若の葉❤浪漫譚 第二章 満月の月夜の晩に・・・えへっ❤
さて、いよいよ彦之進が運命の男❤との出会いをしてしまいます。
この後、一体どうなってしまうのでしょうか!!?
それは、まるで黒猫がオオカミにでも変わってしまいそうな、そんな不気味さを含んだ満月の晩の事である。
彦之進は一人闇夜の道を行き、頻繁に足を運ぶ神社の境内へと向かっていた。
満月の月夜の青白い輝きに照らされた彦之進の女性そのもののような美しい顔立ちは、とても美しく、まるで月の女神そのもののようであった。
風はそれほど強くはなかったが、ほんのりと夜の匂いを含んだ、少しだけしめった風が彦之進の袴をゆらしていた。
まるで女子高生のあのスカートみたいに、彦之進の袴のすそが、風に吹かれ、ゆらゆらと揺れ動いていたのだ。
彦之進はいつも行く神社の境内につくと、木刀を振りかざし、剣の稽古をやりはじめた。
丁度神社の建物のすぐ下で、である。
・・・自分は、女顔をしているゆえに、男に寝込みを襲われる、自分は女顔で背が低いから、男からキスされそうになり、幾度となく、ヤローに唇を奪われそうになる、自分は女顔ゆえに、男からしか告白された事はない、自分は女顔なゆえに、弱く見られてしまう、自分は女顔をしているがゆえに、まだ女性の独特の、そのかぐわしき香りを知らぬ、自分は女顔をしているがゆえに、まだ、女性と契りを交わした事がない、・・・・・友人の比夢呂のヤローは、同い年で、数々の女性の、その柔らかな身体を抱いている、というのに・・・・・・・!!!
様々な、自分の容姿にまつわる不満が、その木刀に込められていた。彦之進は、必死の想いで、そのマイナス想念を振り払うように、ただただ、ひたすら、重い木刀を振り続けていたのだ。
・・・・・わしだって、れっきとした、男!女を抱けるようになるためには、その香りを手に入れるためになるには、この東東国一の剣豪になること、それしかり!!!
その一心で彦之進は木刀を振っていたのである。
この深夜の静けさの中での彦之進の稽古が、日々の日課となっているのだ。
この重い木刀を振り回した後に、彦之進は真剣を振りかざし、竹林の中で、ひたすら稽古をする、その繰り返しだった。
彦之進は、今の自分が好きではなかった。女顔であるために、女性にはレズだと思われ、また男性には寝込みを襲われ、また、とある既婚の女性には、浮気をしている、その浮気相手の女性だと間違われ、タカの糞をぶつけられる、この悔しさ・・・・・。
彦之進は、日々、そうした強い劣等感と一人っきりで戦っていたのである。
その日は風が少しだけ強く、肌寒い夜だった。
彦之進が、いつものように木刀を振りかざしていると、
”ドサッ!!”
と、上から、何かが落ちてきたのである。
それは、彦之進の真上にまっさかさまに落ち、彦之進を直撃した。それは、彦之進よりも一回り程大きな物体だったのだ。
彦之進の小さな体は、それにぶつかった。そのぶつかったショックで頭がショートし、彼は気絶してしまったのである。
「それ」は、あの沢山の女気味に囲まれていた、色男にして、何と、彦之進の運命の?「あの」お相手だったのだ!!!男はだいたい18歳程であろうか。
男は、気絶している彦之進の顔を見るなり、ポッ!と、赤ら顔になった。明らかに男は、彦之進のその美しい顔立ちに惚れ込んだようだったのだ。他の男が、彦之進に惚れ込んでしまうように。
男は言った。
「神社の屋根の上で眠っていて、落ちてしまった。そこに、このような美形の者がおったとはな。私にも運が向いてきたぞ!!」
男は彦之進の美しい表情を見ながら、うっとりとして、そう言ったのだ。
やはり、この男性も、彦之進を女と見ているらしかった。他の不特定多数の男性が、そうしているように。
男がそう言った瞬間、まるで魔法でもかかったかのように、サラリと彦之進の髪をゆっていた紐がほどけたのだ。髪をおろした彦之進は、美しいお姫様そのもののようだった。
「フフフフフ・・・!神様、美しくて麗しい宝物を、本当にあ・りが・とぉ~❤❤❤フフフフフフッ!!」
そこの場所に不気味な笑い声をばらまくと、その男性は、彦之進を抱き上げ、そして、ゆっくりと歩きだしたのだ。
その男性の男らしい容貌も、とても美しいものだった。満月の光を浴び、その男の怪しい程に美しい外見が、さらに美しく、妖艶な青に輝いていた。
男は気絶している美しい彦之進を抱き上げると、その場をゆっくりと離れ始めた。砂漠の中を彷徨う薬に手を出した者が、やっとの想いで再び麻薬を見つけたかのように、嬉しそうで、少しだけ不気味な表情をうかべながら。
やがて男は、自分の屋敷へと、華奢で美しい顔をした彦之進を抱き、入っていったのだ。
そうして帰ってみると、一人の少女がいたのである。
「カズちゃん、来ていたの?」
男が言うと、カズちゃんと呼ばれたその16歳程の少女は、大きくうなずき、それから、男が手にしている人を見て、目を大きく見開いた。
「まぁっ!綺麗な人ね、サネヒコ!どこで、そんな綺麗な女の子を拾ってきたの?」
カズと呼ばれたその少女が、好奇心の眼差しで彦之進を見つめながら言うと、サネヒコと呼ばれたその男は、何でもない事のように、さらりとこう答えたのだ。
「ああ、これか?これはな、上から降ってきたから、拾ってきたんだ。・・・・だからな、そのな・・・。つまり、これから・・・・・・。」
そうして赤ら顔で何かを言おうとしたサネヒコの心情を察し、女心渦巻くカズと呼ばれた少女が強く言ったのだ。
「ダメよ、サネヒコ!こんなに綺麗な子が、無防備なのに、手を出しては、・・・・・・!!!」
そう、強く言う女の子のカズに向かい、サネヒコは、赤ら顔で横を向きながら、言ったのだ。
「・・・・・いや、・・・・・その、私の股間がうずいて仕方がなくて、だな、・・・・・それでな・・・・・」
「ダメよ、サネヒコ!!こんなに無防備な女の子に手を出しては!もう、夜も遅いし、私が寝巻に着替えさせて、そして私も今夜は、あんたが手出しできないように泊まるから!」
「・・・・・そ、そんなぁ~・・・・・・!!オーマイゴッド!!!」
そこで、カズという少女の言葉に、サネヒコは大きくうなだれてみたのだが、カズのサネヒコを見る厳しい目つきは変わらない。
「だぁ~・めっ!!さあ、私がこの女の子を、寝巻に着替えさせるから、サネヒコ!あんたは、しばらく外に出ていて!!」
そして、何か言いたげで、不満げな表情のサネヒコを、カズは、無理やり外へ追いやったのだ。
「・・・・・・・・やれやれ、私がこの手で直接、あの者の着替えを、よだれでもたらしながらやろうと思っておったのに、カズちゃんが来ていたのは、・・・・・・・・わ、私にとっては、誤算であった。
・・・・・ああ、仕方がない、カズちゃんがあいつを着替えさせるまで、私は外をぶらぶらしていようとするか・・・・・。」
サネヒコは、一人残念そうに、屋敷のすぐ近くにある竹林の中に消えて行ったのであった。
不気味なほど妖艶な輝きを放つ満月が、竹林の竹一本一本を大切に抱擁するかのように、光を当てていた。
竹の一本一本に微妙な角度から薄明かりが当たり、まるで異次元世界にでも迷い込んでしまったかのような、静寂な竹林の中を、サネヒコは一人歩いていた。
そのような妖艶な光に照らされた竹の一本一本を眺めながら、サネヒコの心は複雑な炎を灯していた。
自分が折角美しいあの子を連れて、素敵なH❤をしようとしたら、屋敷にはカズちゃんが来ていたのだ。まるで、サネヒコがあの子を連れてくる事を、前もって彼女自身が予知していたかのように。
少しだけ、怒りにも似た感情が沸き起こり、静かな竹林の竹の鳴る音の中に、サネヒコの舌打ちする僅かな声がかき消されていった。
サネヒコが悶々とした気持ちで高鳴る股間の熱い感覚を押し殺しながらしばし、竹林の中、その象のように重くなった足を動かし、歩んでいると、・・・・・・・
「ぎゃぁ~~~~~~!!!!!!」
突然、カズと思しき女の悲鳴が聞こえてきたのだ。その悲鳴が聞こえてきた方角は、間違いなく、サネヒコの屋敷の方であったので、それは、カズの声で間違いはなかろう。
何が起こったのかと、サネヒコは、急ぎ足で自分の屋敷へ戻り、声のした部屋の方へと近づいていったのだ。
「カズちゃん、一体どうした!!?」
サネヒコが、カズがいると思われる部屋の襖を空けると、そこには、怨霊のように青ざめたカズが、腰を抜かした格好で、わなわなと振るえていたのだ。
「こ・・・この・・・お・・・女の子に、なんでお〇ん〇んが、ついているの!!?」
わなわなと、真っ青になりながら指差す方角を見ると、何と、素っ裸にされた彦之進が、そこに裸体をさらしていたのだ。
「・・・いやに、胸が無いと思って、でもまだまだ成長段階かと思ってて、・・・それで女の子なのに、ふんどしなんてものをつけているから、こ・・・腰巻に付け替えようとしたのだけど、・・・そ・・・そうしたら、女の子なのに、アレがくっついているんだもん・・・!!!」
そうした彦之進の裸体をサネヒコの、イグアナのようにネトネトとした視線が取り巻いた。
そうして、サネヒコはニッコリと不気味な笑みを浮かべ、静かに彦之進の側へ近づいていったのだ。
「いや、違うよ、カズちゃん。この子は、女の子なんじゃなくて、元々男の子なんだよ。・・・だからその、今夜はもう、カズちゃんは、帰りなよ。私が送って行くから。」
「・・・なんだか、頭、おかしくなりそう・・・・頭、クラクラしてきた、私、・・・帰るわ。」
そう言うカズちゃんを、サネヒコは、家まで送り届けた後、急ぎ足で屋敷まで帰ると、何と彦之進はもう着物を着た状態だったのだ。
彦之進が男性だと分かった後のサネヒコだったが、やはりその女性的な表情に強く心惹かれたようで、相変わらず、熱を帯びた表情をしながら、一人、死んだように眠っている彦之進を見つめているのだった。
・・・カズちゃんを送り届けた後、戻ったら彦之進が、何故、着物を着せられた状態になっていたのかは分からなかったが、とにかくサネヒコは、彦之進のその顔に釘づけになり、
・・・・・・そして、何と眠っている彦之進にキスをしてしまったのだ。
気絶したまま、深い眠りについている彦之進は、まさかあの男にキスされていようとはつゆも思わなかった。
彦之進を見つめるサネヒコの鼓動の動きが早くなり、そして股間がうずき、その衝動が抑えきれなくなったその時、とうとうサネヒコは、彦之進の着物の帯に手をかけたのだ。
「フフフフフッ!何て綺麗な寝顔で、そしてエロい心を掻き立てる表情をしているのだ。私は、・・・・私は、フフフフフフッ!!!」
サネヒコは寝ている彦之進の上に馬乗りになり、そして、帯をほどき始めた、まさに、その時!!
「コラ!お前、何やっとるんじゃぁ~~~~~~~!!!」
「!!!???」
低くてどすのきいた怒鳴り声がした方向を見てみると、そこには、怖い鬼のような形相をした、サネヒコの父親が仁王立ちで立っていたのだ。
「ち・・・父上・・・・・!!」
びっくりして飛び上がるサネヒコに、鬼のような形相をした、サネヒコの父親は言ったのだ。
「わしが家に戻ると、裸の男子が寝ていたから、服を着せておいたが、・・・お前、その男を裸にしていたのは、お前が襲おうとしていたのだな!!!」
「ち・・・違います、この男子はただ、私が散歩していましたら、その途中で上から落ちてきて気絶してしまったために、私めが拾いまして、そして、・・・服を着がえさせようと思っていただけなのです。」
その言葉に父親の顔が鬼の形相から、まるで浮気でも暴いたオカミサンのような表情になり、皮肉で冷たさを濃く含んだ笑みに変わったのだ。
「ほぉ~?キスまでして、その後の好意もおぬしはするつもりではなかったのではないか?」
その言葉に、またもや、サネヒコは、まるで、ねずみ花火を子ザルに与えたかのような驚きを見せたのだ。
「ち・・・父上、わ・・・私がキスするのを覗かれていたなんて、・・・父上こそ、はしたな・・」
「え~い、うるさい、うるさぁ~い!!!問答無用じゃぁ~~~!!!」
サネヒコの父君のその表情はさっきよりも怖い鬼顔になり、何と頭に二本、鬼の角まで生えだしてきたのだ。
「ひ・・・ひぃぃぃぃ~~~~~!!!」
そこで、鬼と化した父君様は、このサネヒコを縄でぐるぐる巻きにし、そして、近くにあるかなり臭いブタ小屋へ行き、天井から、縄でぐるぐる巻きにしたサネヒコをつるしたのだ。
しかも、丁度ブタたちが、首を上げるとすぐに届きそうな微妙な位置に。そのブタ小屋の強烈な臭いと、鼻を近づけてくるブタたちにサネヒコは、まるで芋虫のようにうごめいた。
「良いか!今夜のお前の寝場所はここだからなっ!!!エロエロのお前なんか、このブタ小屋で十分だっ!!」
そう言ってわめきちらすサネヒコから冷たい足取りで離れて行ったのだ。
・・・・・・これぞ、やはり変態の子にして、変態の父親なのであった。
鳥たちがささやきあう、僅かな音に、彦之進のその少女のように大きな瞳がゆっくりと開かれた。
すると、ぼんやりと木でできた天井の輪郭が目に入ってきたのである。
だが、いつもの自分の家の木の天井よりも、幾分か濃いような色合いをしているようであった。
「・・・・・あれ?・・・・・わしは、剣の稽古に神社へ向かって、・・・・・そうして、木刀を振りかざしていたはず、・・・・・そして、何かデカい物体が上から落ちてきて、・・・・・ハッ!その後の記憶が無い!!!!!」
そこで、その自分の家よりも濃い色をした木の天井の輪郭がはっきりとした時、彦之進は慌てて半身を起こしたのである。
そこは、見知らぬ場所であった。
どこかの武家のお屋敷の中のようであるが、このお屋敷に彦之進は来た事がなかったのだ。
それから下に目を移すと、何と女物の寝巻が着せられていたのだ。
「ゲゲッ!!わしは、気を失ったらしいが、一体、女物の寝巻を着てるとは、どういうことなんだっ!!?」
思わずそう叫んでいると、外の廊下の方から、足音が聞こえてきたのであった。その足音は、ゆっくりと、彦之進の部屋に近づいてきたのである。
最初、小さかったその足音は次第に大きくなり、彦之進の部屋のふすまの前で止まると、
”バッ!!!”
と、勢いよく扉が開かれた。そこにいた者を目にした途端、彦之進の瞳は満月のようにまん丸になってしまった。
「お・・・・・お前・・・・・!!!」
何と、そこには、彦之進の運命の「男❤❤❤」
が、立っていたのだ。
驚きすぎて、何も言えないでいる彦之進に、男は淡々と説明したのだった。
「私はゆうべ、神社の屋根の上で眠っていたんだが、うっかりおっこちてしまってな。すると、あなたがいて、ついつい、あなたの上に落っこちてしまった。だが、良かった。その美し~い❤あなたの肌を傷つけずに、気絶だけで済まされたからな❤」
もう、最後の方の口調に❤マークが交じっているのを知った瞬間、彦之進のその繊細で小さな体全体に、ミミズが這い上がってくるかのような、強い嫌悪感を感じたのだ。
「私の名前はサネヒコという。はっきり言おう!あなたは、私の運命の人だ!!さあっ!熱いべーゼを交わそうではないか!!?」
そう言う、サネヒコの目は、既にもうハートマーク❤と化していたのだ。
・・・・・同じだ、他の男連中と同じで、この男も、わしが女顔だってことで、・・・・そして、・・・・・ん?だが、べーゼって、一体何なんだ?
何とも言えぬ、腐ったスイカを誤って食べてしまったかのような不快感を感じていた彦之進であったのだが、その聞きなれぬべーゼという言葉に首をかしげていると、
「私は、お主に惚れたぞ!さあ、私と熱~いべーゼを交わそうではないか!!」
そう言い、チュー❤をしようと、いきなりしてきたのである。
「うわっ!やめろ!!わしは、こう見えても男だっ!!!」
すると、その言葉にサネヒコの目玉のハートマークが、さらに大きくなり、そして、
「素敵なべーゼを教えて進ぜようぞ!!」
そうして、彦之進の唇めがけて、その男の唇が寄ってきたのである。
「やめろ、やめろ!!わしは、確かに女顔であるが、決して男色ではないぞ!!」
部屋中を逃げ回る彦之進を猪突猛進のイノシシのごとく、サネヒコが追いかけまわしている。
とうとう彦之進が、その部屋から出ようとした、まさにその瞬間、
”ガシッ!!”
いきなり、サネヒコが、彦之進の腕をつかんだのだ。
「待て!私は名乗った!お前も名を名乗らぬか!!?」
彦之進がそのサネヒコの腕から逃れようとすると、何とサネヒコの髪が伸びて、彦之進の手に巻きついたのだ。
「なっ・・・・・!!ヘ・・・・・変態っ!!」
彦之進がびっくりしてそう言っても、サネヒコは動じる事なく、自分の髪の毛を伸ばし、彦之進の腕へ巻きつけ、そしてハート❤マークの目をしながら、さらにこう言ったのだ。
「お前が名を名乗らずに帰らんとすれば、私は今度は、ねっとりネバネバの、私のスライムのような鼻水で、お前自身を縛るまでだっ!さあ、どうする?名ぐらい名乗ってもらっても良いであろう?」
そう言いながら、髪の毛を彦之進の女性の様な腕に巻きつけるサネヒコのその目は、マジであった。
「は・・・・鼻水だけは、やめてくれっ!お前が変態だということは、よ~く分かった、サネヒコ!!」
「ほぉ~?早速私の名を覚えてくれてうれしいよ、お・じょう・ちゃん❤❤❤」
「・・・その、お嬢ちゃんっての、やめてくんねぇ~か?一応、俺、男だし・・・・!!」
彦之進がそうつぶやくと、サネヒコはさらに興奮した表情で言ったのだ。
「んじゃあ、名乗ってよ、おじょ~ちゃ~んっ❤」
「お嬢ちゃんじゃねぇっ!!わしには、れっきとした彦之進という名前があるんだ!!」
「ほ~う、彦之進・・・・・何とも美しい響きの名前であるな・・・・」
そこで、サネヒコが熱にうなされ、ぼんやりとしたその瞬間、サネヒコの髪の毛が縮み、一時、彦之進の手から、髪の毛が離れたのだ。
戦いという場に慣れている彦之進は、その稀有な一瞬を見逃さなかった。
瞬間、彦之進はサネヒコのいる場所から大きく飛び、庭へ出ると、急いでかけだし、逃げ出していったのだ。
「ああぁ~ん、待ってよ、マイ・ハニィ~・・・・・❤!!!」
後ろからサネヒコの声が追いかけてくるのを知ると、彦之進の全身に冷たいものがこみ上げ、冷汗が出てきた。
そのひんやりとした汗を感じた途端、彦之進の足の速度は数倍に上がり、そして、猛スピードでダッシュして、その屋敷を抜け、どこまでもどこまでも、走り抜けていったのであった。それはまるで、大草原をかけぬけてゆくチーターそのもののようであった。
もう既に運命の男との出会いを果たしてしまった彦之進。
やはり、運命の男は、彦之進に一目ぼれ!さあ、彦之進は男色に目覚めてしまうのでしょうかね!!?