02
黒入に女王様と呼ばれた彼女は、何を隠そう生徒会長だ。
栗色の腰まであるロングヘアー。
パッチリとした両目。
スラッとした脚。
スタイルは抜群である。
しかし、天は彼女に二物は与えないというのは本当の話である。
「汰丞、今から明日の集会で使うプリント刷るからちょっと手伝いなさい」
両腕を組み、黒入の前に仁王立つ。
「あ、なのなぁ…。いきなりそんなこと言われても俺にも予定ってもんが」
と、最後まで屈しない姿勢を見せる黒入だったが、
「手伝いなさい」
顔はニッコリ笑顔だが、凄まじい圧力を掛けてくる。
「はあ、参りました。手伝います」
本の数秒で心は屈しましたとさ。
これが、彼女の性格である。
絶対王政と言っても過言ではない。そこまで酷いわけではないが、彼女は人使いが少々荒いのだ。
まぁ、それなりの見返りもある、とは聞いており、そこが彼女の魅力でもあるのだろう。
「すまんが今日は一人で帰ってくれるか?」
申し訳なさそうな顔をする黒入だったが、理由がソレなので仕方があるまい。
「そうするよ。まぁ、頑張ってくれ」
ごめんなさいね、と生徒会長からも謝罪の言葉が飛んできた。
「それじゃ、汰丞。職員室に行くわよ」
はいはい、と生返事を返し一階にある職員室を目指し階段を下りて行った。
二人が階段を下りた階段を下りずに、まっすぐ進む。
下駄箱が設置してある場所まで直接行ける廊下を進んで行く。
文化部が練習しているのであろう。
近くの教室からは、吹奏楽の演奏が聞こえてくる。
ギターや、ドラムをたたく音も聞こえてくる。
そんな喧騒の中、一つだけ教室が開いていた。
その前を通るときに、ふと横目でチラッと覗いてみてしまった。
パイプ椅子に座る少女が、何やら本を読んでいた。
分厚い本だった。
少女と目が合った。合ってしまった。
彼女の目は、冷たい目。まるで、誰にも寄せ付けない鋭い眼光だった。
思わず、動きが止まる。真っ直ぐに歩を進めていた自分の脚が止まった。
が、少女は直ぐに本に目を落とす。
何だったのだろうか?
あの一瞬でとてつもない衝撃が体を穿つ。
あの出来事から歯車は狂い始めたんだ。