その男、怠け者
現実は小説より奇なりという言葉があった。俺は今までこの言葉を信じてはいなかった。何故かって?そんなの、小説の中の世界方がいろんなハプニングや心躍る冒険、ラブイベントがあるに決まってるからだ。漫画然り映画然り、想像物は人間の思いが形を成したものであるからして、現実に起こりえないような出来事が次々に起こるのである。だから、俺は現実より小説のほうが奇なり、という言葉を広めたかった。そう、この瞬間までは・・・。
「おぉい、ここどこー・・・?」
力なくつぶやいた言葉は誰に届くでもなく、精々近くで湧水を飲んでいるウサギが驚いて逃げ出したくらいだった。
なんと、自室でパソコンの前に座りゲームをしていた大学生は、いつのまにか自然豊かな森の中に立っていたのだった。
おいおい、誰だのそんな不幸な奴。・・・あ、俺か。
「勘弁してくれよ。明日はレポート提出期限なんだぜ」
だったらゲームより先にレポートしろってか?そんなの嫌だね。レポートなんてのは、深夜から朝にかけて突貫でやるもんって決まってんだろ。そうだろ?
でもこの状況ではどうやってもレポートなんて作れそうになかった。この時初めて、俺は神様に心からお願いをした。
「神様ー!俺の代わりにレポートを出しておいてくれぇぇぇ・・・」
どこかでふざけるなと誰かが叫んだ気がした。