14 蛇
試合は勝った。
4対1の圧勝だった。
後半、城南中学の当たりがキツくなり、悟たちの福富中学は後半だけで3本のフリーキックを手に入れた。
うち1本はファールがゴールエリア内だったため、キーパーとの1対1の勝負になった。
これを決められない菖ではない。
4点目が入ったところで城南中学のイレブンの心は折れたようだった。
悟に仕掛けられる当たりも、心なしか力がないように感じられた。
それを弾き飛ばしてドリブルで持ち込もうとした時にロスタイムが切れ、ホイッスルが鳴った。
惜しい。
もう少しで悟が2つ目のゴールを決められたのに。
これじゃあ、菖のハットトリックばかりが目立つじゃないか。
試合が終わってもまだ少し膝が痛んでいた。
ベンチに戻ってくると、四季平先生がメンバーを拍手で迎えてくれた。
「よかったぞ。特に小林、前半でのおまえのあの強引な1点が流れを作ったぞ。おまえ、足どうかしたのか?」
「あ、いえ。大丈夫です。」
まだ膝関節が軋むような感じがある。無理をしすぎたかもしれない。
「痛めたんなら、体育館に行ってケアしてもらってこい。」
「いや、ほんと大丈夫っす。」
悟は行きたくない。
あの若造のマッサージ、どうも合わない。あのせいで途中で力が抜けたみたいになったような気がする。
「そう言わずに行ってこい。スポーツ選手はきちんと体のケアをしないと長続きしないぞ? 長森先生は全日本のトレーナーまでやってるような人だ。ちゃんと診てもらってこい。」
悟がしぶしぶ体育館に行って入り口から中に入ると、肝心の長森先生はそこにはいなかった。
まずいことに、あの若造の施術台だけがちょうど空いている。
「あ、こちらにどうぞ。」
樋山とかいうあの若いのが、甲高い声で言って大げさに両手で空いた施術台を指し示した。
悟はひくりと顔を引きつらせて、そのまま無言で体育館を出る。
あいつだけはいやだ。どうにも合わない。
体育館の外に出た頃には、もう膝の軋みもなくなっていた。
光太郎は少しヘコんでしまった。
昨日の手技がよくなかったんだ‥‥。すっかり信用を失ってしまった‥‥。
それにしても、何がいけなかったんだろう? 奇妙な感触だった。あんなのは初めてだった。
トイレから帰ってきた長森先生が、そんな光太郎を見つけて声をかけてきた。
「樋山くん、どうかしたのか?」
「あ、長森先生‥‥」
ちょっと言い淀んでから、光太郎は思い切って聞いてみることにした。
「押したとき、筋肉が逃げるような感じになることってありますか?」
「?」
と長森先生は、光太郎の言っていることがわからないようだった。
その夜、悟はまた奇妙な夢を見た。
蛇が。
悟は身長ほどもある深い穴の中に立っていて、足元には蛇がうじゃうじゃと蠢いている。それが悟の足に絡みついてくる。
噛まれるわけではないが、ぬるぬると気持ちが悪い。
よく見ると蛇は頭も尻尾もわからない——というよりミミズなんかとも違って両方が尻尾みたいな感じの生き物で、それが悟の足から腰へと絡みついて這い登ってこようとする。
悟は足を引き抜こうとするが、泥に長靴をとられたときみたいに引き抜くことができない。
穴のふちに手をかけようとするが、あと少しが届かない。
蛇は腰を過ぎて、胸の辺りまで登ってきた。
「うひああああああああ!」
自分の声で目が覚めて、ベッドの上に起き上がった。
びっしょりと寝汗をかいている。




