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第二話
強力な同盟網を築き上げた北条家に、もはや対抗できる勢力は皆無だった。
房総の里見、常陸の佐竹。
名だたる諸家が次々とその牙に沈んでいく。
そんな中、一人だけ空気を読まない男がいた。小田氏治である。
「ふん……この小田氏治を無視とはな。俺を恐れているのだろう?」
実際のところ、恐れられていたのではなく、あまりにも脅威にならなかっただけだ。しかし歴史とは、ときに無視された者の逆襲によって書き換えられる。
北条氏康の同盟者・太田資正は佐竹攻めに兵を割き、居城・岩付城の守りはガバガバ。そこへ、氏治が滑り込むように突撃した。
「生き延びるってのは、綺麗事よりずっと下品なもんだなぁ」
わずか数十の手勢で岩付城を奪い取った氏治。その胸中では、神話に登場する英雄と自分を重ねていた。
もちろん、本人以外そんな幻想は抱いていなかったが。




