過去現在未来、自分ツッコミ☆
登場人物一覧
逆瀬川 知美
お笑い大好き女子高生。自分のボケで周りが笑顔なると信じている。髪はツインテール、デザインは左右対称(左右反転処理を入れるため)、他デザイン不問。
唐木田
知美の隣席に座る男子生徒。知美の不思議な現象に疑念を抱いていたが、理論で説明できない現象を目の前にし、理解を示す。デザイン不問。
知美、風呂上がり、自室にてパジャマに着替える姿。髪は下ろしている。
【モノローグ登場人物名『逆瀬川 知美』】
知美(さっきのなんだったんだろう……?)
【以下、回想風に。作画で表現か、画面エフェクトか、要検討】
【モノローグ『一時間前』】
知美、自室で制服を着た状態。髪をツインテールに結っている。スタイルミラーの前で、自分の着ている制服をチェックしている。
知美「明日から高校生なんだ。この制服、かわいいし、私に似合い過ぎる。」
知美、自室で制服を着た状態。スタイルミラーの前でくるっと回る仕草。
知美「逆瀬川知美、高校生になっても、みんなを笑顔に!
鮮やかにボケて笑いを取る、それが私のハイスクールライフッ!
ギャグ、良しっ! 気合、良しっ! 美少女、良しっ!」
【画面、知美の背後、知美(未来)のほうへスクロール】
同じコマで知美(未来)がフェードイン。
知美(未来)、服装はパジャマ(冒頭で着用しているパジャマとは異なる柄)で年齢、容姿は同じだが、髪を下ろした状態。知美(未来)が知美の後頭部をハリセンで叩く。
知美(未来)「あんまり、うかれるな!」
バシーン! 【文字か効果音、もしくは両方、以下、効果音の定義とする】
知美「あいたー!?」
知美、叩かれた頭を抱えつつ後ろを振り向く。知美(未来)がハリセンを手に持ち、呆れた顔をしている。
【画面、知美の前方、スタイルミラーのほうへスクロール、
知美(未来)がコマから消える所まで】
知美、困惑した表情でスタイルミラーのほうを見る。スタイルミラーには、知美一人しか映っていない。知美、表情が困惑から険しく焦った感じになる。
【再び画面、知美の背後のほうへスクロール】
知美(未来)の姿はない。
知美(……なんだったの?)
【以上、回想、終了】
知美、不思議そうな表情で、後頭部の違和感を手で触る。
知美(幻……? それか、なんだっけ、なんとかなんとか……ドッペルなんとか?)
知美、意識を切り替え、笑顔に。ベッドに入る。
知美「うん、分からない! 寝よう!」
【モノローグ『入学式当日』】
知美、入学式を無事に終え、クラス分け表を見て、自分のクラスへ行く。
知美(入学式も終わったし、色々友達を作りたい! 所なんだけど……)
知美、教室の扉を開け、辺りを見回す。
教室内では、既に幾つかのグループが固まっており、話を弾ましている。
知美「私の想定している入学初日じゃない!?」
幾つかのグループが知美を見て、ざわざわしている。
【知美(小学生)が知美の背後にフェードイン】
知美(小学生)が背伸びして、知美の背後から知美のコメカミをぐりぐりする。
知美(小学生)「教室に入って、いきなり叫ぶな!」
知美「痛いってー! 誰ー!?」
知美、背後を確認する。背後には、知美(小学生)がガッカリした表情をしている。
知美(小学生)「はあぁ……」
知美「え……ちょっと……その姿……」
知美(小学生)「子供じゃあるまいし……」
知美「そっちのほうが子供でしょ! 昔の私めっ!」
【知美(小学生)がフェードアウト】
教室の生徒達が、教室の入口にいる知美を見て、更に、ひそひそざわざわ、している。
知美(思わず、言ってしまったけど、どう見ても小学生の時の私だった。)
知美が自席に着く。場所は窓際の最後列。
知美(昔、夢で見た、あの時と同じ……)
知美、頬杖を付き、目線で教室全体を見渡す。
周りには、隣に1人男子生徒が席に付いているだけで、他の生徒は様々な場所で固まって団らんしている様子。
知美、その光景を確認した後、隣の男子生徒、唐木田に話しかける。
知美「あの、お隣さん、ちょっといいですか?」
【モノローグ登場人物名『唐木田』】
唐木田の描写。唐木田、知美のほうに振り向く。少し機嫌が悪い。
唐木田「あぁ……別に。」
知美「あのさ、なんとなく、固まっているグループが決まっちゃってて、
入りづらい感じがしない?」
唐木田「そうか? 知らん。」
知美「な、なんかさ、輪に入りづらいというか、声かけづらいというか……思わない?」
唐木田「中高一貫で、エスカレータ式に上がってきて、大体、
仲間が出来上がってるんじゃねーの?」
知美、大げさに驚く仕草。
知美「マジでっ!?」
唐木田、知美の仕草を気にせず淡々と話し続ける。
唐木田「多分だけど、俺も良く分からねーし。別の学校から、この学校に来たから。」
知美「私もそう。だけど、それは困ったぁ……」
唐木田(何が困るんだよ……)
知美、興味津々に唐木田のほうへ身を乗り出す。
知美「ん? ということは、あなたも、一人ぼっち!?」
唐木田、イラッとした様子。
唐木田「お前は言葉を選べ。俺は、別に気にしてない。
色々やっていくうちに、ダチくらい出来るだろし。」
知美、唐木田のほうに身を乗り出す。
知美「ねえねえ、あなたはギャグに寛容? 寛容かな?」
唐木田「は?」
知美「ごめん、言葉を選びます……おギャグにご寛容でありますでしょうか?」
唐木田、知美の違和感ある発言に困った表情で返事をする。
唐木田「言葉を選んでそれかよ……まぁ、厳しくはないが、何か?」
【知美の周囲に、竜巻のようなエフェクトが発生】
知美「ツインテールアターック!!」
知美、強烈に体を回転させて、自身の髪の毛を唐木田にぶつけ続ける。
唐木田「うおお!?」
知美、しばらく回転した後、教室の床で四つん這いになる。
知美「おえぇ……ぎ、ぎもぢ悪ぅ……」
唐木田(なんだこいつ馬鹿か……?)
【知美(小学生)がフェードイン】
知美(小学生)「馬鹿か!」
知美(小学生)、四つん這い状態の知美の背中を足で踏みつける。
ドフッ!
知美、顔面が蒼白になりつつ口を手で押さえる。
知美「おえ……朝御飯が、うぷっ……」
唐木田「ちょっ!?」
【知美(小学生)がフェードアウト】
直後、担任の先生が入ってきて一言。
担任「じゃぁ、入学最初のホームルーム始めるぞー。」
周囲の生徒達が自席に戻る。
知美、四つん這いで動けないまま、ぷるぷる震えている。
一定時間、経過して休み時間。
知美、額の汗を拭きとる動作しつつ、唐木田に話しかける。
知美「ふ、ふう……もう一撃やられたら、出してはいけない物を出す所だった……」
唐木田「いきなり何やってんだ? わけ分からん攻撃を受けたのはこっちなんだが。」
知美、困惑と恥ずかしさの表情を交えながら返事をする。
知美「あ、ううん、なんでもないから。」
唐木田(お前はなんでもなくても、こっちには色々あるんだがな……)
日々、学校で知美の自分ツッコミが続く。端的に幾つかの現象を描画。知美、体育準備室に行く。
知美「体育準備室って、体操着に着替える所じゃないの!?」
宙から知美(小学生)が現れ、知美に踵落としをする。
知美(小学生)「それは更衣室だ!」
ズガンッ!
知美「ごぷあっ!?」
教室、掃除の時間。知美、床に雑巾がけしている。
知美「雑巾がけなら任せろーい!!」
ドガシャアアァァン!!
知美、掃除用に置いてあるバケツに激突し、周りにいる生徒がバケツの水で水浸しになる。
知美「ぎゃああぁぁ!!??」
知美(小学生)が背後に現れ、首に関節技を入れる。
知美(小学生)「周りに迷惑かけるなっ!」
ゴキィッ!
休み時間の廊下。教頭先生が廊下を巡回している。知美、背後から話しかける。
知美「教頭先生~、先生の頭のバーコードをピッっとすると、年収出るってホント?」
教頭が愕然とした表情で振り返る。
教頭「!?」
知美(小学生)が掌底で、知美の顎を突き上げる。
知美(小学生)「失礼にもほどがあるだろっ!」
ドゴッ!
知美、宙に浮いて意識が遠のく感じ。
知美(何? なんなのこれ……)
【画面が白くフェードアウト】
【画面がフェードイン】
【モノローグ『数週間後』】
舞台は数週間後くらい経過した、教室。知美、教室の自席で座っている。疲れた表情。
知美「はあぁ……」
知美、唐木田のほうをチラッと見る。
知美「はあぁ……」
知美、わざとらしく、唐木田のほうを見て溜め息を付く。唐木田、嫌な表情。
知美「はあぁ……」
唐木田「な、なんだよ?」
知美、唐木田の返事が来て、ニヤリとしつつ話を始める。
知美「私、すごい困ってて……」
唐木田「困ってる? お前が?」
知美、寂しい表情から、怒りの表情に切り替わる。
知美「うん……って、酷くない!? 悩みゼロみたいな人間だと思ってるでしょ!?」
唐木田「どんだけ先読みしてるんだよ、事実だが。」
知美「まっ、いいわ、ちょっと、相談してあげるわ。」
唐木田「どんだけ上から目線で相談を受けないといけないんだよ……」
知美、自身に起こっている現象について説明。唐木田、理解不能な表情。
唐木田「は?」
知美「だーかーらー、自分にツッコミ入れられているの。」
唐木田「は?」
知美「小学校高学年くらいの私に。」
唐木田「はい?」
知美「良く考えて見たらさぁ、小学生の頃、寝ている時、
誰かにツッコミ入れる夢を良く見てたんだよねー。」
唐木田「で?」
知美「それが今、来ている感じ。」
唐木田「お前は寝るとツッコミ役で、起きるとボケ役なのか。」
知美「そうそう。」
唐木田「なんだ? その設定は。」
知美「だから、本当なんだってばー。」
唐木田「仮に本当だとして、何が困るんだよ?」
知美「いや別に。」
唐木田(別にって……なんなんだよ?)
【知美(小学生)がフェードイン】
知美(小学生)「なら、相談しなくていいじゃん!」
【知美、一定回数、反転処理。知美(小学生)は四方八方から分身しているかのように知美を叩くエフェクト】
バシーン! バシーン! バシーン! バシーン! バシーン!
知美「痛い痛い痛いー!!」
【一定時間後、知美(小学生)がフェードアウト】
唐木田「お前、何、やってんだ?」
知美「見えたっ!?」
唐木田「何が?」
知美「私!」
唐木田「お前は見えるが。」
知美「じゃなくて、ツッコミ入れている、もう一人の私!」
唐木田「お前は見えるけど、ツッコミ入れてる、別のお前らしき人はいなかったぞ。」
知美「じゃ、次。」
唐木田、呆れた表情。
唐木田(面倒だな……)
知美、怪しいポーズを取る。
知美「ハズレ野豚がクラッシャー!!」
唐木田「はあぁ?」
知美「し、知らない? あたり海江田のクラッカー……ってのが……
昔、CMであってね、それで……それを今っぽくアレンジ……」
【知美(小学生)がフェードイン】
知美(小学生)が知美の頬を両手で挟むように叩く。
知美(小学生)「いつの時代だよっ!?」
バチイイイイィィィィン!!!!
知美「ブヒャアッ!? い、痛いってー!」
知美(小学生)「私の心のほうが痛いわ!」
【知美(小学生)がフェードアウト】
知美「小学生の私のほうが大人な気がする……」
唐木田「何、ぶつぶつ言ってるんだよ?」
知美「たまには……こう……レトロなネタを、ね?」
唐木田「アウトだろ。レトロ以前に、この国の政治的な意味で。」
知美「えー、そうかなぁ?」
唐木田「で? ボケのセンスがイマイチなのは分かったが。ツッコミってのは?」
知美「私の小学生の姿、見えなかった?」
唐木田「はあぁ?」
知美「ツッコミを入れる小学生の私がいたでしょ?」
唐木田「いない、お前が一人で騒いでるだけだし。」
知美「マジでっ!? ネタが古かったからかな……?」
唐木田「事情は分からんが、関係がないことは分かる。」
知美「じゃぁ、速過ぎて見えないとかっ!?」
唐木田「分からねーが、お前の頭がおかしいのは分かった。」
知美「ちょっと! 違う違う! なんで信じてくれないのっ!?」
唐木田「信じようがないだろ、見えねーし。」
知美「だからさ! 小学生の私が私にツッコミを入れてくるの!」
唐木田「いや、有り得ねーし。」
知美「だから、有り得ないけど、有り得るんだよー!」
唐木田「常識逸脱し過ぎ、科学超越し過ぎ。」
知美「難しい理屈はどうでもいいから信じてよ!」
唐木田「無茶振り過ぎだろ……」
知美「うぅ……な、なら……ちょっと考える。」
唐木田、知美から顔をそらす。
唐木田(嫌な予感しかしない……)
知美、挑発している表情。
知美「放課後、校舎裏な。」
唐木田、視線を知美に戻す。困惑した表情。
唐木田(なんなんだよ……喧嘩、売ってんのか……?)
【モノローグ『放課後』】
舞台は放課後、校舎裏。知美と唐木田が対峙している。闘いが始まろうとしている感じ。
知美「どうやって証拠を見せるか……」
唐木田「他人に見えない物に、証拠を見せるのは不可能だろ。」
知美「私は可能を不可能にしてみせるっ!」
唐木田「逆だろ。お前、残念な奴だな……」
知美「良しっ! ツッコミ1ポイントゲット!」
唐木田「お前は何がしたいんだ……?」
知美「ああー!! ちょっと! あんたがツッコミ入れたら、自分ツッコミが来ない!!」
唐木田「そんなの知らねーし!」
知美「肝心な時にツッコミ入れてどうすんのよ、全くもう……」
唐木田「俺のせいかよ!?」
知美「ネタ……ネタ切れ……あんたのせいで……」
唐木田(なんで俺のせいなんだよ……しかも、ひとつでネタ切れかよ……)
互いに気まずい雰囲気。知美、自分ツッコミの現象どうすれば見せつけられるか頭を抱えて悩んでいる。
知美「う~ん……」
唐木田、イライラと呆れている様子。
唐木田「あー、もういいだろ? じゃあな、帰るからな。」
知美「待って! 待ってよ! もう一度だけ……もう一度だけ……使うわ。
お願い、私にボケるチカラをっ!!」
唐木田、しつこい知美に呆れて物を言えない感じ。
唐木田(こいつ、やっぱり頭おかしい……)
知美、立ったまま目を瞑り、精神統一をしようとする。
【知美、顔から汗が垂れるエフェクト。少しずつ汗の数が増えていく】
唐木田「おい、大丈夫か?」
知美「黙ってて! 今、ネタを考えているんだから!」
唐木田(こいつ、頭おかしい上に面倒な奴だな……)
知美、何か閃いたように開眼する。
知美(!!)
カッ!!
知美、腕を上に振りかざし、空を指差す。
知美「Go my 上っ!! ビシッ!!」
唐木田(0点……)
知美(未来)「どりゃああああぁぁぁぁ!!!!」
【知美(未来)がドロップキックの恰好で、知美の腰に突撃するアニメーション】
【知美が知美(未来)の逆方向に吹っ飛んでいくアニメーション】
知美(未来)は同年齢、私服を着用している。
知美(未来)「上じゃないから! んで、自分で『ビシッ』て言うなー!」
【モノローグ『唐木田の視点』】
知美(未来)が見えない視点で、知美が吹っ飛ぶ様子。
【上記のドロップキックの時より、やや、アニメーションを遅めに、コマ送りでも可】
唐木田(!?)
唐木田、数秒、呆然としている。その後、吹っ飛んで倒れている知美の所に駆け寄る。
唐木田「おい、お前、大丈夫か!?」
知美、腰を抑えながら、立ち上がろうとする。苦笑いしつつ発言。
知美「あいたたた……まさかドロップキックとは……」
唐木田「怪我はないか?」
知美、立ち上がり制服の埃を払う。
知美「う、うん……怪我は大丈夫。だけど、理解してくれた?」
唐木田、知美をじっと睨み付ける。
唐木田(良くやるわ……)
知美「うぅ、こ、これでも、まだ説得力が足りない……?」
唐木田「……いや。今の不可抗力な飛ばされ方は……理解できない。普通じゃない。」
知美「良しっ!」
唐木田「良し、じゃねーよ! まだ、半信半疑だ!」
知美、自分の指を咥え、幼さを装った表情で唐木田を見る。
知美「えー……」
唐木田「んで、どうするんだよ?」
知美「ツッコミの私が見えないと、周りに変な人だと思われちゃうよ……」
唐木田「いや、もう既に変な奴に認定されている、心配ない。」
知美「マジでっ!?」
知美、驚愕した表情。
唐木田「気づけよ……」
知美、一瞬で考える仕草に切り替わる。
知美「うーん、ツッコミ役を探せばいいのかな?」
唐木田、理解に苦しみつつも返事をする。
唐木田「ツッコミ役が突っ込めば、自分自身にツッコミされることはない、ってことか?」
知美、考えているような仕草。
知美「うーん……分からない。」
唐木田「それじゃ、ツッコミ役を探しても、意味ないだろ。」
知美「じゃぁ、どうすればいいんだろう?」
唐木田、呆れた様子で話を続ける。
唐木田「どうすればいいか分からん、お前の超能力ってことでいいんじゃねーの?」
知美「え? 何? これ、私の超能力とか特殊能力とかみたいな!?」
唐木田「あぁ。」
知美「つーか、いらない。はい、返す。」
知美、両手で何かを渡すような仕草をして、唐木田のほうへ両手を向ける。
唐木田「俺に返されても困るし、自分でなんとかしろよ!」
知美「そう言われても……」
唐木田、イライラした表情。
唐木田「あー、面倒くさい奴だな、ボケるからツッコミが来るんだろ?」
知美「それは分かるけど……」
唐木田「なら、ボケないで普通にしてればいいだろ。」
知美「でも、それじゃ、私のお笑いハイスクールライフが……」
唐木田「は?」
知美「私、お笑いハイスクールライフがないと生きていけない!」
唐木田(どうしようもない奴だな……)
【校舎裏からカメラを上方に映し、空を映す(出来れば校舎の一部の描画)。以下、セリフだけ表示】
知美(小学生)「いい加減にしろ!」
ベシバシベシンッ!
知美「痛い痛いっ! 痛いから!」
【以上でセリフだけの場面は終了。】
少し時間が経ち、知美、一人で下校中の路地、真剣に考えている表情。
知美(ボケるからツッコミが来る……ボケなければツッコミは来ない……
だけど、ボケない私じゃ、お笑いハイスクールライフを目指す者として、
普通ではいけない……ボケ、ツッコミ、普通……)
知美、閃いた! という表情。
知美「はっ!?」
知美、合点いったポーズをする。
知美「分かった!」
知美「私は……私は……」
【派手なエフェクト。ちゃっちゃら~♪】
知美、勝ち誇った表情。(加えて、可愛らしさがあると尚良い。)
知美「ツッコミ担当になるっ!!」
【知美(小学生)が知美の正面にフェードイン】
知美(小学生)が知美の額をチョップする。
ゴッ!
知美(小学生)「道の真ん中で騒ぐなー!」
知美「あいたたー!?」
【モノローグ『その夜』】
舞台は知美の自室。
知美、勉強机で何か工作をしている。作っているものはハリセン。あまり映らないように。
知美「できたっ!」
知美、ニヤニヤしている。
知美「これで完璧……ふふふふ……」
【モノローグ『翌日』】
朝のホームルーム前、学校の教室。
知美、唐木田の席の机(知美の隣席)を、両手でバンッと叩く。
知美「私、ツッコミになることにした!」
唐木田「お前、何、言ってんだ?」
知美「私がツッコミ役になれば、自分ツッコミされなくなるはず!」
唐木田「あぁ、なるほどな……ボケからツッコミへの転身理由がそれかよ。
逆瀬川が瀬川に逆戻りだな。」
知美が唐木田にチョップする。
ゴッ!!
唐木田「いてーな!!」
知美「あ、ごめんごめん、つい反射的にツッコミがいっちゃった。」
唐木田「まぁ、いいけど。」
知美「とにかく、お兄さん、上手いこと言ったねー。今なら更にもう一枚、座布団プレゼント。」
唐木田「いや、いらねーし。そもそも座布団、プレゼントされてねーし。」
知美「あ、そっか。」
唐木田「ボケとツッコミ混じってるだろ、どっちだよ……」
知美「ツッコミ! ふふっ、今の私にはツッコミの秘密兵器がある……」
唐木田「その発言自体、ボケだろ、過去のお前、ツッコミ入れろよ……」
知美、自分のスクールバッグをあさる。
ゴソゴソゴソ……
知美「あー!? 忘れたっ!!」
唐木田「……ったくうるさいな。」
知美「ハリセン忘れた!」
唐木田「はああ!?」
知美「ハリセンがないと、ツッコミ出来ないよ!? どうしよう!?」
唐木田「お前は何、言っちゃってるの?」
知美「ハリセンと言えばツッコミ、ツッコミと言えばハリセン! まさに相思相愛!」
唐木田「馬鹿か、さっき既にチョップでツッコミ入れてんだろ、俺に!」
知美「はっ!? キック、パンチ、チョップあるし……1対多……ツッコミがハーレム状態!?」
唐木田、自分で発言しておいて、矛盾を感じ言葉を詰まらせる。
唐木田「ハリセンだって、他の用途ある……だろ……多分……」
知美「えっ!? まさかの多対多!? 多対多で、あんなことやこんなことをっ!?」
唐木田「おい、教室のみんな、ドン引きだから。」
背景、教室が重苦しい様子。ズーン……な感じで、他の生徒が、なんだこいつら的な表情で二人を見ている。
知美、汗ダラダラで気まずそうな顔をして、自席に座る。
知美「はい、すみません……。」
【モノローグ『翌日』】
知美「ツッコミになると言ったものの……ボケ担当がいないと、どうにもねぇ……」
唐木田「あぁ、そうだな。」
知美「なんか、私達、ハブられてるし!」
唐木田(いやいや、お前だけだから……)
知美「誰かがボケないと、私のツッコミと私のハリセンが錆びちゃうわ……」
唐木田(付き合ってらんねー……)
【モノローグ『その日の夜』】
寝る前、髪をおろしている知美、パジャマ姿のハリセンを振っている。
冒頭のエピソードでツッコミ入れられた時のパジャマ柄であること。
知美(!?)
【知美以外のガラスが割れた画面エフェクト、割れた奥の背景色は黒色】
【知美の背後に別のシーンがフェードイン】
舞台は入学式前日。制服を着てスタイルミラーを見ている、数週間前の知美がいる。
知美(この状況、これって……)
知美(過去)「……高校生になっても、みんなを笑顔に!
鮮やかにボケて笑いを取る、それが私のハイスクールライフッ!
ギャグ、良しっ! 気合、良しっ! 美少女、良しっ!」
知美「あんまり、うかれるな!」
知美が知美(過去)の後頭部をハリセンで叩く。
バシーン!
知美(過去)「あいたー!?」
【画面、知美以外が過去と現在でクロスフェード】
舞台は現在に戻り、知美、過去に飛ぶ直前の状態に戻る。
知美(はっ!?)
知美、顔が汗ばんでいる。
知美(まさか……冗談……よね……)
【モノローグ『休日』】
知美、ショッピングモールで買い物中。
知美「こないだのは、偶然か幻でしょ……さすがにね……気晴らし気晴らし。」
知美(!!)
【知美以外のガラスが割れた画面エフェクト、割れた奥の背景色は黒色】
【知美の背後に別のシーンがフェードイン】
舞台は校舎裏、知美(過去)と唐木田が対峙している。
知美、この間の光景を目にして驚きの表情。
知美(う、嘘でしょ……?)
知美(過去)が腕を上に振りかざそうとしている。
知美(過去)「Go my 上っ!! ビシッ!!」
知美「今、考えるのはいいや、あの時の恨み!! どりゃああああぁぁぁぁ!!!!」
【知美がドロップキックの恰好で、知美(過去)の腰に突撃】
知美「上じゃないから! んで、自分で『ビシッ』て言うなー!」
唐木田(!?)
知美、唐木田の呆然とした表情を指差して笑う。
知美「あはは、なんて顔してるの!?」
吹っ飛んで倒れている知美(過去)の所に駆けていく。
唐木田「おい、お前、大丈夫か!?」
知美(ん……あ、あれ?)
知美、深く考えている表情。
知美(そうか……やっぱり見えていないのか……)
【画面、知美以外が過去と現在でクロスフェード】
知美(ふぅ……これ、苦しい……)
知美、一息つく。
知美「でも、これで今の私のツッコミは終わった……」
知美、達成感を大声で叫ぶ。
知美「私のボケの贖罪を全て果たしたっ!!」
ショッピングモールを歩いている人達、知美を見て不信そうな表情をしている。
知美(はず……最近、ツッコミ入れたのって、このくらいだし……)
舞台は自室。知美がベッドの淵に寄りかかり、マンガを読んでいる。服装は私服。
【知美以外のガラスが割れた画面エフェクト、割れた奥の背景色は黒色】
【知美の背後に別のシーンがフェードイン】
居酒屋の席、六名くらいが座敷にて談笑している。知美(二十代)はスーツを着ている。
飲み会の途中で、着衣は少し乱れている。
知美(二十代)「今日こそ、私、全裸になっちゃうからっ!!」
同僚男「おっぱい! おっぱい!」
同僚女「ちょ、ちょっと、知美! やめなさいよ!? こら、そっち! あおるな!」
知美「いい大人がなにやってんだっ!?」
ズゴンッ!!
知美、知美(二十代)の後頭部を鷲掴み、頭(額)をテーブルに叩き付ける。
同僚女「きゃああっ!?」
知美「はあぁ……これ、私……? マジで……」
知美(二十代)の頭から魂みたいのが出ている。知美(二十代)の本体は気絶している。同僚女が知美(二十代)を介抱しようとする。
同僚女「ちょっとアンタ大丈夫!? 知美!? しっかり!」
同僚男「おっぱい……」
【知美以外、画面が未来と現在でクロスフェード】
知美、疲れた表情で汗ばんでいる。
知美(う、嘘でしょ……? 今の……未来の私……?)
【モノローグ『翌日』】
学校の教室、休み時間。知美、イラついた表情で唐木田に話しかける。
知美「おい、ちょっと屋上。」
唐木田「げ、何、その喧嘩を売っている表情は。」
そう言って、二人が教室を出る。教室はざわついている。
舞台は屋上へ移る。
知美と唐木田が対面している、距離は一メートル程度離れている状態。
知美「自分にツッコミ入れてきた。未来の自分っぽかった。」
唐木田、またか、と呆れた表情をしている。
唐木田「未来にツッコミかよ……で? どんな未来だったんだ?」
【唐木田から受けた指摘を回想】
知美(二十代)「今日こそ、私、全裸になっちゃうからっ!!」
同僚男「おっぱい! おっぱい!」
【回想から戻る】
知美、赤面する。
知美「う、うぅ……い、言えないー!!」
ズドスッ!!
知美が唐木田の顔面に張り手をする。唐木田、顔面を顰める。その後、鼻血が出る。
【鼻血が流れ落ちるアニメーション】
唐木田「うぐぐ……」
唐木田、片手で顔を抑える。
知美「ご、ごめん……」
知美、スカートのポケットからハンカチを取り出し、唐木田に差し出す。
唐木田「いや、いらん。ハンカチが汚れる。」
知美「だけど……」
唐木田「心配すんな、このくらい問題ねーし。」
知美「ごめん……」
唐木田、自分の着ているシャツの袖で鼻血を拭う。
唐木田「人の未来を聞くのも野暮な話だ……」
数分、時間が過ぎたような作画。唐木田が屋上で空を見上げている。
顔、鼻周りに少し血が残っている。知美、唐木田を心配な目で見ている。
知美「ごめん……だけど、これからどうすればいいのか……」
唐木田「そうだな……次に未来に飛んだら……」
知美「飛んだら……?」
唐木田「ツッコミを入れずに様子を見る……」
知美「ツッコミがツッコミ入れないでどうするの!?」
唐木田「馬鹿か!? 実験だ! そうしないと、何も分からないままだろ!?」
知美、偉そうに、高飛車な感じの表情をする。
知美「あぁ、そういうことね、知ってたわ。」
唐木田、うなだれて、溜め息を付いている。
唐木田「それ以外に何があるんだよ……お前を本気で殴りたくなってきた。」
【モノローグ『数日後』】
知美(!!)
【知美以外のガラスが割れた画面エフェクト、割れた奥の背景色は黒色】
【知美の背後に別のシーンがフェードイン】
知美(未来)の声が画面の外から聞こえる。
知美(三十代)「イケメン、年収、イケメン、年収……」
知美、辺りを見回す。
知美(ここ……誰かの家……?)
未来の舞台は冬。ワンルームマンションの一室、コタツが中央にあり、
部屋は服や雑誌などが散らばっている。知美(三十代)、すぼらな恰好。
知美の背を向けて、コタツでノートパソコンの画面を貼りつくように見つつ、パソコンのマウスのスクロールを必死に行っている。
【唐木田から受けた指摘を回想】
唐木田「ツッコミを入れずに様子を見る……」
【回想から戻る】
知美(ツッコミを入れない……我慢……)
知美、未来の知美の部屋を見渡す。
知美(ここ、どこだろう……? 私の部屋なの? しかも部屋汚っ!)
知美、忍び足で知美(三十代)とは逆方向の通路に足を運ぶと、キッチンが見える。
キッチンは使い終えた食器などで溢れかえり、ゴミ袋が幾つも満杯になって積み重なっている。知美、苦い表情。
知美(うわっ! キッチン汚っ!)
知美、仕方なく、辺りを見回す。
知美(未来)、パソコンを触っていたが、パタリと横になる。
知美(三十代)「あ゛ー……ダメだわー……」
知美が知美(三十代)の発言を聞いて振り向く描写。
【知美以外の画面が切り替わる。先程、未来に飛んだ直後と同じ状況】
【切り替えはスピード感のある画面エフェクト】
知美(三十代)「イケメン、年収、イケメン、年収……」
知美、唖然とした表情をする。
知美(えっ!? な、何……何が起こったの……?)
知美、知美(三十代)がコタツでノートパソコンをいじっている姿を見つめる。
知美(戻った!? さっき飛んだ時と同じ……どうすれば……)
知美、唇を噛み締めた後、重い表情で言葉を発する。
知美「あのぉ……」
知美(三十代)「!」
知美(三十代)、ある程度、想定した感じの表情で振り向く。
知美(三十代)「あー、過去の私か。」
知美「分かるのっ!?」
知美(三十代)「そりゃぁ、自分が過去にやったから、分かるわ。」
知美「そっか……やっぱり、未来の私なんだ。」
知美(三十代)「そうね、どうぞ、お好きにツッコミ入れていいわよ。」
知美「なんでこんな惨めな未来なの……サイアク……」
知美(三十代)「過去の自分とはいえ、腹が立つ物言いね。」
知美「う、ですよねー……」
知美(三十代)の手をグーにして差し出すと、知美が焦った表情で身を引く。
知美(三十代)「私があんたの顔面グーでツッコミ入れてもいい?」
知美「それは、勘弁で……」
知美(三十代)「折角だし、なんか飲むー?」
知美(三十代)が立ち上がろうとした時、知美が発言する。
知美「あ、あの、聞きたいことが!」
知美(三十代)「何? これが自分の未来かってこと?」
知美「そう、それ!」
知美(三十代)「昔、私も聞こうとしたから。最近になって、ひとつ、気になることがあったのよ。」
知美「な、何かあるのっ!?」
知美、身を乗り出した拍子に、ノートパソコンの電源ケーブルに足を引っ掛け、電源ケーブルが抜ける。
ぶちっ!
知美(三十代)「ぎゃああぁぁ!! 私のイケメンー!!」
知美「え? ノートパソコンなら、バッテリーで動くんじゃないの?」
知美(三十代)、真っ黒のノートパソコンを覗き込んで落胆している。
知美(三十代)「このパソコン、バッテリー死んじゃってるから……私のイケメン……」
知美「で、その、ひとつっていうのは……」
知美(三十代)、落胆したままボソッとつぶやく。
知美(三十代)「……忘れた。」
知美「なんでやねんっ!」
知美、知美(三十代)の背中を叩く。
バシンッ!
知美「しまっ……」
【知美以外、画面が未来と現在でクロスフェード】
知美、失敗した表情。
知美(あぁ…失敗……しかも、あの未来、サイアク……)
舞台は翌日、学校の屋上で唐木田と知美が会話している。唐木田、深く考え込んでいる様子から、知美を見て発言を始める。
唐木田「つまり、ツッコミを入れない限り未来から戻れない。
しかも一定時間、もしくはツッコミを必要とする期限が切れると、
また同じ状況を繰り返すことになる……と。」
知美「うん……」
知美、涙目になって、絞り出すように声を出す。
知美「もう嫌だよ……もうこの先を見たら、私……」
唐木田、苦しそうな知美を見て、目を逸らす。
唐木田(言われてもな……)
知美「私の未来って……」
唐木田「ランダム……もしくは、何かのキッカケで発生するのか……?」
知美「分からない、でも、未来の私は、ひとつ、何か言おうとしてた。」
唐木田「それは?」
知美「聞きそびれた。」
唐木田「何やってんだよ……まぁ、何を言いたかったのか、推測するか……」
知美「う、うん……」
唐木田「過去のお前に伝えることがあるとすれば……恐らく……」
知美「恐らく……?」
唐木田「何かの可能性を示唆しているとは思う。未来に関する何か。」
知美「未来に関する何か?」
唐木田「もう一度、未来へ飛ぶ現象があれば、確認できそうな気もするが、もう嫌なんだろ?」
知美「うん……これ以上、先の未来を見ちゃったら……」
もう、私の未来って決まっちゃってるのかな……?」
唐木田、突然、怒った表情に変わる。
唐木田「そんな不可解なことで、未来を決め付けられるわけがないっ!!」
知美(!!)
唐木田「そんなふざけたことが、許されるわけがないっ!!」
珍しく感情的に怒る唐木田に、知美、意外さと感謝の感情を抱く。
知美「なんか、むさ苦しい……でも、ありがと。」
唐木田「酷いな、褒めてるのか、それ……」
知美「本当に……ありがと。」
唐木田「悪い……だが、次に未来に飛んだら、腹をくくって、きちんと聞いてこい。」
知美「わ、分かったわ。」
舞台、自宅の洗面所。知美、ラフな格好で洗面台の前に居る。
知美(この感覚……飛ぶ!)
【知美以外のガラスが割れた画面エフェクト、割れた奥の背景色は黒色】
【知美の背後に別のシーンがフェードイン】
知美(私の未来は決まっているのか……)
舞台は和風の部屋。壁掛け時計以外、何もないシンプルな部屋、端に仏壇が置いてある。
仏壇の前に老婆が座っており、何か念仏を唱えているように見える。
知美「えーと……あ、あのー、すみません。あなたは私?」
知美(老婆)「! お久しぶりね、私。」
知美、愕然とした表情。
知美「やっぱりー!!」
知美(老婆)、知美とは対照的に落ち着いている。
知美(老婆)「どうぞ、ツッコミしに来たのでしょ?」
知美「いえ、その……その前に、聞きたいことがあって……」
知美(老婆)「何かしら?」
知美「私の未来は決まっちゃってるの?」
知美(老婆)、少し考えて発言する。
知美(老婆)「そうね……過去、私がツッコミを入れた未来で、発生しなかった未来があるわ。」
知美「え!?」
知美(老婆)「何かのキッカケがあったのだと思う。」
知美「それじゃぁ……」
知美(老婆)「私達の人生は時系列がずれつつも、複数の人生の螺旋が混ざり合い、
お互いが干渉しあって、少しずつ変化が出るのかもしれない。」
知美「変化……?」
知美(老婆)「だから、私にとって確定した現在でも、あなたにとっては未確定の未来。」
知美「!」
知美(老婆)「あと、私達に起きる事象は、私達の強い信念から生まれる物だと思うわ。」
知美「強い信念……」
知美(老婆)「私達って、何かひとつに夢中になると、それ一筋でしょう?」
知美「はい……」
知美(老婆)「いつも決めたら、それに夢中……あなたは私、分かるでしょう?」
知美「うーん、言われてみれば、そうかも。」
知美(老婆)、話ながら言いつつ、壁掛け時計を見る。
知美(老婆)「そろそろ、時間が巻き戻るわ、その時は、しっかりツッコミを入れなさい。」
知美「は、はい……」
知美(老婆)「手加減は無用よ。」
知美「はいっ! ありがとうございます!」
知美(老婆)「自分に敬語を使ってどうするのよ?」
知美「あ、す、すみま……」
【知美以外の画面が切り替わる。先程、未来に飛んだ直後と同じ状況】
【切り替えはスピード感のある画面エフェクト】
知美、舞台が巻き戻ったことを認識する。
知美(……戻った。)
知美(老婆)が念仏のようなものを唱えている。
知美(老婆)「いちまんだーにーまんだーさんまんだー……
じゅうまんだー……ごうけーい……五十五万なーりー……」
知美(良し……)
知美、一旦、拳に力を入れるが、少し考えた後、知美(老婆)の頭を軽く叩く。
知美「何、数えとるんだ!」
ペシ。
知美(老婆)「あら、痛い……過去の私。」
知美「ご、ごめんなさい……」
知美(老婆)「でも、久々ね、ありがとう……」
知美「いや、私、あなたに感謝しないと……」
知美(老婆)(?)
【知美以外、画面が未来と現在でクロスフェード】
知美、冷静な表情。
知美「これで……終わって……」
舞台、学校の屋上。知美と唐木田が話をしている。
知美「……って言われたけど、どうすれば……」
唐木田「強い信念か……それと一度、いつも決めたら、ひとつに夢中になる……」
知美「うん、未来の私に言われたけど、そうかも。」
唐木田「なるほどな。」
知美「分かったの!?」
唐木田「落ち着け。」
知美「あ、う、うん……」
唐木田「お前、ツッコミになってから、自分ツッコミされたか?」
知美、真剣に考える。
知美「ない……かも……」
唐木田「あと、ツッコミに転向した時、何かのキッカケを作らなかったか?」
知美「それは、ツッコミやろうと思った時、ツッコミになるって強く決めた。」
唐木田「それがツッコミになるという強い信念を宣言したからじゃねーのか?」
知美「信念を宣言した……?」
唐木田「で、その信念は……ひとつだけだ。」
知美「え?」
唐木田「ツッコミを宣言した後、自分ツッコミされていないなら、前の信念は消える。」
知美「じゃぁ、今の信念、ツッコミを……」
唐木田「その信念を、別の信念に書き換えればいい。」
知美「そ、それは……」
唐木田「無理か?」
知美「う……」
唐木田「これはお前が決めることだろ。今、ここに居るお前が。」
知美(私が……決める……)
知美(私が……)
知美、少し考えてから、屋上の端へ向かう。辿り着くと、大きく息を吸い込む。
すうぅ……
知美(うん!)
知美「私の未来は……今の私が決めるーーーーっ!!!!」
知美、唐木田の所に戻ってくる。唐木田、すましているが、温かい表情をする。
知美「今の私が変える、今の私が未来を変える。」
唐木田「これで、どう変わるかは知らねーけどな。」
知美、気分が晴れた表情。
知美「分かってる。だけど、スッキリした、ありがと。」
唐木田、無言で微笑む。
舞台は下校中の路地に移る。知美と唐木田が一緒に歩いている。
知美「結局、これじゃ私のお笑いハイスクールライフが……」
唐木田「まだそんなこと言ってんのか……しょうがいない奴だな……」
知美「だってさ、私のギャグで笑ってくれる人がいたら、すごく嬉しいから……」
知美、両手で目を覆う。グス……と泣いているような感じ。
唐木田「ちょ、おい……」
唐木田、仕方なさそうな表情。
唐木田「あぁ、分かった、分かった。俺がボケかツッコミやればいいんだろ、泣くな。」
知美「残念、嘘泣きでした~。」
唐木田「おまっ! ふざけんなっ!」
唐木田、自分のカバンからハリセンを取り出し、知美の額を叩く。
バシーン!!
知美「あいたー!?」
唐木田「ったく……」
知美、叩かれて赤面しているが嬉しそうな表情。
知美「お笑い要員ゲット成功~。」
唐木田「前言撤回。」
知美「めでたしめでたし。」
唐木田「ちょ、前言撤回って言ってるだろ!?」
知美、冷静な表情。
知美「却下。」
知美、唐木田、二人共、恥ずかしそうに路地を歩き続ける。
唐木田「……。」
知美「……。」
唐木田「お前は……やっぱりボケ向きじゃねーか?」
知美「そ、そう? そうかな?」
知美、ふと気付いた表情で唐木田を見る。
知美「あのさ、なんでハリセンが入ってたの?」
唐木田、頬を赤らめる。
唐木田「お、お前がハリセン忘れたら面倒だろ……ギャーギャー騒ぐし……」
知美「じゃぁ、信念にならないくらいでボケ重視でいこうかなぁ。」
唐木田「幾らでもツッコミ入れてやる、容赦なく。お前が自分ツッコミされる隙もないくらいに。」
住宅地の絵、知美と唐木田の描写なし。
【住宅地を映し、上空へカメラが動きながら追加のセリフが浮き出る】
知美「改めて、よろしく、からあげ君。」
唐木田「唐木田だっ!」
バシーン!!
知美「いいたー!?」
【上空へカメラ移動はそのまま引き続きつつ、フェードアウト】
【右下にENDの文字が表示がフェードインして、マンガは終了する】
脚本形式でのデジタルマンガ原作、という前提で書きましたので、
なかなか読みづらい部分もあったかと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。