6/24
彼女の死、あるいは物語のはじまり6
眼前の遠方。
闇夜が嘘とも思えるほど光を放つものがある。
純白と呼ぶのがふさわしいほど、光り輝く美しい扉だ。
驚愕に見開かれるミコトの横顔を満足そうに眺めやりながら、フィヌ・フィリーがその華奢な肩にそっと触れる。
「さあ」
促されるまま、ミコトの体がわずかに動いた。
フィヌ・フィリーは満面の笑顔をまるで仮面のように張り付けた。
ミコトは唇をかみしめ、右眼を手のひらで覆った。
俯くミコトにフィヌ・フィリーはさらに優しい甘露のような言葉をかける。
「大丈夫だよ。痛みも、悲しみも、あそこにたどり着けば何もなくなる。約束されていた自由と幸せと、欲しいものがすべて手に入るんだから」
「ぐ――――」
「さあ、倉科ミコト。キミの行くべき場所だ」
送り出す時の決まり文句を口にして、フィヌ・フィリーはそっとミコトの傍らから離れようとした。
ところに、
「グダグダ言ってんじゃないわよ! このスットコドッコイ!!」
「ゲフッ!! ――――い!?」
猛烈な足蹴りが腹部に刺さった。