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パラサイトマッスル  作者: Aju


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6 ピッチに立つ

 サッカーはスピードやピッチでの戦略眼が大きな要素と言われているが、実は「格闘技」と言われるほど体幹やパワーも必要なスポーツだ。


 小林(さとる)は万年補欠のサッカー部員だった。

 中学2年生。

 流行りの漫画に影響された小学校からの友人の神代(じんだい)(あやめ)に誘われてサッカー部に入ったものの、試合に出られるポジションを与えてもらえることはないまま2年生になっていた。


 このちょっと女の子みたいな名前の友人は、小学生の頃は本当にどっちかわからないほど華奢な体つきとかわいい顔をしていた。

 それが中学生になってサッカー部に入るとみるみる体が大きくなり、パワーもスピードもついて学校も期待する選手になっていった。

 もともと「かわいい」と言われるような顔だから、イケメンのサッカーヒーローとして、女子にもよくモテた。


 一方の悟は小学生のままで成長が止まってしまったのかと思うくらい、いっこうに体が大きくならない。 

 神代は、その戦略眼とドリブルの上手さでミッドフィルダーとして活躍していたが、悟はずっと控え選手のままでベンチを温めている。


 戦略眼はあるのだ。

 次にどの選手がどこに来るか——は神代と同じように読むことができ、練習の紅白戦では常に神代のセンタリングコースをふさぐような位置に出ることができる。

‥‥のだが、簡単に当たり負けて抜かれてしまうのである。

 要はパワーの違いだった。


「おまえは才能はあるんだから、もっとパワーをつけた方がいい。そのひょろっとした体をなんとかすればすぐにレギュラーなんだが‥‥」

 外部からコーチとして雇われている監督の先生はそんなふうに言うが‥‥。

 悟だって言われた方法で筋トレをやっていないわけじゃない。


「う〜ん。体質かなぁ‥‥。センスはあるのに惜しいなぁ。」

 先生はそんなふうに言う。

 しかし、試合で使ってもらえるわけではない。

 一応、サッカーの強豪として専門のコーチまで呼んでいる学校だから、対外試合で負けるわけにはいかないのだ。


 悟は自分の貧弱な体が恨めしかった。

 小学生の頃からちっとも体格がよくならないのだ。


 そういえば親父もひょろっとした青瓢箪ふうで、とてもスポーツをやるようには見えなかった。

「学生時代は陸上部だったんだ。見かけはひょろっとしているようでも、必要な筋肉さえつけばスポーツはパワーだけじゃないからな。」

 親父はそんなふうに言っていたが、どういう成績だったかについてはお茶を濁された。


 そりゃあ、1人で走ってるだけならぶつかり合いはないからね。

 結局オレは、(あやめ)の引き立て役でしかないまま卒業することになるのかな‥‥。


 ただ、今やめると思いっきり負け犬になってしまう気がして、悟はサッカー部をやめるという選択もできないままでいるのだった。


 菖はそんな悟に対しても小学生の時と同じように付き合ってくれていたし、食べるものなんかのアドバイスもしてくれている。

 だから悟もそんな菖と変わらずに付き合おうとはしていたたが、どうしてもどこかにどす黒い思いがわだかまってしまう。

 悟はそれを懸命に隠した。

 これで友達まで失いたくはない。


 そんな悶々とした日々を送っているある夜、悟は夢の中で妙な声を聞いたような気がした。



 力が欲しいか?



 ふくらはぎに痛みを感じて、悟は目を覚ました。

 低温火傷?

 小学4年生の頃、電気あんかで一度やったことがあり、その時の痛み方に似ていた。


 低温火傷は真皮まで火傷するので治るのに時間がかかる。

 それ以来、悟は湯たんぽに変えていたが、またくっつけたまま熟睡しちゃったのか? と自分のドジさ加減に内心舌打ちしながらかけ布団の中の足を見てみる。

 手で触ってもふくらはぎに鈍痛はあるが、火傷のようなちくちくした痛みはなかった。

 心なしか、ふくらはぎが腫れているような感じもする。

 湯たんぽは冷え切っていた。


「何時だ?」

 枕元の時計を見ると午前4時半。


「もっかい、寝よ‥‥」

 悟は布団をかぶり直した。



 それからしばらくしてからだった。

 悟が試合でバックスに起用されたのは。


「体ができてきたな、小林。努力の結果だな。おまえの才能を見せてこい!」

 先生はそう言って、ぽんと悟の背中を叩いてピッチに送り出してくれた。



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