若の葉❤浪漫譚 第一章 不幸な?彼の心の叫び
やはり「恋」を楽しみたい!!それは、男の人でも女の人でも、そうなのかもしれません。
そして、未来の恋人というものを何かで知る事ができたとしら・・・・・!!?
それは、素敵な事かもしれないですし、そうでないかもしれない。
そうした「恋」にまつわる不思議譚です。
ぜひぜひ、ご覧下さいな♡
「わしって、宇宙一不幸な人間かもしれない・・・・・・・!!!」
今、彦之進の魂は、この世のものとは言えない大きな負の感情で埋め尽くされていた。今まで感じた事の無い強い嫌悪感と共に、強烈なるショックが、彦之進の体全体を貫いていたのだ。そのショックの度合いは、まるで大蛇に呑み込まれ、大蛇の胃液まみれの体内で自然消化されむとしているみたいな感覚に近かった。
何と、自分は、れっきとした男性なのに、未来予想図を示す水晶玉の中には、男性と熱い口づけを交わす自分自身の映像がはっきりと、鮮明に映し出されていたのである。
あまりの事に、全身がまるでカビの生えたブルーチーズにでもなってしまったかのような、そんな妙な感覚に囚われていた。
・・・・・あの、カビが生えていて、何とも言えぬ、ブルーチーズのあの香り・・・・・。そう、まるで自分の体全体から、カビが湧き出ているような、そういった強くて、何とも言えぬ嫌悪感を強烈に感じていたのである。
「・・・・う・・・・・嘘だろっ・・・・・・!!?」
彦之進がその引きつった表情のまま、思わず漏らした言葉に、親友の比夢呂は、ニヤッと陰気で、だが、何か面白いピエロでも目にしたような笑みを浮かべたのだ。
少しだけ時間を元にもどしてみるとしよう。
ここは、地球とは全く異なる場所にある、異世界の空間である。
そこの世界は、まさに日本の江戸時代に似た街並みが並んでいた。まげを結った男性、そして、女性は島田髷を結ったりした、様々な人々が大きな町通りを行きかっていた。
それは、古き江戸の社会を連想させるようなものなのだ。
だが、島田髷を結った女性や、髷を結った男性に入り混じり、様々な髪形をした人々や、江戸時代の日本とは一風変わった着物を着ていたりする人々も、多くの人の中に混在し、ここが江戸時代の日本そのものではなく、江戸時代の日本に似た異世界である、という事を物語っていた。
彦之進はいつものように大店の主人の旅の用心棒をつとめた後の帰り道、柳の葉が揺れ動く川沿いを、自分自身の屋敷に戻るために、ゆっくりと歩いていた。
柳の葉は、不規則に揺れ、歩いている彦之進の肩に触れた。
ふわりと柔らかく肩に触れるその感触は、彼を何とも言えぬ心地よい気分にした。彦之進は立ち止まって、その微風の中で不規則に揺れ動く、青い柳の葉を見つめていた。
そういえば、柳のある場所には、よく幽霊が出る、と言われているのだったな。だが、わしは、幽霊なんつーもんは、絶対に信じていないぞ!
だが、・・・・・。
そこで、彦之進はふと、思いついたように柳の木の生える川沿いの方角とは反対の方角に目を動かす。
そこには、蔵や大きな商家等の建物が立ち並んでいた。
いるのである、彦之進の友人に、霊能者とやらが。
胡散臭いとは思いつつも、その霊能者とは幼少の頃からのお付き合いなのである。彦之進は、彼のやっている事が胡散臭いとは思いつつも、いつもその霊能者比夢呂と家がらみのお付き合いをしているのだった。
比夢呂は、元々武家の出であり、彦之進と同じように武家の道を歩むはずであったのであるが、彼は幼少期から強い霊感を発し、あまりにも幽霊等を見る事が多いので、お寺に預けられ、霊能者としての修行を親がさせていたのである。
そして、今現在、彼は一流の霊能者として、この彦之進と同じ町の中で日々の時間を削っている。
ある時、彦之進が川沿いの反対側の蔵が沢山建つありふれた景色をぼんやりと見つめていると、
「ワッ!!!!!」
後ろからいきなり、大きな声をかけられたのである。
「何者か!!!?」
彦之進が腰の剣に手をやりながら、後ろを振り返ると、そこには幼馴染にして、一番の親友である、あの霊能者比夢呂がいたのである。
「何、脅かすんだよ!わしに襲い掛かってきた賊かと思ったではないか!!」
彦之進がけわしいその顔で比夢呂に言うと、
「へへへっ!」
と、比夢呂はいたずらっぽい笑みを浮かべたのである。
それから、比夢呂は言った。
「相変わらず、脅かしてもビビるより、その身構え。さすが用心棒であるな。」
いたずらっぽい笑みを浮かべつつそう言う比夢呂に、彦之進は、ため息をつきつつ、言った。
「全く、お前と言う奴は・・・・・・。それにしても、。」
そこで、彦之進が遠い目で何もない虚空を見つめながら言った。
「お前は売れっ子霊能者で、ずば抜けて力が強いために、いつも鑑定の予約で埋まっているはずなのに、そんなお前が外に出て、こうしてのぎらくに歩いているとは、珍しい事だな。一体どうしたっていうのだ?」
そこで比夢呂は、一瞬いたずらっぽさの中に、少しだけ困ったような表情を見せながら言ったのだ。
「実はさ、昨日受けた依頼で、うっかり強烈な、お岩さんのような霊に体に入られちまってさ。そんでもってその依頼後に、ゲロ吐きまくっちまうような状態になっちまったんで、急きょ、今日はお休みをする事にしたんだ。」
そのような言葉にまた、彦之進の表情が微妙に変化し、言った。
「お・・・・・お前、お前はいつも予約でいっぱいなんで、休みはなかなか取れない程に忙しかったんじゃあないのか?」
「ヒコノ。人生っつーもんは、時々適当に歩んで良いものなんだよ。とどのつまりだなぁ、今日オレは、『お休み』の看板をかかげて、無理やりに、休んじまったのさ。まあ、客に見つかった時には、適当に『ああ、何か今日は月のもので、体調悪くってさ・・・・・!』なんつって、てきとぉーに誤魔化しとけば良いってもんさ。」
「・・・・・・お、お前なぁ、お前は男で、月のものは無いはずだぜ!」
そう言う彦之進に対し、
「まぁ、そん時はそん時で、オレの体は両性具有なんだって言っちまえばいいのさ。ガハハハハッ!」
そうして、豪快に笑う比夢呂を、呆れ顔で見ていると、比夢呂は彦之進に言ったのだ。
「ところでさ、それは冗談としてだな。たまにはオレん家へ来いよ、ヒコノ。いつもオレ、お前よか稼いでっから、オレの金で寿司でも出前で取って食いながら、酒でも飲もうぜ!」
そういう比夢呂に、彦之進はあまり納得が行かないような表情をしながらも、比夢呂の家に向かうようになったのだ。
そういった経緯で、彦之進は比夢呂の家に来ることになったのである。
しばし二人で酒を飲みつつ寿司をつついていたのであるが、ある程度お腹の膨れた二人は、ふと物足りなさを感じていた。
様々な会話を交わし、そのネタも尽きた頃、ふと、比夢呂が立ち上がり、別の部屋へ行こうとしていた。
「ん?どうしたんだ、比夢呂?」
そう言う彦之進に、比夢呂は、少しだけいたずらっぽい笑みを抱えつつ、
「予言の水晶を取ってくる。その予言の水晶を使い、未来占いをして、お前が将来どんな恋人と結ばれるのか、見てみようと思ってな。」
と、驚くような事を口にした。そう言う比夢呂の表情は、完全にいたずらをする前の少年の表情をしていた。
だが、彦之進は、そのような占いごとなど、好きではなかったので、
「良い!そのような余計な事、するでないぞ!!」
と、そう大きく言ったのである。
そのような彦之進に、比夢呂は、少し意地悪そうないたずらっぽさを含んだ笑みを浮かべながら言ったのだ。
「へぇ~、お前、れっきとした武士のくせに、将来の事、知るのが怖いんだぁ~?」
そう、ニヤニヤとしながら彦之進のこわばった表情を見つめつつ、比夢呂は、まるで悪魔の使い魔の黒猫の様なダークな感じを含ませ、言ったのだ。
途端、彦之進の表情が厳しく一変した。
「何も怖い事なんて、ないぞ!どのような事でも、どんと来い!だ!!!」
彦之進は、勢いで、そう比夢呂に言ったのである。
そこで彦之進は、比夢呂の家にて未来予想を示す水晶球を覗く事になったのであった。
しばらくして、屋敷の奥から戻ってきた比夢呂の手には、かなり小さな紫色の座布団のような物の上に置かれている大きな水晶球が存在していた。
そして比夢呂は、円卓のテーブルの上にその水晶球を置くと、両手を水晶球の上を覆うように、手をかざした。
まるで女性を扱うように、丁寧に丁寧に、比夢呂は、しばし手をかざしていたのだ。
すると徐々に水晶球の中に二つの人影が映し出された。
その姿に、彦之進の目は、まるでデメキンのように、大きく大きく見開かれ、顔はまるでブルーチーズそのもののように、真っ青になってしまったのである。
そう、そこには、男性ととてつもなく情熱的な口づけを熱く交わす彦之進の姿が映し出されていたのである。
確かに現在16歳の彦之進の身長は高くはなく、顔も女性的、しかもアイドルの様なかなり可愛らしい顔をしているのである。
その彦之進の女性的な外見が元で、今までに、女性から告白された事は一度も無かった。
だがだが、何と男性からの告白は二日に一度程度という割合で起こってしまっていたのである。
彦之進が美しい美少女に見えても男性である、という事に変わりはなく、告ってきた男性たちには、そう告げるのであるが、その彦之進のかなりの女性的な美しい顔に男たちは惹かれ、それで付き合ってほしい、等と、彦之進にとっては嫌悪感としか感じないような事を言いだすのである。あげくの果てには、ある男なんて、鼻息を荒げながら、
「・・・・・・頼む、彦之進、お前のその美しい顔が夜、頭に浮かんで、オレの『息子っち』が、お前を求めて求めて、たまらねぇんだ。・・・・・確かにお前は男だという事は知っている。・・・・・だが、だが、オレのこのお前を求める気持ちはおさまらねぇんだ。たのむ!この通り、一度でもいいから、オレと契りを交わしてくれえ~~~~~・・・・・!!!」
と言いつつ、その鼻息を荒くした男性は、彦之進に飛びつこうとしたりした。だが、いつものように彼は、そうした悪魔の欲望の塊のような男性から、さっそうと逃げ出したりしていたのだ。とまあ、その彦之進の抜群の女性的な顔から、女ではなく、男にモテモテなのだ。彼はこのような美少女の顔をしていても、れっきとした男であるというのに、・・・・・・。
そしてまた、彦之進は身長も高くはないので、それがさらに彼の女性的な?魅力を引き立てていた。彦之進は、男性なのに、日々、何人もの男性に言い寄られる事で、ずっと悩んでいたのである。
そして、それにまた、水をさすように、今度は比夢呂のそのばかデカイ奇妙で怪しげな水晶に、くっきりと、男性と口づけを交わす自分自身の姿が映し出されていたのだ。
比夢呂は、面白い芸でも見たようにニヤニヤと笑みを浮かべ、そして、言ったのだ。
「フフフッ、ヒコノ。お前はやっぱ、男と結ばれる事になるようであるな。まあ、良いではないか?そのお前と結ばれる予定の男性、かなりハンサムではないか。良かったな、ヒコノ!」
「ぜんっぜん良かないわ!!」
そう怒鳴りながら、再度自分の未来が映し出された水晶球を見てみると、なるほど、比夢呂の言うとおり、その彦之進と口づけをしている相手の男性は、彦之進よりも一回り背が高く、平均的な男性の身長をしていた。だいたい、彼は18歳程であろうか。
とにかくその男性は、顔がとてつもなく整った、綺麗な顔立ちをしているのである。かなりのハンサム。一言で言えば、そのような感じであろう。
「良かったな、ヒコノ。この男性、相当綺麗で、ハンサムではないか。良い男に嫁にもらってもらえそうで、良かったな!」
そう、何か面白い物を見たような、好奇なまなざしを含んだその日夢呂の黒い瞳が女顔でおまけに背が低い彦之進を見つめつつ、言ったのだ。
彦之進はただただ、その未来予想図と思しき水晶球の中の自分が男と熱い口づけを交わす姿を見て、恐れおののいていた。
彦之進の全身に、何とも言えぬ強い嫌悪感が広がっていた。それはまるで、腐りかけのゾンビにでも触れられてしまったかのような、そんな、奇異な感覚だった。
確かに彦之進の顔はほぼ女性にしか見えず、身長も高くはない。だが、これでも彦之進はれっきとした男性であるので、それで強い嫌悪感を感じていたのである。
顔を青ざめさせ、体の妙な場所から噴き出してきた不可思議な汗を額にかいている彦之進に比夢呂は言ったのである。
「ヒコノ。何も成就する恋愛が男と女、というわけではないものだよ。でも良かったではないか、美人のお前にふさわしいハンサムな男とこうして結ばれる未来になって。お前、幸せ者だなぁ~。」
そう、呑気に、まるで春の日に咲いているたんぽぽの花のようにのどかに物申す比夢呂に、
「良いわけないではないかぁ~!こう見えてもわしは、男で、女の子と恋人になりたいと思ってるんだぁぁぁ~~~~~~!!!!!」
彦之進はあまりの事に錯乱状態になっていた。そこにあった座布団で、比夢呂を殴ろうとしたのであるが、比夢呂は、スルリ!と上手にすり抜け、よけつつ、慌てたように言ったのだ。
「・・・・・わ、悪かったって。お前が完全にこう見えても男、という事はオレも知ってるさ。・・・・・だが、これはれっきとした未来予想図で、オレのこの占いは、ハズレた事が今までに一度も無いんだ。」
「じゃあ、わしは、どうすれば良いってのだ!!?このまんま、男とキスしなきゃいけないのは、避けられないのかよ!!?」
そうして、何と錯乱した彦之進は、自らの相棒である剣を抜いてしまったのだ。
今、ここに剣を所持していない比夢呂は、さらに慌てふためき、言った。
「ま・・・・・待て、彦之進・・・・・!何もこの未来予想を示す水晶に映っている未来が、完全というわけではない。つ・・・・・つまりだな、お前がこの男と出逢いさえしなければ、こんな事にはならず、そ・・・・・そしてだな、もっと違う男性と出会う事に・・・・・・・。」
「な・・・・何だと、比夢呂!わしがまた、男とくっつくと言うのか!!?こう見えてもわしだって男の中の男なんだ!絶対にそんな事なんて、嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁ~~~~~~!!」
比夢呂の一言で、ますます頭に血が上った彦之進は、今度はどこから持ってきたのか、大きな大きなナマハゲの顔をした置物で、比夢呂を殴ろうとしていた。
そのナマハゲの置物はただただ、大きなナマハゲの顔だけであるのだが、その鬼の顔の迫力は、悪霊よりも怖い物にさえ思われた。それに、ヒコノの怒りで血走った眼を見て、慌てて比夢呂は言ったのだ。
「わ・・・・・・悪かった、・・・・・。と・・・・・とにかくだな、ヒコノ。お前がその男性と出逢いさえしなければ、そのような奇異な未来はやってこないのであるからして、・・・・・・。」
そう、慌てふためく比夢呂に、
「あっ!その手があったのであるか!」
彦之進はふと、いつもの表情に戻り、そう呟いたのだ。そのような怒り狂う剣豪である友人が元に戻ったのを確認すると、比夢呂は、安どのため息をつき、言った。
「もし、その男性を見かけたとしたら、わざと彼の目に、ヒコノ、お前の姿がはいらないようにしたり、との事で、男性との接触は避けられるではないか。」
比夢呂は、先ほどの恐怖から、息を切らせながら言った。
そういった経緯があり、彦之進は、その男性を見かけたら、即避けるようにする、というような事で、物事が決定したのである。
さあ、どうなるのであろう、宇宙の不思議。彦之進の奇異なる運命は、はたして本当に変えられるのであろうか・・・・・?
ある時、彦之進は、少しだけ鑑定の合間の時間が空いた比夢呂と共に路地を歩いていた。
すると、向こう側より、キャッキャッ!というような、複数の女性の声が聞こえてきたのである。
ふと彦之進がそちらに目に移すと、十人以上の女性の集団がこの路地を向こう側から歩いてくるではないか!!
女顔に見えても彦之進もやはり男性なので、その彼の男性ホルモンから絞り出てくる女性に対する何とも言えぬ生理的な欲求から、そちらの女性のグループに目を移した。
・・・・・どんな女の子たちがいるのであろうか・・・・・?そう、大きく期待のこもった眼差しで、女性たちからなるグループを見たその途端、彦之進の顔がいつかの、あのブルーチーズのように青く変わっていた。
何と、いたのである、その女性グループの中に。あの男が・・・・・・・・・・。
そう、未来予想図を示す水晶球の中で、彦之進と熱い熱い口づけを交わしていた、あのとても顔立ちのととのったハンサムな男性が・・・・・。
「・・・・・・・!!!」
あまりの事に、言葉が出てこない彦之進に向かい、比夢呂は、少しだけ面白いものを見るような、だが、少しだけ憐れんでいるような表情で彦之進に言ってみた。
「本当におったのだな、あのような顔立ちの良い、水晶球に映し出されていた男性がな。・・・しっかし、まぁ・・・・・。」
そこで比夢呂は、眉をしかめ、言ったのだ。
「あの男、カッコ良いからと言って、相当沢山の女の子を連れ歩いて街を堂々と歩き回るなんて、本当に、とてつもないプレイボーイであるな・・・・・。」
そう言う比夢呂に対し、彦之進は言った。
「い・・・・・今は、そのような時ではなかろう!?奴が女に囲まれ、ハーレム状態であろうが、奴が本当にこの世に存在する事は事実なんだからな!・・・・と、・・・・・とにかく、わしはここから去る!!」
そう言い、そそくさとその場を離れようとする彦之進の襟元を掴み、比夢呂は彼を止めた。今、比夢呂の表情には、少年のようないたずらっぽさが浮き出ていた。
「まぁ、待てって、ヒコノ!オレが今からあのハーレム状態の男のオーラをリーディングして、どんなヤローなのか、視てやっからよ。」
そう言う比夢呂の言葉に彦之進の歩調が止まった。
彦之進は、あの男に見つからぬよう、近くの建物の物陰に隠れつつ、小さな声で、比夢呂に言ったのだ。
「・・・・・。そうだな、あんなに可愛い沢山の女の子に囲まれているってことは、あの男、相当なプレイボーイに違いないな。その、お前のオーラリーディングとやらで、あの男の性質を調べてみてくれ。・・・わしは、ヤローとホモホモの関係になんかなりたかないが、お前のオーラリーディングというものは、どのようなものかも知りたくて、な。」
そう、少しだけ興味を示すような感じで言う彦之進に比夢呂は黙って頷き、そして沢山の女君たちに囲まれながら街中を堂々とハーレム状態で歩いているあのハンサム男に意識を向けた。
しばし、集中して、その女君の団体さんの中心部を歩いている、その背の高い男をじっと目を凝らして視ていたのだが、しばらくして、比夢呂は、彦之進の方を向き、残念そうに言ったのだ。
「・・・・・だめだ、読めやしない・・・・・。」
えっ!?そのような「できない」というような言葉を初めて比夢呂から聞き、彦之進は、目をぱちぱちとまばたかせ、言ったのだ。
「読めないとは、どうしたんだ?いつものお前らしくないではないか。」
すると、比夢呂は、仕方なさそうに苦笑いしながら言ったのだ。
「どうも、奴が連れている女君たちの多くのオーラに覆われちまって、肝心なあのヤローのオーラが見えてこないんだ。奴の周りには、あまりにも女君が多くいすぎて、そして女君たちのオーラにどうやら、奴のオーラが隠れちまってるみたいなのさ。」
「・・・・・。」
比夢呂の言葉に、彦之進は呆れ顔をしたまま、無言でため息をついた。
「そうか・・・・・。しかしまぁ、あの男、凄い数の可愛い女を連れておるな。本当に、何というプレイボーイぶりだろうか・・・・・。」
そう、ため息をつきつつ言う彦之進の目線の先には、女君の集団の中心部あたりで歩くあのプレイボーイ風の男を見つめていた。
よくその集団を見つめていると、女たちは、うっとりするような熱い視線をその整った美しい顔の男性に向け続けている。
「しっかしまぁ!顔が良いと得だよね。あんなに沢山の女気味に囲まれ、まるでハーレム状態だもんな。あぁぁぁーーー、羨ましいねぇ~・・・。」
そう、少しだけ、わざとズレたテンポで言う比夢呂にいきなり背を向けると、
「わしは、もう家に戻るぞ!あのヤローにわしの存在を知られぬようにな。」
そう言いつつ、彦之進は、男性に見つからぬように、細い路地を入り、そして比夢呂の元から去っていったのだ。
「・・・・・全く、ヒコノは、せっかちだなぁ~。せっかくの『運命のお相手さん❤』なんだから、もうちょっとじっくりとその男を確認すれば良いのになぁ~。ヒコノのせっかちさん❤」
そう、まるで面白い芝居を見逃してしまった子供のような表情で、比夢呂は、言ったのである。
「さあ、こうしちゃおれん、オレ様も、これから鑑定などのお仕事なんだけっけや!」
そう気持ちを切り替えた声で一人、ぼそりと言うと、比夢呂も、自分の家へ向かい、歩を進めはじめたのであった。
どうでしたでしょうか?
はたして、彦之進は、男同士の恋愛に目覚めてしまうのでしょうか?
外見は女の子にしか見えない剣客の彦之進。女っぽいということで、本当に男とくっついてしまうかもしれませんね。
その後の展開については、また今度♡