第27章:風と炎の戦い
コロシアムは満員だった。
十六強の戦いが始まろうとしていた。
残るは大会最強の戦士たち。
闘技場を数千の観客が囲み、
主席の観覧席にはアリス王女(ランク9)、
レイン(57歳・ランク10)、
カエル(48歳・ランク10)、
セラフィーヌ(62歳・ランク10)が座していた。
彼らは皆、この戦いが特別なものになると理解していた。
アナウンスが響いた。
――次の試合!
――大陸最速の戦士!
――リュウゼン「幻風」!
群衆が歓声を上げる。
リュウゼンは静かに入場した。
髪が風に揺れ、
その存在は穏やかでありながら危険だった。
続いてアナウンス。
――そして対戦相手!
――謎の剣士「あれ」!
――アレン!
アレンは黒い布で目を覆い、
腰に暗き刀を携え、
静かに闘技場へ歩み出た。
観客は息を呑んだ。
この戦いは違う。
リュウゼンはアレンを見て微笑んだ。
――やはりお前か。
アレンは首を傾けた。
――カエロン…久しいな。
観客は驚いた。
――知り合いなのか?
リュウゼンは笑った。
――昔、村の大会で戦った。
――俺が勝ったが、価値ある相手だった。
――だが今日は最後まで戦う。
アレンは静かに答えた。
――同意する。
審判が手を上げた。
――始め!
風が吹き荒れ、リュウゼンは消えた。
観客が驚愕する。
――速すぎる!
瞬間、リュウゼンはアレンの背後に現れ、剣を振り下ろす。
だがアレンはすでに動いていた。
剣がぶつかる。
――ガキン!
リュウゼンは後退した。
――感覚が鋭くなったな。
アレンは落ち着いて答えた。
――お前の速度もな。
リュウゼンが手を上げると、風が渦を巻いた。
――もっと面白いものを試そう。
地が震え、岩が飛ぶ。
アレンは刀を抜き、斬り裂いた。
次に雷。
稲妻が落ち、地面を爆ぜさせる。
観客が叫ぶ。
――四元素を操る!怪物だ!
アレンは分析した。
リュウゼンは風、土、水、雷を操る。
しかも戦い方は極めて攻撃的。
アレンは深く息を吸い、剣に炎を宿す。
リュウゼンは笑った。
――炎か。いいだろう。
風が刃となり、見えぬ斬撃が飛ぶ。
アレンは正確に避け続けた。
だが攻撃は止まらない。
観覧席でアリスが呟いた。
――あの盲目の者…すべてを分析している。
セラフィーヌがうなずいた。
――本能ではない。考えて戦っている。
戦いは続いた。
リュウゼンは幽鬼のように動き、攻撃は追えぬほど速い。
だが少しずつ変化が起きた。
アレンの動きが減り、
避ける距離が短くなり、
攻撃に近づいていった。
リュウゼンは眉をひそめた。
――何をしている?
アレンは静かに答えた。
――学んでいる。
突然、アレンは剣で地を打った。
炎が広がり、熱が空気を歪ませる。
風は乱れ、雷は精度を失い、水は蒸発した。
リュウゼンは理解した。
――熱の結界で俺の元素を弱めたか。
アレンは剣を掲げた。
――その通り。
リュウゼンは笑った。
――なら終わらせよう。
風が爆発し、速度がさらに増す。
瞬間移動のように現れ、剣を振り下ろす。
だがアレンは避けず、刀を構えた。
剣がぶつかる。
その瞬間、アレンが言った。
――待っていた。
彼は戦いの間ずっと、リュウゼンの歩数と速度を計っていた。
そして今、出現位置を完全に読んでいた。
炎が爆ぜ、斬撃が走る。
リュウゼンは反応したが遅かった。
刀は彼の首元で止まった。
闘技場は静寂に包まれた。
審判が手を上げた。
――勝者、アレン!
群衆が爆発的に叫んだ。
優勝候補の一人、リュウゼン「幻風」を倒したのだ。
リュウゼンは剣を下ろし、笑った。
――今回は…お前の勝ちだな。
アレンは刀を収めた。
――良い戦いだった。
観覧席でアリス王女はアレンから目を離さなかった。
彼には何かがある。
何かが噛み合わない。
そして思い出した。
――森を二つに裂いた者。
アリスは低く言った。
――レイン…
騎士が答えた。
――はい、王女。
アリスは静かに命じた。
――あの青年を調べなさい。
――本当は誰なのか…知りたい。




