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魔法が使えなくても剣と素手と、あと何か得体の知れない力で俺は勝つ  作者: 佐木凛人
第1章

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2 謁見


 1時間いや2時間は経過しただろか、外殻も張ってない、生身のキャッドゥの顔に向かって本気の拳をお見舞いしたことで副団長から説教を受けている。


「――だいたい、俺が静止しただろ! なぜ殴った!」


「戦闘に夢中で聞こえていなかったです……」


 聞こえた上で殴ってしまいました。

 なんて言ったらお説教が長引くのは、目に見えてる。

 この怖い顔の人だってお忙しいはずだ、長引かすのはどちらにとっても不都合のはず、だからこれは仕方のない嘘だ。


「――聞いているのかアーサー・グレイヴ」


「……はい!」


 しまった。

 右から左に流す時間が長かったか。


「……今日のところはここまでにしとく、領主様も待っているからな」


「ありがとうござ――」


「だが、後日この続きを話すからな」


 まじか……終わりじゃないのか。


「ついてこい、領主様の元まで行くぞ」


 怖い顔が俺から目線を外し、領主様の館に続く道に向かって歩き始め、その背中を付いていく。



 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



 遠い……

 訓練所から領主様のいる館までは一本道で距離も遠くない、いつもだったら考え事をし始めていたら通り過ぎそうになるぐらいなのに……

 ただでさえ、自分より上の立場で碌に話したこともないのに、数時間にも及ぶ説教があったことにより、一層と気まずくなっている。

 よし、ここは俺から話しかけてみよう。


「あの――」


「お前は俺のことをどう思う」


「……え?」


「いいから言え」


「……強いです」


「他」


「身長が高い」


「他」


「……怖い……顔が……」


「他は」


「その……嫌いではないです」


「そうか」


 副団長が目を細める。

「そうか」ってどういう意味だ? まさかと思ってたけど本当にそういう意味で聞いてきたのか?


「……ならば、俺に何か引かれる感覚はないか」


 あー、本当にそういう意味だこれ。


「その……副団長」


「なんだ」


「まずはお友達からで」


「黙れ」


 いつの間にか領主様の館に着いていた。

 副団長が館の護衛騎士に軽く挨拶を済ませ、館内に入って行く、俺もそれに続いていく。


 館に入ると、白髪の老人がこちらに一礼をした。


「お待ちしておりました、ヴァルド副団長、騎士アーサー」


 使用人のグレゴール。

 エルドラムに来て間もない頃から俺に色々と教えてくれた優しい人。


「お待たせしてしまい申し訳ない、不測の事態が起きてしまいまして……」


「若い剣はよく鳴るようですな」


 そう言って、グレゴールはゆるやかに目を細めた。


「さて、来ていただいて早々ではございますが、アルドリック領主がお待ちになっております」


 グレゴールがそう言うと領主様がいる一室に案内された。

 重厚な樫の扉にエルドラムの紋章が彫り込まれ、如何にも凄い人が居そうな雰囲気がしており、何度かこの部屋には、入ったが未だに緊張してしまう。

 グレゴールが扉を押し開ける。


「領主様、ヴァルド副団長と騎士アーサーがお見えにました」


「うむ、ご苦労であった、下がってよいぞ」


 グレゴールが一礼をして、退室する。

 領主様が俺の方を見る。

 

「聞いたぞアーサー、外殻を張ってないキャッドゥをぶん殴ったらしいな」


 ガハハと豪快に笑う。


「申し訳ございま――」


「よいよい、身内とはいえ武約戦なのだ、そのぐらいやらなければな」


 言葉を遮り、領主様がそう告げる。

 領主様のこの豪快さと懐の深さに3年前から救われてる。


「私が監督していなが――」


「よいと言っているであろう、硬いやつだな」


 今度は副団長の言葉を遮り、そう言いながらまた豪快に笑った。


「さて、アーサーよ」


「はい」


「キャッドゥとの戦いに勝ったということは、お前を王都に推薦するということになるが……お前は王都に行く覚悟はあるか」


 くだらない夢を剣に乗せてしまったんだ。

 覚悟は決まってる。


「あります!」


「そうか、ならよし」


 ガハハと笑う。


「とは言っても、登剣礼までまだ4ヶ月ほどある、その覚悟を忘れるなよ」


「……絶対に忘れません、覚悟もこの日のことも」


 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


 謁見を終え、副団長と共に帰路に着く。

 ……そうだ気になることがあった、何故俺が推薦候補に挙がったんだ?

 聞いてみるか。


「副団長」


「なんだ」


「なぜ、私が推薦候補に挙がったんですか」


「……」


 あ……聞いちゃ駄目なやつだったか?


「……キャッドゥは、剣術、魔法共に優秀だ。あくまでエルドラムという地方の小領地の中でな」


 続けて副団長が話す。


「例え、地方で優秀でも王都でもそうとは限らない……今のお前の剣は平凡で魔法も使えない、だが、お前には可能性がある」


「可能性……暴力のことですか?」


「それもあるが、別の可能性だ。まだ自覚はないようだな」


 半ば呆れた様な雰囲気を出しながら副団長がそう言った。


 今の副団長からの会話から考えるに俺にはキャッドゥの能力を上回る才能の塊であるということ。

 自分の才能が怖いね。でも、別の可能性ってなんのことなんだろう。


「精進しろ、アーサー・グレイヴ。王都はお前が思うより、ずっと遠い」


「はい」


 返事をしながら、空を見上げた。

 空には星が目立つ様になっていた。

 4ヶ月。今のままでは、おそらく王都には太刀打ちできない。だから、これからは今まで以上に剣を振る。

 重くなった剣に振られるのではなく、俺が剣を振ってみせる。

 夜風が、剣帯を揺らした。

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― 新着の感想 ―
「暴力のことですか?」 「それもあるが」 ……それもあるんだ!? 確かに喧嘩殺法で勝ってたけども! タイトルの得体の知れない力のことなんですかね。期待です!
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