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カロリーボム

作者: はらけつ

BOMB!


どこかで、爆発している。

人が、どこかで、爆発している。


未だ、爆発している。

忘れた頃に、爆発している。


一日、2,500キロカロリー。


これが、人一日の、摂取可能カロリーである。

これを、1,000キロカロリー上回れば、その人間は、爆発する。


一食、800キロカロリー。


これが、人一食の、摂取可能カロリーである。

これを、300キロカロリー上回れば、その食事は、爆発する。


健康対策の為、生活習慣病対策の為、この仕組みが作られてから、久しい。

カロリーの取り過ぎが、爆発を誘引することになってから、久しい。


幾ら注意・喚起・警告しても、野放図に太る人間は、後を断たない。

世界的に、後を断たない。


先進国の、健康年齢低下。

途上国の、寿命年齢低下。

中堅国の、若年層不健康化。


世界的に、健康対策に手を打つことは、気象対策と並んで、待った無しとなっている。


ベルデは、歩く。

車道を、消防車と救急車が、行き過ぎる。


最近では、すっかり、消防車と救急車の出番は、少なくなる。

正確に云えば、カロリーに関する爆発で、消防車と救急車が出動することは、少なくなる。


カロリー・スカウターが、出来てから、だ。

カロリー・スカウターを、一人一台、持つようになってから、だ。


カロリー・スカウターは、サングラスの様なもの。

眼許に、装着する。


カロリー・スカウターを通して見た食物には、表示される。

その食物を摂ることで、摂取するカロリーが、表示される。


カロリー・スカウターは、表示する。

レンズ面に、その日の摂取カロリーを、表示する。

《あと何キロカロリー、摂取可能》かも、表示する。


カロリー・スカウターがあれば、爆発することはない。

爆発に巻き込まれることも、まあ、無い。


それでも、時に、爆発が、起こる。

カロリー・スカウターを使っていても、爆発が、起こる。


人間の思考停止・自暴自棄は、恐ろしい。

人のことを考えないことは、恐ろしい。

人間の性は、悲しい。



ベルデは、帰る。

家に、帰る。


「ただいま」

「おかえり、です」


ベルデが、「ただいま」をする。

マスが、答える。


「今日、爆発あったで」

「ああ、今、ニュースでやってます」


ベルデは、テレビ画面を、覗き込む。

時間的にも、場所的にも、ベルデが遭遇した爆発、らしい。


「何て?」

「ただのカロリー・ボムやなくて ・・ 」

「なくて?」

「自爆テロ、らしいです」

「自爆テロ?」

「そう、自爆テロです」

「と云うと ・・ 」

「そう、あれです」


あれ、か


バルデは、うんざりして、思う。


MKS。

メタボ解放戦線。

それが、最近、自爆テロを実施している組織、だ。

今日の自爆テロも、MKSの仕業、らしい。


MKSの掲げるモットーは、「人間は、カロリーに左右されず、自由に生きて行くべきだ」。

よって、カロリー・ボムと、それに関する政策等に、大反対している。

その為には、実力行使もテロも、いとわない。


現に、軍事力を、備えている。

実行部隊も、組織している。

少なくないパトロンも、いる。


一つ、言えることは、


皆、太っている。

例外無く、多かれ少なかれ、太っている。

上から下まで、指揮官から兵士まで、皆、太っている。

なんなら、パトロンも。


まさに、名は実を、表わしている。


MKS。

メタボ解放戦線。


反政府組織、だ。

が、『裏では、政府組織の一部と繋がっている』と云う噂が、有る。


無理も無い。


政府組織にも、いや、政府組織だからこそ、多い。

制限無く食べたい者が、多い。

『俺らは、一般庶民と、格が違うんじゃ!』との本音が、垣間見える様だ。


そう云うわけで、例の如く、上は、表も裏も、ズブズブだ。

皺寄せを被るのは、庶民ばかりなり。

カロリー・ボムの被害に遭うのは、庶民ばかり。


役人や金持ちや何たらかんたらは、値は張るけれど、カロリーが低くて美味いものを、たらふく食っている。

安くて、カロリー低くて、美味しくて、量のあるものは、おいそれと無い。


カロリーが低ければ、美味しくなかったりする。

カロリーが高ければ、美味かったりする。

そして、カロリーの高低と値段の高低は、正比例する。

カロリーの高低と量の高低も、正比例する。


「飯、何にします?」


マスが、訊く。


「何が、あるねん?」

「う~ん、分かってるのは、大根一本、人参一本」

「それだけ?」

「それだけ、です」


マスの顔を、ベルデは、見つめる。


「しゃーないな、ほな、外食にしよう」



ガラッ


ラーメン屋に、入る。

ラーメン屋と云っても、今時のラーメン屋ではなく、町中華のラーメン屋、だ。


「いらっしゃい」

「おっちゃん、いつものラーメンと餃子を、二つずつ」

「了解」


店内は、いつも油の匂いが、している。

そこはかとなく、ベトついている。


が、不潔では無い。

衛生的、だ。

清潔感さえ、ある。


店主は、作る。。

鉢で、スープを、合わせ作る。


麺を、湯掻く、湯切りをする。

鉢に、麺を入れる。


鉢の麺とスープの上に、トッピングする。

叉焼とシナチクと海苔を、トッピングする。


そして、振り掛ける。

スパイスの様で、スパイスで無い。

カロリー・ボムの元である、ボムボムを、振り掛ける。


ボムボムは、あらゆる食物に、振り掛けなければ、ならない。

素材そのままであろうと、刺身であろうと、口に入るものには、振り掛けなければ、ならない。


ボムボムを振り掛けずに、食物を提供した者に、食物を食した者にも、刑が、科せられる。

執行猶予は付かず、即、懲役刑、だ。

懲役二十年、だ。

問答無用、だ。


これは、外食産業であろうが、テイクアウトであろうが、家庭内の食事であろうが、関係無い。

故に、道行く人はみんな、マイ・ボムボムを、持っている。

食べる前に、一応、ボムボムを、振り掛ける。


カロリー・ボム政策と云うか、ボムボム浸透と云うか、そう云うもののお蔭で、国民の健康は、明らかに、上昇している。


平均寿命が、伸びている。

健康年齢も、伸びている。

体形が、スリムに、なっている。


対して、デメリットも、ある。


身長が、頭打ちに、なっている。

覇気が、無くなって来ている。

脱力感を訴える人が、最近、多い。


どちらにもメリット・デメリットはあるが、対効果では明らかに、カロリー・ボム政策に、利が有る。

その理由・根拠の元、カロリー・ボム政策は、粛々と、推し進められている。



ベルデもマスも、マイ・ボムボムを、持っている、持ち歩いている。

それを、振り掛ける。

ラーメンと餃子に、満遍なく、振り掛ける。


スチャ


カロリー・スカウターを、装着する。

ラーメンと餃子を、見る。

レンズは、ラーメンと餃子のカロリーを、映し出す。


両食物のカロリーは、800キロカロリー以内で、OKマークが、青く表示されている。

摂取カロリーも、一日の限度枠以内なので、OKマークが、表示されている。


ベルデは、カロリー・スカウターを、外す。

ほぼ同時に、マスも、カロリー・スカウターを、外す。

こっちも、オールOKだった様、だ。


「いただきます」

「いただきます」


そして、ようやっと、二人は、食べ始める。

食べる前のこの手順は、正直、面倒だ。

でも、やらないと、爆発する。

死んでしまう。


ズボラで、死ぬわけには、いかない。

健康で長寿にも、直結する。

何より、捕まる、罪人になる。



ビー!ビー!

ビー!ビー!


店内に、警報音が、出し抜けに、響き渡る。


「何や!」

「何!」

「どうした!」

「えっ!」


人々のざわめきが、うるさく重なる。


この警報音は、カロリー・ボム爆発前の警報音、だ。

この警報音がして、数十秒の内に、カロリー・ボムは、爆発する。


ベルデは険しい顔で、サッと、店内を見廻す。

素早く装着した、カロリー・スカウター越しに。


店内に、それらしいカロリー過多は、無い。


とすると、


テロか


ベルデは、店外に、素早く出る。

店外を、見廻す。

店の裏手に、それらしきカロリー過多が、ある。


そして ・・


BOMB!


辺りは、店ごと、爆発する。


ベルデは、伏せて、爆風を避ける。

爆風が、通り過る。


! ・・ ・・


辺りが、静かに、なる。

ベルデが、身体を起こす。

背筋を伸ばし、辺りを、見廻す。


熱風は、立ち去っていない。

熱風を受けつつ、ベルデは、見廻す。

アッと云う間に、辺りは、瓦礫と炎の山、だ。


「 ・・ マス ・・ 」


ベルデは、呟く。


「はい?」


ベルデの背後から、声が、響く。

ベルデが、振り向く。

そこには、マスが、いる。


「大丈夫、やったんか?」

「大丈夫です、大丈夫です」


マスは、二カッと笑って、続ける。


「ベルデさんの後に付いて、すぐ出たから、大丈夫」

「そうか。

 良かった」

「警報音が鳴り響いて、ベルデさんの血相が変わって、

 ベルデさんがすぐ店出たら、誰でも追いかけます」


マスは、屈託無く、微笑む。


「何やと、思う?」

「テロ、ちゃいますか?」


マス、一刀両断。


「やっぱりか」

「今頃、犯行声明が、出てるんとちゃいますか?」


マスが、スマホを、取り出す。

スマホには、ニュース速報が、届いている。


《MKSが、犯行声明》


「見てください」


マスが、ベルデに、スマホ画面を、見せる。


「また、MKSか。

 最近、テロがあれば、MKSやな」

「世の中に忘れ去られん様に、アピールしてるんちゃいますか。

 巻き込まれた方は、たまらんけど」


マスが、テロ現場の方を見て、言う。


「確かに。

 みんな、仲良くできんもんかね」

「それは、無理でしょう。

 ストイック欲の有るやつと、グルメ欲の有るやつが、分かれている限り」

「ストイック欲?グルメ欲?」


ベルデは、聞き慣れない言葉を耳にし、マスに、問う。


「ストイック欲って、節制欲と云うか、自分追い詰め欲と云うか、

 自己満足に繋がるやつ」

「ほお」

「グルメ欲って、美味いもん食いたい欲って云うか、

 高いもん食いたい欲って云うか、これも、自己満足に繋がるやつ」

「ほお」

「どっちも、自己満足のもんですけど、表わし方と云うか、

 実現の仕方と云うか、そう云うもんが、全く分かれてます」

「そう云うもんなんか」

「どっちも、自己満足のもんやから、

 『歩み寄ったら、ええやん』とは思うんですけど、【同類相憐れむ】で、

 全然あかんらしく、余計憎いらしいです」

「ありそうな話、や」


ベルデは、溜め息を、つく。


「で」

「で?」

「ストイック欲のやつが、カロリー・ボム政策に賛成のやつで、

 グルメ欲のやつが、カロリー・ボム政策に反対のやつ」

「つまり?」

「つまり、一般庶民とMKS」

「なるほど。

 お互いが、『理解できない、相容れない』、と」

「そうです」

「なんとか、お互いが、歩み寄れんもんやろか?」

「無理ですね」

「無理か~」

「そうです。

 どっちも、排除の論理、してます。

 いらんものは、自分の敷地から放り出せれば、

 『他の人のこととか、知ったこっちゃない』です」

「そんなもんか」

「世の中、そんなもんです」


マスは、キッパリと、断定する。



ベルデとマスが、家に帰ると、来客が、いる。

来客は、椅子に座って、本を、読んでいる。


二人が帰宅すると、本を閉じて、言う。


「待ちかねたぞ」


ベルデとマスは、『やれやれ』とばかりに、眼を合わせる。


「何故、だ」


来客は、ベルデとマスの様子を見て、言う、続ける。


「何故、そんな顔をする」


来客は、『心外だ』とばかりに、言う。

言って、続ける。


「僕が来て、嬉しくないのか?」


来客は、『信じられないものを、見た』様に、言う。


「はい、嬉しい、嬉しい」


ベルデが、素っ気無く、答える。


「嬉しくない訳が無い、やないですか」


マスが、愛想笑いする。


「だろう。

 そうだと、思った」


来客は、機嫌を、直す。


来客は、一般庶民、でない。

役人、だ。

それも、国家公務員、だ。


現在の役職は、内閣官房室付きカロリー・ボム対策係。

つまり、ほぼ総理大臣直属の、カロリー・ボム対策の専門家、だ。


名を、ポート、と云う。

ええとこの生まれ、らしい。

ええとこのボンボンとして育った、らしい。


その所為か、立ち居振る舞い、口調に、品が感じられる。

時に、丁寧過ぎて、慇懃無礼に感じられる時があるが。


大きな挫折を知ることも無く、すくすく順調にキャリアを積み、政府の重要職に、就いている。

そんな人間が、なぜ一介の庶民である、ベルデとマスの知り合いなのか。

お互いの対し方から見るに、かなり親しそう、ではある。


三人の出会いは、機縁、宿縁、因縁。

カロリー・ボムが介する縁、と云える。

でも、それは、また別のお話し。



「何の用、や?」


ベルデが、さも煩わしそうに、訊く。

ポートは、腕を、大きく広げる。


「用が無いと、来てはいけないのかい?」


大きく広げて、質問に、質問で返す。


余裕の表情のポートに、ベルデは、いら立つ。


どうして、こいつは、こうなんや


マスが、『まあまあ』とばかりに、割って入る。

割って入って、質問を、発す。


「ほんまに、何か用なんと、ちゃうんですか?」


ポートは、『ああ、これは失礼した』とばかりに、マスに向かって、返事を、発す。


「指令、だ」


ポートが、口調を、変える。

重みのある口調に変え、返事を、発す。


ベルデの顔つきが、変わる。

一転、シリアス・モードに、なる。


それに合わせる様に、マスの顔つきも、変わる。

一転、シリアス・モードに、なる。


「ここのところ、MKSの自爆テロが、続いている」


ポートが、続けざまに、言う。


「そやな」

「そうですね」


ベルデとマスが、答える。


「今のところ、そこに法則性は、見受けられない」

「そやな」

「現状では、《行き当たりばったり》、《思い付き》としか、

 言いようがない」

「同感」

「でも、いつまでも、手をこまないているわけには、いかない」

「そら、そやな」

「で、だ」

「で?」

「ベルデとマス君の出番、だ」

「はい?」


ベルデは、訊き直す。


「ベルデとマス君の出番、だ」

「 ・・ 待て待て。

 何で、俺とマスの出番、やねん?」

「君たちの、妄想的な想定と、そこから引き出される突飛な仮説に、

 期待している」


ポートは、褒めているのか貶しているのか、どっちか分からない言葉を、紡ぐ。


「で、だ」


ポートは、お構い無しに、話を、進める。


「いやいや、俺とマス、まだOKしてへんやん」

「これ、なんだが」


ポートは、再度、お構い無しに、話を、進める。


 ・・ ・・


ベルデは、諦めた様に、マスを、見る。


 ・・ ・・


マスは、苦笑で、返す。


 ガサッ ・・ ガサッ ・・


ポートは、地図を取り出し、広げる。


広げた地図には、×が、付いている。

自爆テロの有った地点、だ。


パッと見たところ、図形的な法則性は、無い。

何の図も、何の形も、示していない。


「見ての通り、自爆テロの発生地点を、落とした地図、だ」


ポートが、改めて、告げる。


ベルデとマスは、改めて、見入る。


「お分かりの様に ・・ 」


ポートが、続ける。


「そこに、法則性は、見受けられない」


確かに。

点を線で結んでも、何も、浮かび上がって来ない。

点から線を伸ばして、全ての点の線の交差する処を探っても、何も、浮かび上がって来ない。

点は、駅から、てんでバラバラの地点に、散らばっている。


「地図からは、分からんな。

 二次元上は、分からんな」


ベルデが、思わず、口から漏らす。


ん、二次元 ・・


マスは、ベルデの独り言を、小耳に挟む。


「 ・・ あの ・・ 」


マスが、おずおずと、手を、上げる。

地図を前に考え込んでいる、ベルデとポートに向けて、手を、上げる。


「何、や?」

「何か、あるのかい?」


ベルデとポートは、ほぼ同時に、返事する。


「地図上では、分からないんですよね?」

「分からない」


ポートが、マスの問いに、答える。


「つまり」

「つまり?」

「位置関係とかの地理状況とかの、

 『二次元上の平面データでは、分からない』、と云うことですよね?」

「そうなる」

「じゃあ」

「じゃあ?」

「その土地の状況とか生活環境とかを考慮した、

 『立体的な三次元上のデータを、視野に入れ』たら、

 分かるんやないですか?」

「 ・・ なるほど!」


ポートは、すぐさま、動く。


「パソコン、借りるぞ」


ベルデのノートパソコンを開き、起動させる。

立ち上がったら、持参のUSBメモリを、突っ込む。


ノートパソコンの画面に、地図が、映し出される。

今し方、広げた地図と、同じ内容のものだ。


その画面上の地図に、レイヤーが、降りて来る。

地図に、レイヤーが、重なる。


レイヤーは、幾つも、重なる。


その地域の、男女比。

その地域の、年齢構成。

その地域の、政治志向。

その地域の、信仰志向。


等々。


 ・・ ・・


 ・・ ・・


 ・・ ・・


ベルデとマスは、考える。

ポートも、考える。


困った。

何も、分からない。

何も、法則性が、見受けられない。


「三次元上のデータを用いても、あかんか ・・ 」


ベルデは、呟く。


「どうする?」


ポートが、他の手を求める様に、訊く。


「二次元でも三次元でも、データがあかんのやったら」

「やったら?」

「現地に行くしか、ないやろう」

「だな」


ベルデの答えに、ポートも即、返事する。



ベルデとマス、そしてポートは、自爆テロの現場を、巡る。

現場は、多岐に、渡っている。


繁華街。

住宅地。

工場街。

農耕地。


等々。


統一性は、無い。

バラエティに、富んでいる。


自爆テロを目論んだ人間は、老若男女を問わず、様々な人に、恐怖を植え込もうとした、らしい。

その目論みは、成功していると、云っていい。


自爆テロ発生場所の、表向きな規則性は、見受けられない。

だから、自爆テロの予防策は、取れない。

その為、あらゆる人々に、恐怖感と圧迫感が、広がっている。


が、ベルデは、何かに、気付く。


確かに、一見、自爆テロ現場には、規則性も統一性も、無い。

とは云え、現場を巡った者は、何かを、感じ取る。


最後の現場に来て、ベルデは、確信する。

ベルデは、マスとポートの眼を、見る。

二人共も、確信している様、だ。


自爆テロ現場は、


空は、高い。

風は、吹き抜けている。


三人は、現場の共通性を、見つける。

現場に、じかに行ってみて、始めて分かる。

どの現場も、空気感と云うか雰囲気と云うか、そう云うものが、似通っている。



「法則性は、見つけられたな」


ベルデが、宣言する。


「その様だな」


ポートが、断定する。


「でも ・・ 」


マスには、一抹の不安が、ある様だ。


「でも?」


ベルデが、問い質す。


「そんなとこ、腐る程あるんやないですかね?」


空が、高いところ。

風が、吹き抜けるところ。


「確かに ・・ 」


ポートが、頷く。


「ああ、それな」


ベルデは、軽い調子で、答えて、続ける。


「実際に、現地に行って、特定したらええねん」


ベルデの、『どうと云うこと、あれへん』調の答え方に、抜かれる。

マスとポートは、毒気を、抜かれる。


「そんな容易い感じで ・・ 」


マスは、『大丈夫?』と問い掛ける様に、言う。

ポートも、ウンウン頷く。


「任せとけ。

 勝算は、ある」

「あるんですか?」

「ある」


ベルデは、にこやかに、マスに、断定する。


「何、ですか?」

「《高い空があって、風が吹き抜けるところ》って云うのは、

 分かってるやろ?」

「はい」

「それに+αで、俺らの皮膚感覚」

「皮膚感覚?」

「うん。

 空気感とか雰囲気を感じ取る、皮膚感覚」

「空気感とか雰囲気 ・・ 」

「分からへんか?」

「いや、なんとなく、分かります。

 それが、どうしたんですか?」

「だから」

「だから?」

「《高い空があって、風が吹き抜けるところ》を、俺らが実際に廻って、

 自爆テロの現場と似たような空気感・雰囲気のところを、特定する」

「いやいや、そんなとこ、どこにでも、ありそうやないですか」


マスは、助けを求める様に、ポートに視線を、注ぐ。


「いや、大丈夫だろう」


ポートの言葉は、マスの期待を、裏切る。

裏切って、続ける。


「自爆テロ現場の範囲は限られているから、その範囲内を車で廻れば、

 すぐに判明するだろう」


ウンウン


『意を得たり』と、ベルデは、頷く。


「ほな、行こか」

「行こう」


ベルデとポートは、連れだって、動き出す。


「待ってくださいよ。

 もうちょっと、検討した方が、ええんやないですか?」


マスが、ベルデとポートに、問い掛ける。

ベルデは、振り向いて、言う。


「必要以上の検討は、時間と心の無駄や」


ポートも、振り向いて、言う。


「同感」



それから、数時間掛けて、ベルデとマスとポートは、巡る。

自爆テロ発生予測範囲内を、巡る。


それから、家に、帰って来る。

ポートも、付いて来る。


幾つか、発生が予測される場所を、特定できた。


空が、高く、

風が、吹き抜けていて、

空気感とか雰囲気が、共通している処。


場所は、予測できた。

次回の自爆テロは、その内のどれかで発生する可能性が、高い。


が、


それらの場所を監視し、何かあれば、対処する方法は?

人員は?

設備は?


マスは、疑問点を、ベルデとポートに、ぶつける。


「それな」

「うん、それだ」


ベルデは軽く、ポートは重々しく、頷く。


ポートは、スッと、腕を、上げる。

そして、天空を、指差す。


「あれだ」


マスは、ポートの指差した先を、見つめる。

見つめるが、何も見えない、分からない。

ベルデは、分かっているかの様に、ニヤニヤ笑っている。


「どれですか?」


マスは、観念して、ポートに、訊く。


「ああ、今は、見えないかもしれない。

 夜になれば、よく分かるんだが」


ポートは、腕を下ろし、マスと、向き合う。

マスと、視線を、交わす。


「衛星、だ」

「衛星 ・・ !」


『大きな話に、なって来たな』と、マスは、思う。


「そう、衛星。

 俗に云うところの、スパイ衛星、だ」

「スパイ衛星、って、あの」

「そう、地球全体をカバーする眼を持つ、あれだ。

 理論上、『建物の中以外は、まる見え』、だ」


噂には、聞いていた。

が、身近なところにから聞くと、実感が、全然違う。

それも、国の上の方で運営されるだけでなく、こんな身近なところでも運営されてしまうとは。


「スパイ衛星から、僕たちがピックアップした地点を、監視してもらう」

「監視 ・・ ですか?」

「不審者が近付けば、僕達に、一報が入る様に、してもらう」


「不審者 ・・ ですか?」


どうやって、不審者と、見極めるのか?


マスは、疑問を隠さず、問う。


ポートは、『造作も無い』とばかり、髪の毛を、かき上げる。


「太っている人間、イコール、不審者だ」

「 ・・ ああ、なるほど」


このご時世、太っている人間は、MKSの人間や、そういう思想を持つ人間の可能性が、高い。

だから、とりあえず、太っている人間(小太りも、含む)をマークすれば、いいのだろう。


「ちょっと、疑問が、あるんやけど」

「何、だ?」


ベルデの疑問提示に、ポートは、返事をする。


「何で、MKSのやつは、太ってるやろ?」

「そうだな」

「何で、MKSのやつには、ボムボムが、効かへんねん?」


一般に流通する食材は、ボムボムを降り掛けることが、義務化されている。

それを怠ると、実刑を、喰らう。


MKSの人間は、ほぼ全員、太っている。

つまり、それは、ボムボムが効いていない、ボムボムの効果を自由に操っている、と云うこと。

《BOMB!》る危険が無い、自爆テロが自由に行なえる、と云うこと。


「MKSには、ボムボムの効果を無効にするものが、あるらしい」

「マジで!

 それやったら、無効化もその逆も、思いのままやん」

「何らかのスパイスらしきもの、と云うところまでは突き止めたが、

 その先は、分かっていない」

「そうか。

 だから、必要無いから、カロリー・スカウターも、使ってへんのか」


ポートの答えに、ベルデは、納得する。


ポートは、任務に、戻る。


「既に、スパイ衛星の監視は始まっている、だろう」


さすが、ポートさん、仕事が早い


マスは、感心する。


「では」


ベルデは、キッチンに、向かう。

沸かしていたお湯を、注ぐ。

ポットから、注ぐ。


ドリッパーに、注ぐ。

挽かれたコーヒー豆に、注ぐ。


「僕は、いつもの様に、ミルク無しで、頼む」


ポートが、言う。

リクエストを、付ける。


ベルデは、コクッと、頷く。


ベルデは、三杯のコーヒーを、用意する。


一つは、ミルク無し、砂糖入り。

一つは、ミルク有り、砂糖無し。

一つは、ミルク有り、砂糖有り。


右から、


ポート、

ベルデ、

マス、


の分だ。


三人は、まず、カップに、鼻を近付ける。

香りを、鼻孔に、含む。


鼻孔に香りを含んだ後、口に、含む。

コーヒーを、含む。


コーヒーを、口から喉に通す。

己が喉から、立ち昇って来た香りを、鼻から通す。

通して、香りを、楽しむ。


「うん、いつもながら、コーヒーは、素晴らしい」


ポートが、感想を、漏らす。


「コーヒーだけなんか?

 淹れてくれた人は、どうなんや?」


ベルデが、少し嬉しそうに、ツッコむ。


マスは、二人を見て、漫才コンビを、連想する。


仲がいいのか、悪いのか


漫才コンビで、仲が悪くても、面白い漫才するところもあるから、そう云うもんなんだろう。


はた!


と、マスは、気付く。


この雰囲気に、飲み込まれていた。

ほっこりと、浸っていた。


現実に、戻らねば


マスは、ポートに、問う。


「もう、監視は、始まっているんですよね?」

「勿論」

「なら、出動体制取っといた方が、いいんやないですか?」

「その必要は、無い」


ポートは、断定する。

断定して、続ける。


「体制取ってようが取ってなかろうが、寝てようが起きてようが、

 飯食ってようが食ってなかろうが、連絡は、来る時は来る。

 じたばたしてても、始まらない。

 緊張してたら、もたない」


確かに


マスは、肩から、力が、抜ける。

いい感じに、脱力する。


そんなマスを見て、ベルデは、眼で、微笑む。

ポートは、高らかに、微笑む。



三人が、ゆったりほっこり、コーヒータイムを楽しんでいると、入る。

連絡が、入る。


ポートの元へ、入る。

スパイ衛星からの連絡、だ。


「早速、か?」


ベルデが、訊く。


「早速、だ」


ポートが、答える。


バサッ


ポートは、地図を取り出し、広げる。

スパイ衛星から連絡のあった地点を、指差す。


「ここだ。

 ここに、不審者が、徘徊している」


キュ


マスが、赤いサインペンで、その地点に、○を付ける。


「早速、行ってくれ」


ポートが、何気無しに、言う。


「待て待て」


ベルデが、ツッコむ。

ツッコんで、続ける。


「お前は、行かへんのかい?」


ポートは、小首を、傾げる。


「何故?」

「いやいや、元はと云えば、お前の案件、やないか」

「君達に、依頼したが ・・ 」

「でも、最後まで、責任持って、果たせや」

「だから ・・ 」


ポートは、ゆったり背筋を伸ばす。

伸ばして、続ける。


「ここに残って、連絡係等を、勤める」

「 ・・ 」


ベルデは、余りに堂々としたポートに、ツッコめない。


「 ・・ 実働部隊は、あくまで、俺らにやらせようって、ことかい?」

「そのつもりだ」


ポートは悪びれす、笑みさえ浮かべて、断定する。


「 ! ・・ 」


ベルデは、言葉を、失くす。

どうやら、既に、決定事項、らしい。


「ベルデさん、ベルデさん」


小声で、マスが、呼ぶ。

呼んで、続ける。


「もう、決定事項らしいから、『反論するだけ、無駄』ですよ」

「 ・・ やな」


ベルデは、諦め口調で、頭を振る。



ベルデとマスは、向かう。

ポートに指示された地点に、向かう。


やはり、空が高く、風が吹き抜けている。

今や慣れ親しんだ、空気感・雰囲気が、ある。


ベルデとマスは、お互い距離を取って、建物の陰に、隠れる。

対象者が姿を表わしたら、挟みうちできる様に、距離を、取る。


待ち合わせをしている振りをして、時を過ごす。

人を、やり過ごす。


「来たぞ」


ベルデの耳に付けられたイヤホンから、連絡が、入る。

ポートの声で、入る。


「来たか」

「その様ですね」


マスも、ポートの指示を、聞いた様だ。


来る。

お誂え向きに、小太った人物 ・・ メタボ男が、近付いて来る。


間違え様が、無い。

あいつ、だ。


メタボ男は、手に、紙袋を、下げている。

ある処で、立ち止まる。

左右上下を、見廻す。


『ここでいい』か、『ここが自爆テロをする処』か、確認しているのだろう。


ガサゴソ ・・


紙袋を下ろし、中を、まさぐる。

紙袋の中から、紙に包まれた物を、取り出す。


紙に包まれた物の、紙を捲る。

半ば、捲る。


既に、臨界点まで、カロリーを摂取している、のだろう。

そして、自爆する為に、『一口、食おう』としている、のだろう。


その自爆テロを目論むメタボ男が、半ば紙を捲った食物に、かぶりつこうとする。

かぶりつこうと、口を大きく開けたと同時、声が、掛かる。


「そこまで」


ベルデが、銃を構えて、建物の陰から、姿を現わす。

正確には、銃では無い、が。


メタボ男は、固まる。

フリーズする。

口を、大きく開けたまま。


ベルデは、素早く、紙に半ば覆われた食物を、取り上げる。

銃の様なものを、構えたまま、取り上げる。


メタボ男は、その、ベルデが眼を離した一瞬の隙を、突く。


ダッ ・・ !


とばかりに、駆け出す。

反対方向に、駆け出す。


ベルデは、慌てない。

『やれやれ』とばかりに、苦笑する。


メタボ男は、ベルデを、充分引き離す。

『ここまで、距離できたら』と、安堵する。


そこで、建物の陰から、姿を、現わす。

マスが、姿を、現わす。


銃の様なものを構えて、メタボ男に、照準を、合わす。

『やれやれ』とばかりに、微苦笑している。


「そこまで」


追い付いたベルデが、メタボ男から、取り上げる。

紙袋等、一切合財、取り上げる。


後ろ手にして、両腕を、縛り上げる。


「お前ら、こんなことして ・・ フガッ ・・ 」


うるさいので、口に、タオルで、猿轡をかます。


 ・・ ジト ・・


目付きがウザいので、頭から、麻袋を、スッポリ被せる。


ベルデは、スマホを、取り出す。


[はい]

「ベルデ、や」

[どうだ?]

「確保終了。

 誰か、受け取りに、寄こしてくれ」

[すぐ手配しよう。

 数分、待ってくれ]

「了解」

[ご苦労さん]

「どういたしまして」


ベルデは、ポートとの通信を、切る。


数分も待つことなく、引き取りが、来る。

メタボ男を、引き取りに、渡す。


「行こか」

「はい」


ベルデは、マスと、帰途に着く。



その日から、ベルデ、マス、ポートの体制は、始まる。

ベルデとマス、実働部隊。

ポート、後方支援。


三人のチームワークは、思いの外、機能する。

自爆テロ未遂犯を、続々、確保する。

お蔭で、自爆テロの件数は、すっかり減少する。


MKSは、困っていること、だろう。

次の手を考えあぐね、手をこまねいていること、だろう。


治安は、眼に見えて、安定する。

ここんとこ、とんと、MKSの犯行声明を、聞かない。

MKSの主張も、聞かない。



そんな、ある日。

街角のワイド・ビジョンに、男が映る。

軍服様の制服に身を包み、太った男が、映る。


映像は、街角のワイド・ビジョンのみならず、全てのテレビ、パソコン、スマホ等、映像が受信できる機器全てに、映る。

全国一斉統一放送、てなものだ。


「諸君! ・・ 」から始まった演説放送の主な内容を、以下に、まとめる。


・私は、メタボ解放戦線(MKS)将軍の、ブレイス、だ。

・人々が、摂取カロリーに左右されず、自由に生きる為、日夜、闘っている。

・最近、私達の活動(自爆テロ:筆者注)が、滞っている。

・その為、私達の活動に、支障が出ている。

・よって、新しく活動を展開せざるを得ない。

・それについて、理解と了承を、よろしく頼む。

・私達の活動に、共感する者は、是非、私達の活動に参加してくれ。

 門戸は、大きく開放している。


まあ、体のいい、新規テロ活動の展開声明と、それに伴う脅迫宣言。

プラス、リクルート活動。


なんでも、最近、MKSに参加する人間が、増えている、らしい。

しかも、若者ばっかり。


まあ、若い時は、大概の無理は利くから、『食いたいもん、食わせ!』ってなもん、だろう。

で、それが、『歳取ってからの後悔』、になるのがオチだが。


病気以外でメタボの人間を見ると、『自己管理できてない』『セルフ・コントロールが、下手』と思われるのが、世の風潮。

『太っている人は、生きづらい』と、思う。


思うが、それとこれとは別。

快楽とか理想だけでは、本筋は、譲れない。

リアルとか現実は、大切にする。


最低限、自分がされて嫌なことは、人にしない。

自分の目的を達成する為には、人を傷付けてもいいのか?

世の中の理やルール、法律に反することを、公に声明するって、どうよ?


ああ、釈然とせん


ベルデは、イライラしたものを感じ、MKSの放送を、見ている。


ああ、ウザい


マスも、ムカムカしたものを感じ、MKSの放送を、見ている。


ベルデとマスは、憮然とした表情で、画面を、眺める。

TV画面では、今回の表明演説について、あれやこれやと、解説されている。


まあ、まとめれば、新規テロ活動の展開声明と、それに伴う脅迫宣言。

プラス、リクルート活動。


分かり切ったこと。

多分、誰もが、想定しているであろうこと。


リーン ・・ リーン ・・


分かり切ったことを、専門家が解説する画面を眺めていると、電話が、鳴る。


黒電話、だ。

ダイヤル式、だ。

壁に掛けられ、メモを添えられている。


ベルデは、受話器を、取る。


「はい」

[見た、だろう?]


前置き無しに、ポートは、要件に、入る。


「見た、見た」

[そう云うこと、だ]


ポートは、言葉を、続けない。


「どう云うこと、や?」


だから、ベルデが、尋ねる。


[MKSが、表立って、動き出した]

「今までも、表立って来たやん?」

[今までと、スケールが、違う。

 大々的に、表立って来ている]

「 ・・ そういや、そやな」


今まで、MKSは、犯行声明を、出して来ている。

でも、それはあくまで、事件後、だった。

こんな、事件が起こる前に、大々的に、大っぴらに、声明を出すことは、無かった。


[本格的に、テロ攻勢をかける、つもりだろう]

「なら、自爆テロが、今まで以上に、頻発するんか?」

[おそらく]

「うげっ」


ベルデは、顔を、顰める。

マスも、それに釣られて、顔を、顰める。


[それで ・・ ]

「それで?」

[『今まで通りでは、埒が明かない』、と思う]

「そやな」

[自爆テロの有りそうな処を、潰していくだけでは、

 いつまでもモグラ叩きゲームで、切りが無い]

「同意」

[だから]

「だから?」

[元から、攻めて行く]

「元から?」

[具体的には、ブレイス将軍から、攻めて行く]

「ブレイス将軍?!」


先程の声明を出していた当事者、だ。

今や、MKSで、一番名の知られている人物、だろう。


[そう、ブレイス将軍、だ]

「多分、MKSの広報担当やから、今頃、

 問い合わせとか取材申し込みとかで、てんやわんや、やろう?」


ベルデは、暗に、『無理ちゃうか?』の意味を込めて、訊く。


[そこは、考えが、ある]

「あるんか」

[直接、説明したい。

 時間、有るか?]

「無い、って言っても、来るくせに」


ベルデは、苦笑を交えて、答える。



ポートは、いつもの椅子に、座っている。

ミルク無し砂糖有りのコーヒーの入ったマグを、片手に、座っている。


机を挟んで、対面には、いる。

ベルデとマスが、いつもの椅子に、座っている。

こちらも、片手に、ミルク有り砂糖無しのコーヒーの入ったマグを、持っている。

いや、マスは、両手で包み込むように、ミルク有り砂糖有りのコーヒーの入ったマグを、持っている。


「で、だ」


ポートが、口を、開く。

開いて、続ける。


「ブレイス将軍のアバターを、作って」

「作って」

「そいつに」

「そいつに」

「MKSより、こちら寄りの発言をさせる」

「させるんか?」

「そう、させる。

 そうすれば、MKS内部もてんやわんやになって、相互の疑心暗鬼が進む。

 その時に、こちらから連絡すれば、ブレイス将軍も、乗ってくるだろう」

「そう上手く、行くか?」


ベルデが、疑問を、呈す。


「上手く行かせる為に」

「為に」

「アバター以外も」

「以外も」

「高精細なフルCGにして、リアルと何ら、変わり無くする」

「つまり」

「うん」

「『超高精度な偽者を作って、そいつに働いてもらう』、ってことやな」

「まあ、すこぶる簡単に云えば、そうだ」


思ったより、オーソドックスな考え、だった。

ベルデとマスのワクワク感は、ちょっと、外される。


が、 『いい考えでは、ある』と思う。



それから、間もなく。

街角のワイド・ビジョンに、男が映る。

軍服様の制服に身を包み、太った男が、映る。


映像は、街角のワイド・ビジョンのみならず、全てのテレビ、パソコン、スマホ等、映像が受信できる機器全てに、映る。


「諸君! ・・ 」から始まった演説放送の主な内容を、以下に、まとめる。


・私は、メタボ解放戦線(MKS)将軍の、ブレイス、だ。

・活動方針の転換を、発表する。

・今後は、テロ活動に、頼らない。テロ活動を、実施しない。

・それについて、理解と了承を、よろしく頼む。

・私達の活動に、共感する者は、是非、私達の活動に参加してくれ。門戸は、  大きく開放している。


前回とは異なり、テロ活動の封印と、それに伴う新規活動展開宣言。

プラス、リクルート活動。


前回とは、ほぼ一八〇度異なる、声明表明。


今頃、MKSの本部は、てんやわんや、やな


ベルデは、放送を見ながら、思う。


ポートは、内閣官房室に、詰めている。

カロリー・ボム対策係なので、今頃は、対策に追われていること、だろう。


まあ、あいつのことやから、サラッと、こなしているやろけどな


ポートは、折りを見て、MKS本部(ブレイス将軍)に、コンタクトを取る積もり、だ。


それにしても ・・ 


CGの出来栄えは、凄いものだった。

ハリウッドに、勝るとも劣らない。


さすが、国の威信を掛けた出来


ベルデは、前回の映像と何ら変わらぬ、何な不自然を感じさせない出来に、舌を巻く。

後は、ブレイス将軍が、まんまと乗ってくれることを、祈る。



その日の夕刻。


ベルデは、マスと、ほっこりしている。

当面、片付ける依頼も案件も、無い。

穏やかに、時間は、過ぎ去ってゆく。


ああ、今日も、無事に終わるな


ベルデは、窓から外の景色を見て、思う。

夕暮れが、深い。


リーンリーン ・・


電話が、鳴る。

壁に掛けた、黒電話が、鳴る。


リーンリーン ・・


嫌な予感が、する。

この穏やかで、静かな時間が、終わりそうな気が、する。


ガチャ


[ポート、だ]


終わった。

時は、終わった。


ベルデは、電話を、スピーカー・モードに、する。

これで、マスにも、聞けるだろう。


「どうした?」

[早速、ブレイス将軍と、連絡が、取れた]

「おお、早いな」

[大分、慌てていたな]

「そら、そやろ」

[MKS内部で、かなり、動揺が走っている様、だ]

「で、こちらからの連絡に、飛び付いて来た、と」

[その様、だな。

 MKS内では、『ブレイス将軍に限って、そんなことはしないやろ』派と、

 『いやいや、分からんで』派に、分かれているらしい。]

「そうなんか」

[いつの世も、どこででも、改革派と保守派の内部対立は、あるからな。

 MKSも例外では無い、ってことだろう]

「と云うことは?」

[ブレイス将軍は改革派で、内部での立場が弱まって来たので、

 外部と連携することで、立場を回復・向上させようとしてるんだろう]

「その、ブレイス将軍の動きは、調査・分析の上、折り込み済やろ。

 それを踏まえて、今回のミッション、実行してるんやろう?」


ポートは、黙る。

受話器越しに、苦笑している様子が、伝わる。


[まあな]


喰えない。

こいつは、喰えない。

味方にしておけば、力強いが、敵にすれば、手強い。

そして、普段は、そんな雰囲気を、感じさせない。


「どうすんね?」

[ブレイス将軍は、あの容姿だから、直接会談は、しにくい]


ベルデは、ブレイス将軍の容姿を、思い出す。

確かに、今時、あれだけ太っていれば、目立つ。

MKSの関係者であること、まるわかり。


[そこで、だ]


ポートは、続ける。


[君達の出番、だ]

「俺ら?」


ベルデは、虚を、突かれる。


[君ら、だ]

「何で、俺ら、や?」

[ブレイス将軍側との連絡係を、やってもらいたい]

「は?」


[やってくれるか?]

「やらへん言うても、やらせるやろ」


ポートは、黙る。

受話器越しに、苦笑している様子が、伝わる。


[違いない」


ベルデは、マスを、見る。

マスも、苦笑して、頷く。


「その件は、受けた」

[ありがとう]

「で、誰と、連絡取ったらええんや?

 まさか、ブレイス将軍に、直で連絡取るわけには、いかんやろ」

[向こう方も、連絡係を、設けるそうだ]

「誰や?」

[決まり次第、向こうから連絡が、ある]

「そうか」


ベルデは、あっさり、納得する。



次の日、早朝。


コンコン ・・

コンコン ・・


玄関をノックする音が、響く。

来客、らしい。


覗き窓から、覗く。

来客に、見覚えが、無い。


「どちら様ですか?」


ベルデが、訊く。


「オラオラオラオラ」


玄関ドアの向こうで、来客が、言う。


「無駄無駄無駄無駄」


ベルデが、答える。


ガチャ ・・


ベルデが、玄関のドアを、開ける。

玄関の前には、男が、いる。


スーツ姿、だ。

ダーク・グレーの上下に、ダーク・グレーのネクタイを締めている。

靴は、黒革靴、だ。

全体的に、印象が、濃い灰色。


Yシャツと靴下は、白い。

そして、スーツのジャケットの胸ポケットに、一輪。

薔薇が、一輪。

赤色が、眼に沁みる。


打ち合わせ通り、だ。

間違い無い。


ベルデは、男を、三和土に入れる。

玄関ドアを、閉める。


「連絡係の人ですか?」


ベルデが、確認する。


「はい、そうです」


男が、認める。

ブレイス将軍との連絡係、らしい。


男は、ラパスと、名乗る(多分、偽名であろうが)。

ベルデも、偽名を、名乗る(ややこしいので、ここでは、載せない)。


「早速ですが ・・ 」


ラパスが、早速、切り出す。

親交を深めるも何も、ありゃしない。

まあ、確かに、この状況で、親交は深められないが。


「ブレイス将軍は、そちらとの連携を、望んでおられます」


乗って来た。

ブレイス将軍が、乗って来た。

思った以上に、的確に、乗って来た。


「こちらも、望んでいます」


ベルデが、答える。

心の中で、『しめしめ』と唱えながら、答える。


「常日頃、ブレイス将軍は、「健康的に、太らないといけない」と、

 主張されています」

「はい」

「そちらとの連携は、『これを実践する、いい機会になる』と、

 思っています」


建前、だ。

建前に、過ぎない。

ブレイス将軍側にメリットがあるから、話に乗って来たに、過ぎない。


それはそれとして、ラパスに、言う。


「ラパスさん、見たところ、全然太ってはりませんね。

 もっと言えば、スリム」


ラパスは、太っていない。

いや、それどころか、スリムに、引き締まっている。


「できませんから」

「はい?」

「太っていたら、連絡係とか、隠密活動できませんから」


確かに


ベルデは、深く、頷く。


今や、太っているだけで、反体制派・MKS派と、受け取られてしまう。

そんな目立つことは、できない。


「じゃあ、同じ思いを、共有してると云うことで」

「はい」

「話は決まり、ですね」

「はい。

 よろしくお願いします」

「こちらこそ」


ベルデとラパスは、ガッチリ握手する。

上の方で、ほぼ決まっていたこととは云え、実務者レベルの親交と連携は、大切だ。



ベルデとラパスは、話し合いを、重ねる。

細部まで詰めて、協議を、重ねる。


時には、直接会い、

時には、電話で、

時には、メールで、


やり取りを、重ねる。


お互い、自分達に加え、もう一人、アシスタントを付ける。

ベルデには、勿論、マス。

ラパスには、クフィア。


四人は、一度、軽く、顔を合わせただけ、だ。

機密保持の為、この四人以外は、決して、関わらない、関わらさない。


話は、紆余曲折を経るも、比較的順調に、進む。

お互いのメリット・デメリットが、相互補完関係にあるから、だろう。

思ったより、エゴの押し付け合いに、なっていない。



コンコン ・・

コンコン ・・


「どちら様ですか?」


ベルデが、訊く。


「オラオラオラオラ」


玄関ドアの向こうで、ラパスが、言う。


「無駄無駄無駄無駄」


ベルデが、答える。


ラパスが、来る。

なんら珍しいことでは、ない。

が、予定外の行動、ではある。


いつもは、訪問前に、一報が、ある。

今回は、無い。

ぶしつけ・出し抜けの、突然の訪問、だ。


よほど、火急の要件、なんやろか


ベルデが、思う。


玄関のドアを、開ける。


ラパスが、いる。

そして、クフィアも、いる。


これも、珍しい。


ベルデが、クフィアと直接会ったのは、顔合わせ時の、一回のみ。

普段は、ラパスのサポートしている為、会うことは無い。


それが、ラパス、クフィア、二人共、訪ねて来ている。

これは、よほど、四人の意志統一・情報共有をする必要がある、らしい。

訪問の目的案件は、そう云うもの、らしい。


ベルデは、ラパスとクフィアを、誘なう。


椅子を勧め、飲み物を勧める。

ラパスとクフィアは、コーヒーを、求める。


これも、珍しい。


ラパスは、いつも、飲み物を、求めない。

話を、短く、端的に進める為に。

証拠を、残さない為に。

飲み物は、求めない。


それが、求めている。

今回の案件の話は、長く、骨があるものに、なりそうだ。


ベルデは、マスを、呼ぶ。

当然の様に、呼ぶ。

ラパスも、当然の様に頷き、同意する。


全員に、コーヒーが、行き渡る。


ラパスは、ミルク有り、砂糖無し。

クフィアは、ミルク有り、砂糖有り。

ベルデは、ミルク有り、砂糖無し。

マスは、ミルク有り、砂糖有り。


四人が、何口かコーヒーを飲んだところで、落ち着いたところで、ラパスが、口を、開く。


「厄介ごとが、起こりました」


それは、分かっている。

心に、覚悟している。


ベルデは、先を、促す。


「ウチの内部で、共同声明を阻止しようとする勢力が、暗躍しています」


ブレイス将軍派内でも、一枚岩では無かった、と云うことか。


「『どこでも、人間三人寄れば、派閥争いは起きる』、って云うからな」

「お恥ずかしい。

 自分ところの内部だけでも、現状、統一できていません」


ベルデのフォローに、ラパスは有難く謝る。


「 ・・ 実は ・・ 」


ベルデが、苦笑して、言葉を、紡ぐ。


「ウチも、現状は、そんなに変わらへん」


マスは、一瞬、『言っちゃうの!』と云う眼を、する。

したが、すぐに、『ま、ええか』の眼と、なる。


ラパスとクフィアの眼は、明らかに、綻ぶ。

綻び、安心して、問う。


「そっちもですか?」

「お恥ずかしながら」


ラパスの問いに、ベルデは、頭を掻き掻き、答える。


「『お互い、身内に、反対勢力を抱えている』、ってことですね」

「そやな」

「どうしましょう?」

「う~ん ・・ 」


ベルデとラパスは、沈思黙考する。


「 ・・ あの ・・ 」


マスが、口を、開く。

開いて、続ける。


「お互いに、内部に反対勢力があることを、告知して ・・ 」

「告知して ・・ 」


「炙り出して、排除したら、どうですか?」

「 ・・ なるほど」


マスの提案に、ラパスが、頷く。

ラパスは、そのまま、沈思黙考を、続ける。

が、今回の沈思黙考は、前回とは違い、重苦しくない。


「こうしたら、どうですかね?」

「どうするんや?」


ラパスの言葉に、ベルデが、喰い付く。


「まず、ブレイス将軍が、声明を出します」

「うん」

「その中で、そちらとの提携が、詰めに入っていることを、明かします」

「うん」

「ただ、『詰め切れないのは、内部に反対勢力が有り、

 それが障害となっている』ことも、明かします」

「うん」

「そして、そっちにも、声明を出して、もらいます」

「こっちもか?」

「そうです。

 そっちも、ブレイス将軍との提携が、詰めに入っていることを、

 明かしてもらいます」

「うん」

「で、そっちも、『詰め切れないのは、内部に反対勢力が有り、

 それが障害となっている』ことも、明かす」

「うん」

「そうすれば」

「そうすれば?」

「反対勢力は、なんのかんの云っても少数勢力なので、

 同調圧力に屈するか、排除されることに、なるでしょう」

「そやろな」

「僕たちの仕事は、やり易くなります」


ベルデが、軽く、手を上げる。


「同意。

 それで、いこう」



「で」


ポートが、引き取る。

引き取って、続ける。


「こちら側も、『声明を出す用意を、しとけ』、と」

「そう云うこと、やな」


ベルデとマスとポートが、話している。

時は、移り変わっている。


コーヒーを飲みながら、三人は、練っている。

策を、戦略を、練っている。


ポートは、ミルク無し、砂糖入り。

ベルデは、ミルク有り、砂糖無し。

マスは、ミルク有り、砂糖有り。


「感触は、どうだ?」


ポートが、訊く。


「う~ん。

 『基本的には、信用できる』と、思う」


ベルデが、ラパスとクフィアについて、論評する。


「基本的には?」

「基本的には」


ベルデは、断定する。


「その根拠は?」

「ミルク」

「ミルク?!」


さすがに、ポートは、素っ頓狂な声を、上げる。

上げて、続ける。


「何故、ミルク?」


ベルデは、ポートを、指差す。


「コーヒーが」

「コーヒーが?」

「俺と同じ、やった」


ベルデは、ミルク有り、砂糖無し。

ラパスも、ミルク有り、砂糖無し 。


「だから」

「だから?」

「呉越同舟とか、同床異夢かもしれんけど、

 基本ラインは、共有してるやろうから、

 『基本的なところは、信用できる』と、思った」

「なるほど」



それから、何度か、打ち合わせを、する。

ベルデとラパスは、打ち合わせを、する。

マスとクフィアは、それを、手助けする。


お互いに、声明文が、できる。

声明文の擦り合わせも済み、後は、読み上げるだけ、だ。

世の人々に向かって、伝えるだけ、だ。


表に立ち、読み上げる人は、決まっている。

MKS側は、ブレイス将軍。

こちら側は、内閣官房長官。


タイミング的には、MKS(ブレイス将軍)側が、先に、声明を出す。

こちら側は、それを受け入れる形で、一時間後に、声明を出す。



お互いに声明を出す、当日午前。


最後の打ち合わせと、『新たな改定事項が、無いか』の確認を兼ねて、訪れる。

ラパスとクフィア揃って、訪れる。

最後の最後の詰めなので、二人揃って訪問する様に、ベルデが頼む。


当日である緊張感は有るものの、ベルデとマス、ラパスとクフィアのできることは、もうしている。

後は、お互い側の声明発表を、待つだけ。

待つだけなので、どこかリラックスした空気が、流れている。


お互いに、『新たな改定事項は、無い』ことを確認し、最後の打ち合わせを、終える。

打ち合わせ中も、リラックス。

コーヒー片手に、打ち合わせを、していた。


ラパスは、ミルク有り、砂糖無し。

クフィアは、ミルク有り、砂糖有り。

ベルデは、ミルク有り、砂糖無し。

マスは、ミルク有り、砂糖有り。


ラパスとクフィアも、ミルク有りが分かっているので、先に、ミルクを入れておく。

砂糖は、ラパスとクフィアのお好みで、本人達に、入れてもらう。


ラパスとクフィアは、コーヒーを、飲み干す。


「では」


一礼の元、去ってゆく。

もう会うことも無い、だろう。

ベルデとマスは、感慨深げに、見送る。



「10」


ベルデが、カウント・ダウンを、始める。


「9」


マスが、応える。


「8」

「7」

「6」

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

「0」


BOMB!



数十分後。


ベルデとマスの見ているテレビの画面に、緊急速報が、入る。


【MKS(メタボ解放戦線)本部で、火災発生。

 多数の死傷者が出た模様。】


リーンリーン ・・


緊急速報が流れるや、数十秒して、電話が、鳴る。


リーンリーン ・・


ガチャ


[ポート、だ]

「おお」

[今から、そちらに行く]

「ほい」



ベルデとマス、ポートは、コーヒー片手に、くつろぐ。

くつろいで、談笑している。

珍しく、全員、にこやかだ。


コーヒーの内容は、相変わらず、


ポートは、ミルク無し、砂糖入り。

ベルデは、ミルク有り、砂糖無し。

マスは、ミルク有り、砂糖有り。


全く、変わりばえしない。

いや、変えるつもりが無い、のだろう。


「ミッション、自動的に終了、だ。

 ご苦労様、だった」


ポートが、労う。


「おお。

 どういたしまして」


ベルデが、応える。

マスが、ペコッと、頭を、下げる。


「MKSも、災難だったな」

「そやな」

「何人かの幹部と、その側近が、死亡したらしい」

「うわっ」

「その中に、『ブレイス将軍とその側近も、いた』、らしい」

「ご愁傷様、やな」

「なんでも」

「おお」

「《BOMB!》った、らしい」

「あいつら、ボムボム、無効にできたはずやろ?」


ポートが、肩を、竦める。


「手違いか、ヒューマン・エラーか、そんなんが、あったんだろう」

「うわっ。

 やり切れんな」

「なんでも」

「おお」

「『乳製品関連のボムボムが、作用した』、らしい」

「そうなんか」


ここで、ベルデとポートとマスは、眼を、合わせる。

苦笑混じりに、眼を、合わせる。


「カロリー・スカウターを使っておけば、

 この事態は、防げたんだろうがな」

「あいつら、カロリー・スカウター使わんし、

 カロリー・スカウター自体が、無いんちゃうか?」

「かもしれん」


ベルデとポートは、アリバイ作りの様に、会話を、続ける。


「でも、これで」

「これで?」

「MKSも、弱体化するやろな」

「ああ、それは、そうだと思う」


ブレイス将軍は、死んだ。

その側近も、死んだ。

のみならず、主要な幹部が死んだ、らしい。

それらの側近も、まとめて死んだ、らしい。


MKSが弱体化することは、避けられない。

喜ばしいのは、自爆テロ始め、『テロ活動が、大幅に減るであろうこと』だ。


「これで、MKSが解散でもしてくれたら、万々歳ですね」


マスが、言う。

いうが、たじろぐ。


えっ ・・


ベルデとポートの、厳しい眼付きに、晒される。


「解散してくれんでも、ええやん」


ベルデが、言う。


「だな」


ポートが、同意する。


マスは、合点する。


ああ、この人達、飯の種が無くなるの、心配してはるんや


マスは、それを悟って、黙り込む。

余計なことを、言わない様に、する。


ベルデとポートは、『首尾上々』とばかりに、にこやかに、談笑している。


マスは、思う。


やれやれ


{了}

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