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息苦しい

作者: mana

ピピピピピピ・・・


今日もいつも通り携帯のアラームで起床する。

起きる前にいったい何の夢を見ていたのかなんて何一つ思い出せもしないのに、「帰りたい」そんな気持ちだけが胸に燻っている。


「帰るも何も、ここが自宅だわ」


そんな風に思いながら、重たい体を持ち上げる。

目が覚めるのと、朝起きるのが違うと感じるようになったのは、いつからだろうか。


何となく、ボタンを掛け違えたままになってしまっている感覚を無視しながら、布団から出て歯磨きをする。

朝食なんてとっている時間はない。

私の朝のルーティーンは、目覚める、コンタクトを入れる、歯磨きする、顔を洗う、服を着る、顔を作る、ただこれだけ。


おしゃれに見られたい訳ではない。

一般的な社会人として、白い目で見られない程度に、身なりを整えられればそれで良いのだ。

プラスの感情を持ってもらう必要はない。過不足なく0評価をもらえれば事足りる。


こんな生活を楽しいと思っているのか、生きていると言えるのかと、思う人たちがいることも重々承知ではあるのだが、そもそも私は「いきたい」と思っているのかさえ疑問なのだ。


死にたいと思う訳ではない、自身を傷つけることもない。痛そうで怖いからとピアス穴さえ、開けられないような人間なのだ。

ただ、死にたいと思っていないからといって、生きたいと思っていると言えるかは怪しいと考えている。私という人間はそういう流派なのだと、割り切ることにしている。


突然、息苦しさを感じることがあるし、自分の身なりを整えることに情熱を燃やし、努力をしている人を見て、キラキラ輝いているように見える心は残っている。出来れは、私自身も何かに情熱を燃やして、生きていることを実感したいなと思うことは、多々ある。


でも、できないのだ。

情熱を持っているように見せているだけで、実際のところ、何も燃えてはいないのだ。悲しいくらいに、何もないのだ。


世の中には、楽しそうな「振る舞い」をしているだけで、心の底から心底楽しいと思っている人ばかりではないことも重々承知いしている。そのような人を見て、見下すようなこともなく、しっかりとなりたい自分、理想の自分を追い求めていてかっこいいなと思う。


ただ、自分がその行動を取れるかというと、途端に話が変わってくる。


そもそも、私は明日を迎えたいと思っているのかもわからない。

明日が来てしまうから、受け入れているだけであって、来て欲しいか来て欲しくないか、「明日」というものが、招待制のものであるならきっと私は、明日を自分に呼びつけることはしないだろう。


そうはいっても、積極的に明日を拒絶しているのかというとまた、話は変わってくる。私は毎日睡眠をしっかりととっているし、食事もしっかりとっている。「食事」は明日以降も生きていくための人が行う行為だと私自身は感じているので、つまり食事を摂るということは、明日を生きる意思があることと同義なのではないかとも感じている。


全てを拒絶し否定することもできないが、全てを受け入れ肯定することもできない。あちらを立てればこちらが立てられず。まず、何をどうしたいかわからないというのが、私における事実なのである。


だから今日も、重たい体を持ち上げながら、一生懸命に過ごしている。


真綿で首を絞められるよう・・・という言い回しを知ったのは随分と昔、中学生頃だった気がするが、その言葉の意味を今になって体感するとは思っても見なかった。


目覚めた瞬間に目の前にあるものが、こんなにもじっくりとした苦しさだとは思わなかった。

ただ、これが一般的な人類の生活なんだろうとも思う。私は特別不幸でもなければ、特別絶望的ということもない。

皆が何となく感覚で感じ、直視することのメリットが感じられないから、あえて直視せず「そういうもの」として見過ごしているものに対し、なぜか直面して言語化したいと思ってしまう、難儀なサガを持ち合わせているだけなんだ。


ああ、今日も私は、息苦しい。

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