいないと確信した。そのためずっとあなたを探していたの。」

「それでか……」

「でもそんなのどうでもいいの!あたしはジェイ、あなたに惚れちゃったの!もう離さない!」

「はあ?」

「逃げてもムダよ!さっきキスした時、あなたの遺伝子データを採取したから!」

「なんてこった……」

「ジェイ!好きよ……」

 殺戮破壊兵器の愛の告白に、ジェイは頭を抱えた。



「おはようジェイ!」

 今朝もメアリーはジェイの事務所にやって来た。

「あ~!おはよ~!」

「………………だれ?」

 予想に反してとびきりの美人の出迎えにメアリーは驚いた。そして眉をしかめた。

「ジェイ……また随分キレイなお嬢さんを連れ込んだわね……」

 メアリーは笑顔だが、手にしたじゃがいもにヒビが入った。

「おはようジェイ!おや?メアリーもいたか……って、だれだ?」

 ガブリエルもやって来た。そして見知らぬ美女の存在に気づき、驚いた。

「これって、ヤバい展開か?」

「そんなんじゃない……」

 ジェイはしかめっ面で答えた。

 まるで1週間寝てないような疲れきった顔だ。

 昨日、Kから何とか逃げ回るため、あらゆる手段を尽くしたが失敗し、結局事務所に居着いてしまった。

「初めまして!あたしこの度ジェイの愛人……」ぱこーん!「助手になりました!よろしくお願いしま~す!」

 思いっきりジェイに重たい灰皿を頭に投げつけられても微動だにせず、笑顔を崩さない女に、ふたりは驚いた。

「もしかして……ロボット?」

「おいジェイ、一体どうしたんだ?」

「話せば長くなる……」

「ロボットの、押し掛け助手?」

「お前相変わらず女難の相が出てるなあ……」

 困惑する人間たちを前に、ロボットはニッコリ笑った。

「名前は『ケイ』です!よろしくお願いしま~す!うふっ!」



To be continueー

 スターダスト コネクション第2話です!

 新キャラのケイです!

 お気楽極楽なキャラで、私もお気に入りです!

 ハードボイルドなジェイを引っかき回す重要な役割でして、本作品のスパイスとして欠かせないキャラです!


 さて、今回はガブリエルについて語らせていただきます。

 ジェイの最大の理解者で、なかなか世間に馴染まないジェイをフォローするガブリエルは、なくてはならないキャラです。

 このガブリエルなしではジェイの活躍はあり得ません。

 なのにこの扱いの粗雑さ……

 それでも笑って許してしまう懐の大きさは何なんでしょう?

 ガブえらい!

 今後もガブの活躍を見守ってください!

 ではまた!

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