表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

彼女の死、あるいは物語のはじまり3




「そうね」


 朽ち果てた部屋の中に二人の人間が存在していた。


 戸板が内から打ち付けられた窓から、朝とも昼とも知れない陽光が部屋の中に差し込んでいた。


 光の紗幕の中で舞い上がる小さな粒子はどうやら、埃のようだった。


 壁紙ははがれて落ち、天井や壁にはいたるところに亀裂がある。灰色に薄汚れた壁にはスプレー缶で何やらよくわからない文字やイラストのようなものが描かれていた。


 数日、数か月でこうした惨状になっているのではない、と彼女は知っていた。


「結局時間っていうのはさ、人間の中にのみ存在する概念だからね。それより、キミって本当もの好きだよね。自分の死の瞬間を呼び戻すなんてさ。ねぇ、ミコト?」


 いたずらっぽく黒服の青年は笑った。


 さしたる感傷も、さしたる感情もなく。


 彼はただ、にこやかな笑みをたたえたまま傍らの頭一つ分小さな人物に声をかけたのだ。


「―――で、どうだったのよ」


 そんなことより、と彼女は彼に切り出した。


 壁際からようやく背中を離せば、そこにかつての惨劇の証は何一つとない。


 打ち抜かれた壁の柱と、向こう側の廃墟の様相が垣間見えるだけだ。


「フィヌ・フィリー。あなたが私を見出すまでに費やした時間に見合う対価を、私に見せてちょうだい」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ