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若の葉❤浪漫譚 第四章 タツノオトシゴと彦之進

 さて、サネヒコは、福衛門の護衛に行っていて、彦之進の身にも安全な日々が訪れた。

 だが、・・・・・!!?

 腹黒い商人、福衛門の護衛をずっとしていたせいか、二週間ほどは、サネヒコからの変態的とも思えるアプローチはなかった。

 その間、彦之進の男性としての平穏は続いていた。相変わらず女子には全くもてず、男子に言い寄られることばかりであったが。

 女子の噂話によると、彦之進と異性的な事、例えばキス等をしようとすると、自分がまるでレズビアンになってしまったかのような錯覚に陥るのだという。だから、女性は彦之進となかなか恋仲には発展しないのだそうだ。

 だが、そのような事はいつものことで、彦之進は男性としての一人Hを久々に満喫できたし、何より非日常的な事が無く、平穏に過ごせたのだ。

 

 とにもかくにも、少なくとも、サネヒコからの変態的なアプローチは皆無だったので、その間、彦之進はのんびりと過ごす事ができ、また、用心棒の仕事にも専念することができた。


 だが、・・・・・だが、である・・・・・。

 二週間ちょっと過ぎたまさにその時、「それ」は、起こったのだ。

 その日、彦之進が用事で外出しようとすると、何と自分の住んでいる屋敷の門の左側に大きな狸の置物があったのだ。

 しかも、その狸の〇〇玉は非常に大きく、また、その部分が何と金色に塗られていた。

 「・・・・・!!!」

その狸の置物を見るやいなや、彦之進の背筋に冷たいものが走ったのを感じたのである。と、その途端、

 「いやぁ、ヒコノぉぉ~~❤、やっと会えたねぇ~❤、その狸の置物は、私のお土産さっ❤いとしいヒコノよ❤」

そのどデカイ狸の置物の後ろ側から、あの、ど変態サネヒコが出てきたのだ。

 さらにサネヒコは、ふろしきで包んだ何かを持っているのだった。そのふろしきをほどくと、何やら小さな箱が現れ、サネヒコがその蓋を開くと、どうやら何かの煮物のようであった。

 「これはね、タツノオトシゴの佃煮なんだよ、ヒコノ❤、旅先で珍しい物が売っているからって、買ってきたのさ。

 そいでね、そこで聞いた話なんだけど、タツノオトシゴってのは、オスが子供を産むんだよね!」

そこで、彦之進の体全体をなめまわすようにサネヒコが見たのだ。

 「これを食べたら、もしかしたら、ヒコノ、君も妊娠できるかもしれないよ。男は子供を産めない哀れな生き物だから、これからの時代、男でも子供を産めるようになったらいいなって思って買ってきたんだ。なあ、ヒコノ、嬉しいだろ~!?」

そう嬉しそうに、ニコニコ顔で言うサネヒコに、彦之進は、自分がサネヒコの子を妊娠するという、あの忌まわしい夢を思い出したのだ。

 タツノオトシゴのオスには悪気は全く無いのであるが、このサネヒコの持っているタツノオトシゴの佃煮を食べたら本当に彦之進自身がサネヒコの子を身ごもってしまいそうに思えたので、彦之進は、言った。

 「い・・・・・いい、・・・・・!!狸の置物はもらっておいても良いが、このタツノオトシゴの佃煮は、いらぬ!わ・・・わしは、佃煮というものが特に大嫌いでな。だから、悪いがサネヒコ、お前がその佃煮を食ってくれ!!」

そう言う彦之進に、サネヒコは残念そうな表情で言ったのだ。

 「・・・そうか、嫌いであったのか。それは残念だな。ならば、これはどうだ!?」

そう言うと、サネヒコは、今度は懐から、魚のタイ程の大きさのあるタツノオトシゴのオスの燻製を出したのだ。しかも、このタツノオトシゴのオス、身ごもっているようである。

 「んじゃあ、ヒコノ❤このタツノオトシゴの燻製はどうだ?酒のおつまみにでもさっ❤」

 「サネヒコっ!何でそもそも、タツノオトシゴの、それもオスばかりなんだよっ!!」

彦之進は、予想だにしていなかった妙な展開に、思わず大きな声で言ったのだ。するとサネヒコは言った。

 「だぁってぇ~、福衛門さんの出かけた先が、タツノオトシゴが取れる事で有名な場所だったんだもぉ~ん❤」

 「だからって、なぜ、妊娠したオスの燻製をわざわざ、わしに差し出す!!?」

そう言うと、サネヒコはポッ♡と頬を赤くして言ったのだ。

 「これはだね、ヒコノ!つまりこうしたタツノオトシゴを食べる事により、男でも妊娠可能となるんじゃないかと思ってさ❤」

そのサネヒコの言葉に、彦之進はうんざりしたような口調でいったのだ。

 「そんなん、食ったからといって男が妊娠するはずなかろう。元々、男というものは、女性とHをして、そして女性の中で子が育つことになっている。男にはその機能は無い。よって、男は妊娠はできぬ!それが当り前であろうがっ!!

 ・・・まあ、世の中には様々な変態という生き物がおるので、そうした者は、男でも妊娠可能なのかもしれぬがな・・・・・!!」

そうして、彦之進はサネヒコの方を睨みつけた。

 だが、それでめげるサネヒコではなかった。

 サネヒコは頬を赤くしながら言った。

 「ヒコノ❤、私に、君の子を産ませようというのかね?それ程に私の事を愛してるんだね❤

 んじゃあ、ベーゼからね❤」

そう言い、キスをしようとしてくるサネヒコを上手によけながら、彦之進は言った。

 「お前にこのような話題を言ったわしが間違っていた・・・・・・・!!」

そう言った途端、彦之進の両足は、出せる限りのスピードで動き始めたのである。

 彦之進は再び訪れた非平凡な日常から逃げようと、必死になり、両足を動かしたのだ。

 「待ってよぉ~ひこのし~ん❤」

追いかけてくるサネヒコの声を振り払わんと、必死の想いで彦之進は逃げた。

 サネヒコは男であっても、変態なので、子供を妊娠できそうである。だが、わしは、何があっても、男とラブラブな関係になるなんて、うんざりだっ!!!

 そう強く念じながら逃げたせいか、はたまた運が良かったからなのか、その日は、サネヒコから何とか逃げる事ができたのであった。


 それからしょっちゅう、サネヒコは彦之進の前に現れた。

 福衛門の件で懲りたせいか、さすがに仕事中に出現する事はなかったのだが、彦之進が歩いていると、様々な場所にサネヒコという変体は出現したのである。


 ある時、彦之進は自分の屋敷の縁側に一人座り、青空の中、雲が流れてゆく様を見つめていた。

 「・・・・・ああ、あの雲のように、ゆったりと人生が流れて行けば良いのに、人生が流れてゆくそのスピードは、かなり速い・・・・・。

 子供の頃は、遊んでいられて、良かったのに、あっという間に大人になり、そして時というものは、無慈悲にも、流れてゆく・・・・・。

 もっとこう、空の雲が流れるように、ゆっくりと流れてゆけば良いのに、一日一日がとても速いものであるな・・・・・。」

その日、彦之進は一人、空を見て感傷に浸っていた。

 彼はしばらくの間、無言でその青空の、旅人のように渡りゆく雲を眺めていたのであるが、ある物が目に入った途端、彦之進の「時」は、一瞬止まってしまった。

 何とサネヒコの顔そっくりな雲が突如として現れ出たのである。

 彦之進がびっくりして、そのサネヒコの雲を見つめていると、そのサネヒコの顔の形をした雲の目が彦之進を見つめ、そしてパッチリ!!とまばたきしたのだ。

 と、その途端、その不気味なサネヒコの顔をした雲が段々彦之進の所まで近づき、

 「ああっ!雲にぶつかるっ!!」

そう彦之進が叫んだ途端、そのサネヒコの雲は、サネヒコそのものとなったのだ。

 「何でお前、空から来たんだっ!!?」

驚いてそう言う彦之進にサネヒコは何でもない事のように言った。

 「しばらく、雲になって、空を彷徨っていたんだ。」

そう言うサネヒコに、彦之進は、雲にさえ変身できてしまう、その変態ぶりに驚いた。

 サネヒコはさらに嬉しそうな口調で言ったのだ。

 「昨夜な、幽体離脱して、この星ではない、別の星へ行ったんだ!!そこの星の連中は、何と皆両性具有で、男のように見える輩でも子供を産む事ができるんだっ!!

 なぁっ!面白いだろ!?今度私がお前をその面白い星へ連れて行ってやるからなっ!!」

そうウキウキした口調で言うサネヒコに彦之進は言った。

 「・・・・・どうやって・・・!!?」

機嫌悪そうに言うヒコノに、サネヒコは得意げに言ったのだ。

 「黒魔術を使う西洋の国から入ってきた魔術結社の魔術師と友達になったんだが、その魔術師は、魂を人の身体から抜くのが得意なんだってさ!だから、その魔術師さんに頼んでヒコノ、お前を魂だけの存在にしてもらって、そして私は一人で幽体離脱ができるから、そうして二人幽体離脱できれば、私がお前をその面白い星まで連れて行ってやるんだが、いかがかなっ!!?」

 「お・・・お前は、わしを、そうして殺す気かっ!!?その黒魔術って、呪って人を殺す技法だろーがっ!!!」

半分呆れ、半分怒りながらそう言う彦之進に、サネヒコはマジな表情をして、こう言ったのだ。

 「・・・まあ、そうなるよな・・・・・。私は完全に幽体離脱の方法を理解し、実行できるが、ヒコノ、お前は、悪魔に魂を抜いてもらうわけだから、・・・・・やはり、死ぬ、ということだな。

 だがな、死など、気にする事がなくなるくらい、宇宙は面白いのであるのだぞっ!!」

 「マジ、俺を殺す気なんか~~~!!!」

彦之進の顔がマジで怖い表情になった時、この変態であるサネヒコも、ようやく、ここになって気が付いたようである。

 「悪かった、ヒコノ!お礼に、これから私が良いお店へ連れて行ってごちそうしてやろうではないかっ!!」

そうして、サネヒコは彦之進の手を取ろうとしたのだが、彦之進はうまくすり抜け、黙ってダッシュして、逃げ出していった。


 こうしたように、変態サネヒコは、いつもいつも彦之進の前に、思わぬ形で現れ出てくるのであった。




 

 何と変態のサネヒコは、宇宙の別の星にまで行ってしまったのである。

 サネヒコは、何としてでも彦之進に子を身ごもらせてみたいと思っているのか!?

 彼の思惑は、分からない。果たしてサネヒコは、彦之進に種付けできるのであろうかっ!!?

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